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本日の1冊: 自助論

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自助論自助論

パンローリング株式会社 2013-06-30
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電子書籍専用Version。はっきり言って、この価格(¥270)は非常に魅力的。古典の名著だけに、一家に1冊(一Kindleに1冊?)したい。

ヨーロッパ、特にイギリスで成功した発明家や芸術家、実業家など様々な人々を紹介し、人生の重要な素質は才能や生まれた環境ではなく、努力や忍耐力、集中力といった本人の資質であることを説く。どの時代も自己啓発本はあるが、歴史に裏付けられたストーリーだけに興味深い。

個人的には、日常で使用しているコーヒーカップのブランド、WEDGWOOD ウェッジウッドのストーリーが興味深かった。
アドラー 人生を生き抜く心理学 (NHKブックス)アドラー 人生を生き抜く心理学 (NHKブックス)
岸見 一郎

日本放送出版協会 2010-04
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アドラー心理学を、彼の生い立ちや置かれた環境とともに解説する。「嫌われる勇気」の後だと、単に個人主義というよりも、むしろ他者との関わり合い、アドラーの言葉で言うところの”共同体感覚”に重きを置かれていると感じる。

アドラーの著作から引用するところが多いのだが、「子どもの教育」の多用からもわかる通り、アドラーが子どもに対する教育に深い考察をもっていた点も興味深い。
例えば、兄弟順位による個性の違いの解説や、叱ることや褒めることの弊害と勇気づけの必要性は、疑問点はあるものの、納得したり、斬新だった

また、「嫌われる勇気」では他者の評価を気にしない、他者の問題を解決しないという個の重要性を感じてすっきりした分、こちらでは無償の愛的な奉仕が強調され、矛盾と感じる両者の融合に頭を使わされる。

もっとも、個の置き方や他者との関わり合い、人生を考える上で、本書は適切な1冊であることに変わりはない。
嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え
岸見 一郎 古賀 史健

ダイヤモンド社 2013-12-13
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アドラーの思想を青年と哲人の対話という物語形式で解説する。簡易な言葉で書かれており、かつ今でも(今でこそ?)通用するアドラーの考え方は、衝撃的でもある。ベストセラーとなるのも納得

”嫌われる勇気”とは他人の問題を抱え込まず、自分の問題に集中するかということ。上司、教師、親、パートナーがどう思うか、何をしてくれない、何をする、といった不満は全て他人の問題であり、切り離すことで自由になるという考え方は、一見自己中心的と思われるが、アドラーに言わせると逆なのだ。他人に対しては承認要求ではなく、アドラー思想で共同体感覚という貢献の重要性を説く。

万人向けにするが故、軽い感じもするし、単なる自己啓発本の1つと捉えられそうだが、アドラー心理学の偉大さは変わらない。もしアドラーの思想を知らなかったら、とっかかりとしてぜひ読みたい1冊。
図解 クラウゼヴィッツ「戦争論」入門 (中経の文庫)図解 クラウゼヴィッツ「戦争論」入門 (中経の文庫)
是本 信義

中経出版 2006-10-03
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難解なクラウゼヴィッツの「戦争論」を、ポイント毎に史上(主にWW2)のサンプルをもとに解説してあり、わかりやすい。概要が簡易に理解できる。未だ原著を読んでいないので本筋を理解したとは言えない身であるが、概要は理解できる。

一方、タイトルにもある”図解”については、今ひとつ。様々な記号でサンプル事例を表しているのだが、凡例もなく、それらを繋ぐ矢印が時系列を表していたりロジックの繋がりだったり、バラバラ。頭の中の整理途中のメモ・・・を脱しない印象だった。
憲法で読むアメリカ史 下 PHP新書 (319)憲法で読むアメリカ史 下 PHP新書 (319)
阿川 尚之

PHP研究所 2004-10
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下巻では、南北戦争後、現代(ブッシュJr.1期目)までを扱う。デュープロセス化、ニューディールと第2次大戦による大統領の権限強化がありながらも、法治国家としての合衆国最高裁の変貌や地位確立が非常に分かりやすい。争点では人種差別や人権、今日では保守派と進歩派の対立要素でもある中絶問題など、アメリカが分かれ、議論してきた点が、また判事の任命を巡る政治的な駆け引きなど、上巻のコメントの繰り返しとなるが、憲法を切り口にアメリカを追う視点がユニークかつ斬新で面白い。以下に、気になった点を列挙する。

南北戦争を経ても20世紀半ばまで(主に黒人に対する)人種差別が残ったのが、ポピュリズムの影響、すなわち鉄道資本に対する農民層の不満が募り、政治的発言を増加させた。彼ら貧しい白人と労働者として虐げられている黒人の連合を恐れた裕福な白人層が、それぞれを離反させるために人種の差異を強調する作戦にでた。(P.82)

下院議員は10年ごとの国勢調査に基づき、各州に配分する。しかし、選挙区の設定は、各州の議会が決める。19世紀末から20世紀にかけて都市化が進むと、1票の格差が生じるようになった。例えばカリフォルニアでは、98対1まで広がった。(P.260) 
→州毎に2名割り当てる上院は当然のこととして、アメリカで1票の格差は問題にならないと理解していたが、これは誤りであると認識させられる。

その他、保守派(キリスト教・自由)と進歩派(科学など先進的・連邦集約型)の違いなども、種々の凡例より理解が深まった。少しオーバーだが、アメリカを知る上で欠かせない1冊(上巻含めて2冊)であると感じた。

本日の1冊: 人間失格

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人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))
太宰 治

新潮社 2006-01
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サッカーの日本代表・長谷部氏が推薦していたこともあり、読了。

自意識に苛まれ、世間とうまくやっていけず酒と女に溺れる主人公。どう見ても怠惰な人格そのものだが、どこか憎めず。客観的に書かれているのだが、気がつけば主人公に感情移入している。主人公は自分のだらしない部分を抽出・拡大しているのではないか、だとすれば、”人間失格”か否かは、実は紙一重なのかもしれない。
武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える   知的生きかた文庫武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える 知的生きかた文庫
新渡戸 稲造 奈良本 辰也

三笠書房 1993-01
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岩波文庫版とはまた趣向の異なった、現代語による記述のため、また字の大きさ・フォント的にも読みやすい。

キリスト教始め大抵の宗教は教典があり、作法から恥や罪といった考え方まで明文化されているが、日本人に根付く神道・仏教にはそれがない(正確には仏教には教典があるが、体系的にまとまっているとも言えず、またキリスト教やイスラム教・ユダヤ教のように原点として絶えず読まれているわけではない)。それが故、一気に近代化した日本と日本人がわからなかった西洋に対して日本を説いた本書の背景を考えても、本書の価値がよくわかる。

なお、現代語になったが故、考え方に古くささというか、普遍性のなさを感じてしまったのは気のせいだろうか。
星の王子さま (新潮文庫)星の王子さま (新潮文庫)
サン=テグジュペリ Antoine de Saint‐Exup´ery

新潮社 2006-03
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世界で聖書の次に読まれているという1冊。星の王子さまミュージアムはじめ、その存在こそ知っていたが読んだことなかったので手に取ってみる。

アフリカに不時着したパイロットが宇宙から来たという王子様に出会い、星々の住人達の話とともに大人のつまらなさ、盲目さを聞かされる。その世界観は、奥深く、難しい。あるいは、自分もつまらない大人になって盲目になっただけだろうか。

”l'essentiel est invisible pour les yeux”(大切なものは、目に見えない)

という言葉が非常に印象的。なお、作者のサン・テグジュペリ自身もアフリカに不時着した経歴の持ち主であるが、そのときの状況や心境も興味深い。
武士道 (岩波文庫)
武士道 (岩波文庫)新渡戸 稲造 矢内原 忠雄

岩波書店 1984-10
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おすすめ平均 star
star現代社会に生きるすべての人に、必読の書!(笑)
star 山岡鉄舟こそが武士道の体現者です!
star青年へ推薦する書の一つ

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急速に近代化を図る明治時代の日本において、忘れ去られようとする武士道の本質を世界に知らしめた1冊(原著は英文)。義、勇、仁、礼、誠から教育・刀・切腹まで、士が目指した純粋なるその心は、非常にシンプルでありながら、奥が深い。その心は現代にも通ずるものがある。

本筋ではないが、残念なのが今時珍しい字の小ささ。なかなか、読みにくく目が疲れる。

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