古典: 2012年12月 Archives

憲法で読むアメリカ史 下 PHP新書 (319)憲法で読むアメリカ史 下 PHP新書 (319)
阿川 尚之

PHP研究所 2004-10
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下巻では、南北戦争後、現代(ブッシュJr.1期目)までを扱う。デュープロセス化、ニューディールと第2次大戦による大統領の権限強化がありながらも、法治国家としての合衆国最高裁の変貌や地位確立が非常に分かりやすい。争点では人種差別や人権、今日では保守派と進歩派の対立要素でもある中絶問題など、アメリカが分かれ、議論してきた点が、また判事の任命を巡る政治的な駆け引きなど、上巻のコメントの繰り返しとなるが、憲法を切り口にアメリカを追う視点がユニークかつ斬新で面白い。以下に、気になった点を列挙する。

南北戦争を経ても20世紀半ばまで(主に黒人に対する)人種差別が残ったのが、ポピュリズムの影響、すなわち鉄道資本に対する農民層の不満が募り、政治的発言を増加させた。彼ら貧しい白人と労働者として虐げられている黒人の連合を恐れた裕福な白人層が、それぞれを離反させるために人種の差異を強調する作戦にでた。(P.82)

下院議員は10年ごとの国勢調査に基づき、各州に配分する。しかし、選挙区の設定は、各州の議会が決める。19世紀末から20世紀にかけて都市化が進むと、1票の格差が生じるようになった。例えばカリフォルニアでは、98対1まで広がった。(P.260) 
→州毎に2名割り当てる上院は当然のこととして、アメリカで1票の格差は問題にならないと理解していたが、これは誤りであると認識させられる。

その他、保守派(キリスト教・自由)と進歩派(科学など先進的・連邦集約型)の違いなども、種々の凡例より理解が深まった。少しオーバーだが、アメリカを知る上で欠かせない1冊(上巻含めて2冊)であると感じた。

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