社会: 2013年6月 Archives

津波災害――減災社会を築く (岩波新書)津波災害――減災社会を築く (岩波新書)
河田 惠昭

岩波書店 2010-12-18
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本書は津波の恐ろしさと、その対策---副題の通り減災社会の築き方を論じる。

3.11までは、津波と高波と何が違うのか、具体的に理解していなかった。最も、これは私だけでなく世間一般の知識だっただろう。津波50cmと言われて逃げる人が非常に少ないのは、高波の感覚でいるからだろう。本書では通常の波と津波は何が違うのか、地球の裏側で起こった津波がなぜ減衰せずに反対側まで到達するのか、津波1mの時、堤防1mで防げるか、津波の進路は、などを物理的に解説する(少し、専門的でちょっと難解ではあるが)。

一方、対策としては堤防や高台、避難所といったハード面の他、ハザードマップの確認や訓練など、住民の意識向上や有事の際の心構え、対応といったソフト面を重視しているのが印象的である。本書でも絶賛している釜石の防波堤(総工費1215億円、住民1人辺り300万円かけて建築!)ですら、完璧でなかったのは3.11の結果が物語る通り、最終的には人間、それも自助、即ち行政だけではなく個々が考えるべきなのだろう。

最後に、本書が発行されたのは2010年12月。もし、少しでも多くの人に読まれていたら、と考えざるを得ない。
「領土問題」の論じ方 (岩波ブックレット)「領土問題」の論じ方 (岩波ブックレット)
新崎 盛暉 岡田 充 高原 明生 東郷 和彦 最上 敏樹

岩波書店 2013-01-10
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北方領土・尖閣諸島・竹島問題について、それぞれの専門家が論じる。対立の背景や事情を、それぞれの側から客観的に把握できる。
本書で記載されているナショナリズムという魔力による思考停止というのも、領土問題の実情をずばりと言い表している(最も、これは双方の国について当てはまるし、日本では、これに無関心という別問題もあろう)。

領土は国家の主権問題と考えていた。しかし、尖閣諸島が昔は台湾・沖縄の人々が国境を越えて生活の場としていたという事情を知ると、現地の人々の声が一切聞こえてこない領土問題というのも違和感を感じ得ない。

なお、北方領土は、これについて書かれている東郷和彦氏の以下の著書が詳しい。
「北方領土交渉秘録―失われた五度の機会」