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老人たちの裏社会老人たちの裏社会
新郷 由起

宝島社 2015-02-10
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既に件数は未成年よりも多くなっている高齢者による犯罪。本書はそんな実態を、万引き、ストーカー、暴行・DV、売春、ホームレス、孤立死(後ろ2つは犯罪ではないが・・・)の事例を生々しく記す。

社会を引退し、孤立していくことで精神的な変化をもたらすのだろうか。いままで全うに生きていたはずの人々による、奇行は目を覆うばかり。本書は解決策まで言及していないが、思うに、人生として”暇”の使い方がいかに重要か。しか現役時代からいかにるに趣味であり、教養を身につけておくかということだろう。

『教養とは自分一人で時間を潰す能力のことである』中島らも
じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路 (単行本)じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路 (単行本)
ロバート スキデルスキー エドワード スキデルスキー 村井 章子

筑摩書房 2014-09-03
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幸せと経済的豊かさはの関係は古くからの議論であるが、タイトルの通り充分に豊かになった先には何が正しいのかを問う。経済が成長していれば未来は今よりも豊かになることは自明であり、努力が即ち幸せに直結する。しかし成熟した資本主義経済では、がむしゃらにがんばらなくても不自由することはなく、むしろ努力したところで結果に繋がらない、閉塞感すらある。ゆとり世代という言葉が言われて久しいが、豊かさの定義を考えさせられる1冊。

経済学で有名なケインズだが、彼は経済成長によって効率的になることで労働時間は減少してゆくと予想していたことが興味深い。実際問題、労働時間は増えているのだが。エンデのモモではないのだが、何が人々を労働に駆り立てるのか、またその結果、失っているモノは何なのか。著者によれば、幸せに繋がる価値として健康、安定、尊敬、人格(自己確立)、自然との調和、友情、余暇を説く。

忙しい日々を過ごす時だからこそ、一言一言が心に染みて考えさせられる。一方、当たり前だが労働を軽視して経済的な自由がなければ、安定や健康、自己確立などは成立しないのも自明だろう。結局の所、ポートフォリオ的なバランスという事に落ち着くのだろう。
「学力」の経済学「学力」の経済学
中室 牧子

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015-06-18
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教育の科学とも言うべき1冊。データに基づいて効果のある教育の仕方を説く。教育の世界に限らないが、憶測や主観で判断される議論は不毛以外の何ものでもないが、悲しいかな、日本の教育の世界では未だにそれが主流である。本書ではゲームの影響、褒めることや少人数学級の是非などの論点を、主にアメリカの研究成果(うらやましいことに、向こうでは30年単位で追跡した実験結果がある)から方向性を導く。

親はもちろん、教育関連に関わる行政、政治家の方々にも(僭越ながら)ぜひ読んで頂きたい一冊。
エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇
S. C. Kalichman 野中香方子

化学同人 2011-01-29
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本書で、世にはエイズ否認主義というものがあることを知る。具体的には、HIVはエイズの原因ではない、エイズは環境要因(貧困や麻薬・同性愛などの非道徳)によるという。現代の日本ではエイズに対する偏見や無知はあまりないと思うが、否認主義者が著名な科学者やジャーナリスト、政治家におり、その結果、適切な治療を受けずに亡くなる人がいる。著者はそうした人災に対する問題提起、憤りによってペンをとった。

これを読んで思い出すのが、今でも年間1mSvに拘り避難生活を続ける福島。チェルノブイリでも、避難生活によるストレスの弊害が問題視されていたが、美味しんぼの作者、雁屋哲氏などのように未だ放射能の害を非科学的に延べることで別の、より大きい害を与えている人の罪は重い。
侮日論 「韓国人」はなぜ日本を憎むのか (文春新書)侮日論 「韓国人」はなぜ日本を憎むのか (文春新書)
呉 善花

文藝春秋 2014-01-20
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従軍慰安婦に始まり、朴槿恵大統領の「1000年の恨み」のように、なぜ韓国の人々はあそこまで嫌日を通り越して侮日という態度を取るのか。本書は元・韓国人で元々は日本を下に見ていたというだけあり、客観的に本質を洞察している。

事実や論理的な話が通じず、日本や親日家に対して法治国家とは思えない対応をとるのも、日本は中国、つまり世界の中心から韓国よりも離れた野蛮でレベルの低い民族という価値観が韓国人にはあるというところから納得。また、後半では文化や価値観の違い、例えば日本人のマナーとされる、脱いだ靴の向きを変えることや食事中に音を立てずに食べること、また知人同士でも適度な距離感を持つことが、韓国の人々にとっては不快に感じると言うことから、多大な誤解を生んでいることも紹介する。
一方で、第二次大戦中の朝鮮併合時も、当時の状況を知る人々は日本を恨んでおらず好意的に考えているというところなど、日本人として自虐的な歴史ばかりを目にする中でハッとさせられる。

日韓問題を、韓国の嫌日の理由を、客観的に考えてみる機会にしたい。
陽のあたる家~生活保護に支えられて~ (書籍扱いコミックス)陽のあたる家~生活保護に支えられて~ (書籍扱いコミックス)
さいき まこ

秋田書店 2013-12-16
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ニュース一般では、不正受給などネガティブな扱いが多い生活保護。また、受給者に対しても働かない、怠けているという偏見も少なからずあるのだろう。※私自身は、身近に受給者がおらず、推測の域を出ていないが。本書は、生活保護がちょっとしたきっかけで誰でもなりえること、社会のセーフティネットとして必要なこと、受給者は決して怠け者ではなく、また不正受給など悪事を働く人はほんのごく少数に過ぎないことを漫画で紹介する。

MAKERS―21世紀の産業革命が始まるMAKERS―21世紀の産業革命が始まる
クリス・アンダーソン 関美和

NHK出版 2012-10-23
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フリーミアムの概念を示した「フリー」や(読んでいないが)「ロングテール」でその優れた先見性を示したクリス・アンダーソンが、3Dプリンターなどの登場によるこれからの時代を描く。

フリーミアムも、今でこそ当たり前だが当時は半信半疑だった。と同様に、昨今、賑わいを見せている3Dプリンターも今までは新たなおもちゃ(ガジェット)程度の認識でいたのだが、本書を読んでその意味を理解した。今までは大量生産によりコストが低減されるのに対し、今後は1個作るのも100個作るのもコストに差異が少なくなるため、多種多様なものができる。単に技術の変化だけでなく、それに伴う近未来に起こる(あるいは既に起きている)社会の変革を指し示す。

本日の1冊: 詐欺の帝王

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詐欺の帝王 (文春新書)詐欺の帝王 (文春新書)
溝口 敦

文藝春秋 2014-06-20
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オレオレ詐欺(振り込め詐欺)の頂点にいた人物へ取材を元に、システム金融からオレオレ詐欺へ変遷した歴史、詐欺に関わる人物の素性に迫る。

本書を読んで何よりびっくりしたのは、オレオレ詐欺の頂点に立つ人物が如何に優秀かということ。決して思いつきや暴力だけで成り立っていない、むしろそれらは全く使っていないと言うこと。知識有り、カリスマ有り、論理的に考え、行動している。例えば被害にあう人物の分析に対しては、ノーベル経済学賞のダニエル・カーネマンの理論を理解した上で実践している。---だからこそ、多くの人が多額に騙され、警察に捕まるのは末端だけで決して全容に迫れないのだろう。感想は憎しみや怒り(自分や身近が被害にあっていないというのもあるが)という感情よりも、才能が勿体ないの一言に尽きる。 いる
働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)
駒崎 弘樹

筑摩書房 2009-05
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病児保育などで活躍されているNPO法人フローレンスの代表・駒崎弘樹氏による、長時間労働の改善に関する提言。今流で言うところの、ワークライフバランス本。

氏自身が片時もメールから目を離さないような長時間労働を実施していたそうだが、とあるアメリカの研修を受講したことで長時間労働に対して疑問を呈するようになる。それ以降、無理矢理に定時退社を敢行し、家族や自分の時間を取り戻していく様を綴る。書きっぷりはかなり砕けていて、肩肘張らずに読める(人によっては、軽いと感じるかも知れない)。
ルポ 介護独身 (新潮新書)ルポ 介護独身 (新潮新書)
山村 基毅

新潮社 2014-06-16
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ある日、突然やってくる”介護”の現実。そこには同じ大変であっても、子育てとは違った、悲惨の現場が多い。本書ではさらに、孤立しやすい独身者による介護にスポットを当てている。

様々なケースの介護の現場を紹介しており、その重いリアルに、介護を経験してい者としては今まで考えたこともない、あるいは浅はかだったと痛感させられる点多々。当然ながら介護する・される側それぞれの事情や生活があり、単純に介護と言っても千差万別であり、本書を読んだからといって解決策がすんなり出るものではないのは事実だが、迫られていない時にこそ、読んで考えておくべきと感じる。

本書は独身者が介護をする場合の孤立を主題にしているが、孤立という意味では夫婦間の介護でも、あるいは家族から押しつけられている場合などでも発生し、必ずしも独身者に限らないのではないかと感じた。むしろ、独身者が介護される側に回ってからの方が切実なのでは?