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史上最大の決断---「ノルマンディー上陸作戦」を成功に導いた賢慮のリーダーシップ 野中 郁次郎 荻野 進介 ダイヤモンド社 2014-05-30 売り上げランキング : 13326 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ノルマンディ上陸作戦が如何に計画され、実行されたか。連合軍側、ドイツ側、それぞれの視点から描くのは「失敗の本質」「戦略の本質」の野中郁次郎氏といことで、読む前から否が応でも期待は高まる。
アメリカを巻き込んだチャーチルの話も興味深いが、本書では特に連合国派遣軍最高司令官となったドワイト・D・アイゼンハワーにスポットが当てられている。偉大なる平凡な人という言葉が似合いそう、圧倒的なカリスマ性が会ったわけではないが、軍事知識、哲学思想、人間性などバランス良く持ち合わせていたことがわかる。
日本軍と日本兵 米軍報告書は語る (講談社現代新書) 一ノ瀬 俊也 講談社 2014-01-17 売り上げランキング : 20596 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
第二次大戦時、アメリカ陸軍が敵を知るために自軍兵に向けて刊行した広報誌IB(Intelligence Bulletin)を基に、日本軍とは、日本兵とは何かを探求する。 万歳突撃やロジスティクスを軽視した戦略(と呼ぶかはさておき)の稚拙さを分析した書物は、「失敗の本質」を始め枚挙に暇がない。一方、戦術や兵士そのものに迫ったものは少ない中、本書はその貴重な1冊、特に敵側からの分析は興味深い。
IBの初期は日本人とはどういう人種か、同盟国である中国人との見極め方として日本人がLとRの発音が区別できないことを紹介したり、あるいは偏見のかたまりの内容まで、笑える。しかし、時を重ねて戦争も佳境になると、日本兵の戦術や傾向、人間性、弱点など緻密に評価しているのが良くわかる。
硫黄島など末期の戦闘は物資に困窮した悲壮感ばかりの状態を想像していたが、意外にも衣服や食料に潤沢だったという。また、修練は得意なので同じ戦法を繰り返し行う事が多いが、予想外の事態に弱いなど、現代の経済でも言われていることが書かれていたりして、興味深い。
決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫) 半藤 一利 文藝春秋 2006-07 売り上げランキング : 8938 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
広島、長崎を経て終戦へ向けた議論、天皇の降伏聖断。そして8月14日から15日正午の玉音放送までの緊迫した24時間を克明に(一部、史料が不十分な箇所はその旨明記有り)記す。
戦争継続派によって起こされたクーデターによって皇居を占拠されるも、ちょっとしたきっかけから玉音放送を録音したテープリールを奪われなかった偶然によって、承知の通り無事に終戦放送に至る。実は終戦も、ぎりぎりの状況でなしえた奇跡と知る。
国の存続のために降伏を決意した天皇、指導者。同じく国を憂い、降伏を翻そうとクーデターを起こした青年将校、敗戦の責任を感じて自害する阿南陸相。手段や結論としての正しさは別として、共通するのは、登場人物の日本を強く想う気持ちに、心揺さぶられる。
アジアを救った近代日本史講義 (PHP新書) 渡辺 利夫 PHP研究所 2013-12-14 売り上げランキング : 251653 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
拓殖大学総長・渡辺氏が、学生に行った講義をまとめた1冊。アジアを侵略した犯罪者という中国・韓国による批判や、朝日新聞のように捏造記事で日本を貶めようとする声が目立ち、自虐的な評価が目立つ近代の日本史。本書は客観的・肯定的に捉える。
小生が理解した、著者の主張は3つ。即ち、欧米に対する猛追と勤勉により日本はアジアで唯一、列強の植民地にならなかったこと。そしてアジアへの進出は、弱肉強食であった帝国主義の当時において、日本の行いは批判をうけることではなく(日本が進出しなければ他の国が進出していた)、むしろインフラ整備など現地の発展に貢献したこと。最後に、東京裁判は、それまでの国際法では合法だった行為を罰した、法の不遡及の原則から逸脱していたこと。
太平洋戦争は、アジアを救ったという大東亜戦争でもなければ、一方で日本の侵略戦争だったというのも正しくない。本書は前者に偏りすぎているが、少なくとも日本の歴史を不必要に卑下していたら、必読の一冊。
靖国史観―幕末維新という深淵 (ちくま新書) 小島 毅 筑摩書房 2007-04 売り上げランキング : 146486 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
靖国の何が問題か。本書を読むと・・・やはりわからない、というのが正直なところ。そもそも賛成派・反対派で論点がずれているのだが、存在そのものが矛盾しており、天皇の私社の粋を出ないので、少なくとも国家の元首が参拝するのは説得力ないと感じる。
「国体(国体)」という思想、「英霊」という概念、そして「維新」という史実と中心に靖国を解説するが、本書でも言うとおり、靖国は矛盾であるという結論に変わりなかった。「維新」という名のテロリストを奉り、以後は勝てば官軍として強者の施設であった。が、太平洋戦争で負けたが、そこで位置づけが変わっている。
世界の特殊部隊作戦史1970-2011 ナイジェル カウソーン 友清 仁 Nigel Cawthorne 原書房 2012-12-07 売り上げランキング : 194486 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
文字通り1970年から2011年オサマビンラディン暗殺まで、主に米英特殊部隊の作戦を31収録する。中には映画化された「ブラックホーク・ダウン」や、本「アフガン、たった一人の生還」になっている話なども含まれていて、1つ1つは短いものの、内容は濃い。
とても残念なのが、飛行機の名前や単位など、誤りが多い。かなりの頻度で遭遇するため、読む者の腰を折る。
飛行機技術の歴史 Jr.,ジョン・D. アンダーソン Jr.,John D. Anderson 京都大学学術出版会 2013-12-18 売り上げランキング : 177792 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ライト兄弟からジェット機まで、飛行機技術の歴史が凝縮されている1冊。少々効果だが、イラストや写真も多用されていて、専門の知識がなくても興味あれば十分堪能できる。
飛行機にロマンを感じる人なら、間違いなくお薦め。
マッキンゼー―――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密 ダフ・マクドナルド 日暮 雅通 ダイヤモンド社 2013-09-21 売り上げランキング : 22155 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
マッキンゼーの設立から今日まで、成長や変遷の経緯を時のMD(マネージングディレクター)を中心に纏めている。”秘密”という日本の副題から実際の案件の詳細や裏話を期待させられるが、どちらかというと歴史的な話なので原題の”Story”の方が近い。また、大前研一氏についてもマッキンゼーとしての評価が詳しい。
100年単位でマッキンゼーの歴史を知ることで、経営の複雑さを考えさせられる。即ち、昔はクライアントの業績を躍進させていたものの、今では必ずしもそうなっていない。ではなぜ、企業はマッキンゼーを雇うのか---フォーチュントップ100の2/3がマッキンゼーのクライアントだという。本書ではその解が、マッキンゼーを雇うことがステータスであり企業のブランドイメージであるという。だからこそ、BCGやアクセンチュアなどと違い高額フィーを維持し続けているのだろう。
最後には、ITに乗り遅れ苦戦を強いられていること、クライアントのためになっているのか疑問を呈して終わる。
私はガス室の「特殊任務」をしていた シュロモ ヴェネツィア 鳥取 絹子 河出書房新社 2008-12-11 売り上げランキング : 270940 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
アウシュビッツに強制収容され、特殊任務部隊として同胞の遺体処理をになってきたシェロモ・ヴェネチィア氏。特殊任務部隊自体も、隠匿のために3ヶ月毎に抹殺されて入れ替えられるのだが、シェロモ氏は奇跡的に助かり、こうして語ることができた。本書は氏との対談形式で綴られる、歴史の暗部を明らかにする貴重な資料(シェロモ・ヴェネチィア氏が著者となっているが、実際に編集したベアトリス・プラスキエ氏に関するクレジットはない)。
アウシュビッツにやってきて選別された病人・女性・子供・老人らは、そのままガス室に詰め込まれ(ガスを節約するために、ぎゅうぎゅうに押し込まれる)、10分以上悶え苦しみ、絶命していく。後に残った遺体は眼球が飛び出たり、体内の液体・排泄物が外に出て、それは悲惨な状況だったのだろう。特殊任務部隊は、それらをひたすら焼却炉に運び、次のために(シャワーを浴びると言って押し込めるために)ガス室を綺麗にする。一度、母親の母乳を吸っていた赤ちゃんが奇跡的に助かっていたが、やってきたドイツ人将校がやってきて銃で殺したという話は、言葉にならない。
ガス室から死体を焼却炉へ運ぶ特殊任務部隊(P.101)
罪悪感や感傷に耽る余裕などまったくない、生きるために必死だったという言葉が非常に重い。
世界を変えた100日 ニック ヤップ 日経ナショナルジオグラフィック社 2008-10-23 売り上げランキング : 237377 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
リンカーン、ライト兄弟の初飛行、タイタニック、リンドバーグ、真珠湾攻撃、広島原爆、ケネディ大統領暗殺、アポロ11号月面着陸、チェルノブイリ原発、9.11、スマトラ沖大地震、等々、150年の歴史を写真で綴る。流れとしての歴史の中に、写真でこそ表現できるその瞬間・瞬間に心奪われる。下手な解説を読むよりも、遥かに強いメッセージ、あるいは想像力が働かされる。