社会: 2013年9月 Archives

企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書)企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書)
松井博

アスキー・メディアワークス 2013-02-12
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派遣社員も経験しながら、AppleでiPadなどの品質管理でシニアマネージャーまで勤めた経歴を持つ著者。いろんな世界を経験したからこそ見えてくるのだろう、世界が国という枠組みを超えて、帝国と定義する大企業によって支配されている実態を書き下ろす。

新鮮な野菜・食材よりも遺伝子組み換え食材、抗生物質など化学肥料をたくさん使った食材やファストフードの方が安くすむため、マクドナルドや大手メーカーなどに依存していく。そしてそれが肥満を始め、健康に影響を及ぼす。しかし、保険も働く企業によって大きく異なる(著者はAppleを辞めて、保障の少ない民間の保険に月10万円払うことになったと述べている)。また、働き場所も、大手企業の社員がやらない危険な仕事が多くなるというように、一部の企業によって搾取されている現実を問題提起する。

読み物としては非常に面白かった。タイトルから個々の話がきれいに構成されており、わかりやすい。

ただし、個々の事象に対しては、一方的な印象は受ける。例えば、遺伝子組み換え食材は、それが開発されたことで多くの人々が餓死から免れるようになったことを考慮せずに悪とするのは、かつてのDTP問題などと同じである。また、提言として、Appleなどの優秀な人でオペラなど多彩な人が多いことを例にあげ、芸術の能力をみがく必要性を訴えるが、因果関係が疑問である。