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改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める
尾山大輔 安田洋祐

日本評論社 2013-03-19
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コンソル債(永久債)の割引現在価値は、ラーメン1日あたりの需要関数はD(p)=400-1/2×p(ただし0≦p≦800)とすると利潤を最大化するために1杯の値段をいくらにすべきか、などなどいろいろな例題に対し、解法・解説が続く。興味深いが、テイラー展開など、明らかに高校数学を超えるものもあり、久しく数学と疎遠な身としては・・・ちと辛い。
日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)日本の景気は賃金が決める (講談社現代新書)
吉本 佳生

講談社 2013-04-18
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タイトルから、世間を賑わすアベノミクスの(正社員向け)賃上げ論と推察していたが、別物であった。また、取れるところ(大企業・金持ち)から取って弱者を保護しろという社会主義的な思想とも異なる。
本書では、富が偏っていること、具体的には日本は企業規模や年齢、男女格差が諸外国の先進国と比べて高いことを示し、さらに余剰金はお金持ちよりも余裕のない人の方がより多くのお金を使うことから、中小企業・非正規・女性・若者といった属性こそ、もっと評価されるべきと論じられている。

白書を始め、多くの資料を緻密に分析しながら、斬新な分析と分かりやすい解説に、引き込まれる。分析内容は多岐にわたるのだが、個人的には以下の3点が非常に興味深かった。

・国の金融緩和がデフレを生んだ

2000年代に行った金融緩和は、資源バブルを発生させ、結果、原価を転嫁できない中小企業の賃下げを生み、デフレになったというもの。金融緩和が国内で完結するなら、確かに意味があったのだろう。しかし、金が各国を漂流するグローバルの現代社会においては、意図しない実害を生むというのはとても納得できる。今の金融緩和の結末を同読むか、示唆に富む。


・国が貧困を作っている

憲法第二十五条 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」にあるとおり、社会保障が国家の重要な役割の1つであることには誰も疑いはないだろう。問題はそれをどこまで行うか、過保護と適切な保護のバランスだと思っていた。しかし、本書では所得の再分配後に相対的貧困率が拡大していることを指摘している。つまり、国が、貧しい人をより貧しくしているという。都知事選でも高齢者に優しい社会、高齢者の医療費を無料にと言うように、本来は豊か(だが政治力のある)高齢者ばかりを向いている結果、国家が社会保障としての役割を果たさなくなっていることは、衝撃的でさえある。


・サービス業(非正規・女性)に目を向けるべき

ここには2つ、論点がある。まず1点目は、これからの経済発展を考えたときに、物が充足した現代で物質的豊かさを求めるには限界なので、サービス産業を伸ばすべきということ。そして次に2点目だが、そのサービス産業に従事する人達(その多くが非正規、女性)の収入が低いので、これを抜本的に上げるべきという主張(日本ではサービス=無料という間違った認識もあるせいだろう)。



2番目、3番目のポイントは、1/27放映のクローズアップ現代「あしたが見えない ~深刻化する“若年女性”の貧困~」と本質的に同じである。

著書の「日本経済の奇妙な常識」と同様、非常に素晴らしい、必読の書だ。


パンダをいくらで買いますか? ストーリーで学ぶファイナンスの基礎知識パンダをいくらで買いますか? ストーリーで学ぶファイナンスの基礎知識
野口真人

日経BP社 2013-08-22
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タイトルでつる本は正直好きではないのだが、本書は非常にうまいと感じた。

当然ながらパンダをいくらで買うかは、本書では枝葉末節なのだが、冒頭にあるパンダ関連の話にファイナンスのエッセンスが凝縮されている。本編とも言うべきその後はパンダの話は出てこず、ファイナンスを易しく解説していくのだが、冒頭のパンダの話があり、違和感なく入ってくる。

あくまでもファイナンスとは何か、その考え方(のさわり部分)を解説する本なのだが、これがまた分かりやすく、面白い。気付けば、読み手もパンダのことなんか忘れてファイナンスとは何かを探求するだろう。これだけ濃い(でも容易に読めるよう簡略化されている)本なら、タイトルでつるのも、ありと思えた。
さっさと不況を終わらせろさっさと不況を終わらせろ
ポール・クルーグマン 山形 浩生

早川書房 2012-07-20
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アベノミクスの根底にあるリフレ政策を理解できる1冊。賛否両論はともかくとして、なぜ不況時に財政出動が必要なのか、なぜインフレ目標を立てるのか、その理由が理解できる---少なくとも、著者は経済学者であり、ロビイストや日本の族議員のように利益誘導ではない。

一方、意図的か否か不明だが感情的な記述が多い反面、腹落ちしない点や新たな疑問が多々、発生した。例えば、
・財政出動や金融緩和を行ったとして、グローバル社会では国内にお金が留まらないので効果は限定的ではないか。
・デフレ下の日本でも実質GDPは下がっておらず、生活面でも不況感はあまりない。デフレ(インフレ)と景気の関連性に実感がないのではないか。
・財政出動が有効に機能した例は、そもそもあるのか(ニューディール政策などはWWⅡ特需などでかき消されており、)。
など、読後感は不完全燃焼だった。

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