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坂の上の雲〈8〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈8〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-02
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 ずっと気になってはいたが、手を付けずにいたのはシリーズ物故の長さが、後回しにしていた唯一の理由であった。が、いざふたを開けてみれば怒濤の物語(一応は小説だが、歴史でもあるので、物語と言っていいものか疑問だが)展開、気がつけばあっという間に読み終え、心には空虚のよう、まさに

頭の中の夜の闇が深く遠く、その中を蒸気機関車が黒い無数の貨車の列を引きずりつつ轟々と通り過ぎて行ったような感じだった。(P.358)

である。

 第八巻は日本海海戦を中心に、終戦までが描かれている。物語の結末は歴史が示すとおりであるが、特にこの八巻では歴史が示すさまざまな教訓が掲載され、心に強烈なメッセージを投げかけてくる。以下、一部羅列ながら引用まで。

「神明ははただ平素の鍛錬に努め戦はずしてすでに勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治平に安ずる者よりただちにこれをうばふ。古人曰く、勝つて兜の緒を締めよ、と」(P.290、秋山真之文・東郷「告別の辞」で使用された「連合艦隊解散ノ辞」)

「教科書というものは、人間が作るもので、ところがいったんこれが採用されれば一つの権威になり、そのあとの代々の共感はこれに準拠してそれを踏襲するだけになります。いま教科書がないために教官達は頭脳のかぎりをつくして教えているわけであります。(以下、省略)」(P.327)

その戦後の最初の愚行は、官修の「日ロ戦史」においてすべて都合のわるいことは隠匿したことである。(中略)これによって国民は何事も知らされず、むしろ日本が神秘的な強国であるということを教えられるのみであり、小学校教育によってそのように信じさせられた世代が、やがては昭和陸軍の幹部になり、日露戦争当時の軍人とはまるでちがった質の人間群というか、ともかく凶暴としか言いようのない自己肥大の集団をつくって昭和日本の運命をとほうもない方角へひきずってゆくのである。(P.341)
坂の上の雲〈7〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈7〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-02
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第七巻では、奉天会戦での辛勝、バルチック艦隊の日本到着までを収録。

奉天会戦では、かろうじてロシア側のミスが日本のそれよりも上回るなどから勝利(と呼べるか微妙だが)となるが、その中でも以下の記述は、大規模組織におけるリーダーシップの拙い対応として、印象深い。

ロシア軍はいたずらに弄命につかれ、さらには軍団のなかの小単位をあちこちひきぬいては予備隊にしたり、救援軍にしたりしたために建制秩序がくずれ、団隊長みずから自分はたれの命令をあおぐべきかどうかということがわからないほどに指揮系統が寸断されたり混乱したりして、組織が大いに弱体化した。(P.114)

その他、最初にバルチック艦隊を発見した日本人として紹介される宮古島の漁師達の逸話も興味深い。かれらは発見した事実を、漁で一仕事終えた後にもかかわらず、電信所がある石垣島まで15時間舟を漕ぎ、上陸地点から八重山郵便局まで30km走り、本島へ
「敵艦見ゆ」(P347)
と発信する。結果、哨戒艦信濃丸の後となり第一報とならなかったが、名もない人々の命がけな行動、さらにその後ずっと誰にも語らず日の目を見なかった点に、当時の日本人の必死な一面を垣間見る気がする。
坂の上の雲〈6〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈6〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-02
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第六巻では、黒溝台、欧州での諜報、旅順を落とした乃木群の北進、そしてバルチック艦隊と日本海軍の状況を収録。資金も兵も枯渇しつつある日本、潤沢の軍力を持ちながら不穏な空気が立ちこめ革命前夜の模様を呈するロシア。全編、日本・ロシア通して様々な人物が登場するが、欧州で諜報活動を行う明石が興味深い。氏についての記述

-----あの明石に、それができたのか。
と、みなくびをひねり、明石のどこがそれをさせたのだろう、とふしぎがった。
結局は、かれの行動者としての資質にあるとしかおもえない。かれは目標をさだめると構想をたて、それにむかって思案と行動を偏執的に集中させるという性格をもっていたが、それがかれを成功させたにちがいなく、(P.202)

が思案するよりも行動することの重要性をよく示す。

その他、「ウラジオストック」の意味は感銘を受ける。

極東のウラジオストック(Vladivostok)という町の名は東を征服せよという意味であることを知ったが、運命のしだいではロシア帝国の東(vostok)が東京になるかもしれないということをおもった。(P.171)

坂の上の雲〈5〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈5〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-02
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おすすめ平均 star
star二百三高地
star司馬ファンからの叱責覚悟で反証
star組織内部の《陰謀》が、組織を破滅させる。

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第五巻では、二〇三高地攻略、バルチック艦隊の回航、黒溝台の情勢を収録。日本の旅順要塞攻略方法、ロシアのバルチック艦隊では、戦略のまずさ・指揮官の欠点から、当時の日本・ロシアの国民性や国自体のシステムの長所・短所まで丹念に分析されている。

毎回の感想だが、物語としてのおもしろさはもちろんとし、歴史の中から独裁の欠点、寿命を迎えた国(システム)の脆弱性、普遍的な戦略の必要性・会得について考えさせられる。

特に、以下については「兵理」「戦史」「兵書」を様々な分野の類に読み替えられることに気付かされる。

真之は、兵理について、
「兵理というものはみずから会得すべきもので、筆舌をもって先人や先輩から教わるものではない」
(略)
あらゆる戦史を読んで研究せよ、読める限りの兵書を読むべきである、その上でみずから原理を抽出せよ、兵理というものは個々の研究して個々が会得するしか仕方がないものだ、といった。
(P.189)
坂の上の雲〈4〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈4〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-01
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おすすめ平均 star
star通勤電車の中で・・
star組織とは何か?人材とは何か?
starあの乃木も司馬にかかれば・・・・・

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4巻では旅順から出てきた艦隊との黄海会戦、陸軍の遼陽会戦、及び膠着している旅順攻略と、バルチック艦隊の出航が記述。国力が乏しい中、当時の日本の字のごとく必死な想い、決意の重さは決して今の時代では計り知ることができない。逆に、日本・ロシア問わず、うまく立ち回れなかった箇所を、組織・人間などの視点で冷静に記述している内容は現代にも通ずるものが多々あり、考えさせられる。

また、そうした中で渦中の人物らが引用する歴史についても興味深い。
・黒木は遼陽作戦として義経の鵯越(ひよどりごえ)と理解。(P.128)
・うかうかすると、乃木はグルーシー将軍になる」(P.405~)
ナポレオンがウォーターローで英普連合軍との戦ったとき、別同隊を率いていたのがグルーシー将軍。彼は愚直という以外に取り柄のない将軍で、柔軟な頭脳と決断心を持っていれば、ナポレオンの運命は違っていたかもしれない。

もちろん、小説としても読む者を惹きつけるおもしろさは、なるほどこれだけ読まれるのも納得である。

以下、個人メモ
・長岡外史はのちに飛行機に着眼したり、伝書鳩を鷹でやっつけようとしたりしたところを見ると、飛ぶものが好きなのかも知れなかった。(P.212、気球を活用するシーンにて。)
坂の上の雲〈3〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈3〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-01
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おすすめ平均 star
star読むほどに止まりません。
star懸命に生きるということ
star正岡子規の、《業績》。

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迫り来るロシアの脅威、それに立ち向かった日本。様々な事象が、奇跡のように、しかし必然としてあった。48%が軍事予算という驚異の国家予算とそれに耐えた当時の日本国民、旧幕府の人間や維新の功労者でも容赦なく首切りで組織の刷新化を計った権兵衛、切腹覚悟で議会を欺き戦艦を発注した西郷、今昔東西の兵法を独学して30代にして日本の海軍の戦略を担った真之。物語としてのおもしろさは当然とし、心に強烈な印象を残す、現代でも生きる考え方が満載である。

以下、引用。

日清戦争の前、権兵衛がやった最大のしごとは、海軍省の老朽、無能幹部の大量首切りだった。(P.51)

少佐の真之を異例ながら昇格させて先任参謀にした。三十七歳の男が、日本の運命を決する海上作戦をひとりでになってゆくことになったのである。(P.215)

方針やら戦略戦術なりは、ふつう水兵に無関係なものとして知らされることがない。(中略)マカロフの統率方は、水兵のはしばしに至るまで自分がなにをしているかを知らしめ、なにをすべきかを悟らしめ、全員に戦略目的を理解させたうえで戦意を盛りあげるというやりかたであった。(P.326)
坂の上の雲〈2〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈2〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-01
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おすすめ平均 star
star明治時代
star雄大な明治魂の連鎖。
star明治人の明るさ

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清と日本の戦争が始まる。圧倒的に劣勢と思われながら、洋上では清海軍を撃破、陸上では難攻不落と言われた旅順要塞を1日で陥落する。列強に対する恐怖から、新しい日本を必死に作っていた時代の人たちに感銘を覚える。諸外国の先進事例・戦術について、必死に勉強し、それを実践で実行する姿は、第二次大戦の精神主義はおろか、現代の目先に目を奪われた政策とは明らかに違う。ーター・ドラッカーの「リーダーは他人が何を思うかではなく、正しいことを実施するべき」というのがまさに歴史を通して理解できる。
坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-01
売り上げランキング : 1202

おすすめ平均 star
star早く次を読みたくなります
star日露戦争前
starまずは手に取り読んでみるべし。

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ずっと読もう読もうと思っていたものの、シリーズ物であったことから後回しにしていた。NHKドラマ(昨年・今年・来年と3年がかりで)放映を気に読み始めるも、あっという間に読み終える。読む者をぐいぐいと惹きつけるその魅力は読んでこそ、納得。

現状に対する危機感とその現状打破をなしとげた人々は何を感じ、考え、どのように生きたか。自分含め、今の時代に足りない物は何か。1冊目はまだ序章ということで、主人公らもまだ素朴であり、楽天的(兄・好古除き)である。

2000年近く前のガリア戦記同様、ここでも
 文字を習わせ書を読ませると「俳句を作ったり歌をよんだりして商売に身をいれなくなる」 (P.25)
と主旨こそ違えど新しい文化を忌み嫌う考えがあるのが興味深い。
のぼうの城
のぼうの城和田 竜

小学館 2007-11-28
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おすすめ平均 star
starスカッとさわやか
star堤防決壊の大スペクタクル
star軽く薄っぺらい

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直木賞にもノミネートされ、2011年公開予定で映画化が決まった1作。
天下統一を目前にした豊臣秀吉が北条氏を攻めた際、石田三成率いる2万の大軍にたった500騎で徹底抗戦した武蔵国・忍城を舞台にした歴史(エンターテイメント)小説。

圧倒的不利な状況をいかにして戦ったか。本作はそうした戦術もさることながら、のぼう(でくのぼう)と領民から呼ばれる城代 成田長親 を始め個性豊かな登場人物も読む者を惹きつける。ストレートな展開ではあるが、読んだ後も爽やかであり、娯楽小説としても楽しめる。

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