社会: 2012年8月 Archives

不都合な真実不都合な真実
アル・ゴア 枝廣 淳子

ランダムハウス講談社 2007-01-06
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映画でも話題になった元アメリカ副大統領アル・ゴアの1冊。本人は豪邸にプライベートジェットに、と一部マスコミから批判受けていたが、アメリカの副大統領が自国だけでなく地球規模の環境問題を考え、かつ素晴らしいプレゼンを実施して注目を集めただけでも、意義があったのだろう。

本書はビジュアルが多く、アル・ゴアの自伝的な内容も含まれており、読むのは易しい。3.11以降、原発停止などで達成がほぼ絶望的となった鳩山元首相のCO2 25%削減宣言や京都議定書が忘れられつつある今日だからこそ、物事を多面的に捉えるためにも読みたい1冊。
震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)
原田 泰

新潮社 2012-03-16
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復興費用が19~23兆円という莫大な額になった東日本大震災。日本を復興するためとの名目で、その財源を確保するために時限措置ながら25年という、現役世代にはほぼ恒久増税とも言える所得税その他の増税。本書では、その巨額を無駄であることを、過大な出費が復興に繋がらないことを過去実績、阪神大震災などの例で証明、また4兆円程度で済む著者の見積もりを説明する。

特に後者は、いわゆるフェルミ推定の考え方で実際の損害額を算出しており、納得感がある。人口オーナスとなりつつある地域に対して、過度なインフラ整備をしていくことは無駄どころか将来の重荷にすらなりうるので、著者のコンパクトな復旧という考え方は非常に好感を覚える。

その分、最後の原発問題に対する論調は残念としかいいようがない。前半の的確な分析とは打って変わって、著者の主義・主張のみという印象が強い。原発のコストが安ければ、もっと安全策を講じていたはず→原発のコストは実は高い→火力でまかなうべきとの三段論法で脱原発を結論づけており、地政・環境・安定・経済の問題や原発の最新技術を一切無視しており、早計と感じる。そもそも本書の趣旨から脱線しているのではないか。