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アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】 アトゥール ガワンデ 吉田 竜 晋遊舎 2011-06-18 売り上げランキング : 4628 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
”人間は間違いを起こす生き物である” 誰でも一度は聞いたことあるフレーズだが、ではどのようにHE(ヒューマン・エラー)をなくすか、体系立てて整理していないところは意外に少ない。医療の世界でも、医者の裁量で行われることが多いため、ちょっとしたミスが多発しているという。著者はTIMEの最も影響力ある100人(2010年)に選出された医師で、WHOで医療ミスを防ぐためのチェックリスト作成を綴っている。
構成は自身の失態も含めた医療ミスの実態、WHOから依頼されてチェックリスト作成に至る経緯、チェックリストの事例として建築業界と航空業界の調査、そして医療へチェックリストの適用でなっている。ストーリーとしても秀逸で、読み物としても面白いが、特に興味深かったのが事例の建築業界と航空業界。
まず建築業界の話だが、スケジュール自体がチェックリストとして機能しているという。遅れを可視化し、一度問題が発生すれば関係者で協議して是正する仕組みができあがっているというのには目から鱗である。長年、WBS(Work Breakdown Structure)の類やスケジュールを扱っているが、チェックリストという発想はなかったので、非常に新鮮だった。
そしてもう1つが航空業界として、パイロットが扱うチェックリスト。医療も瞬時に必要最低限のことを確認するという点が同じため、こちらにより重点がおかれているのだが(実際、チェックリストと言われてイメージするのもこちらだろう)、”良いチェックリスト”という発想が興味深い。つまり、いかに面倒くさくさせないため、無駄を省くか(その削り方が、詳細は本書を参照いただくとして、熟慮の賜と思い知らされる)、その上で使う人に気づきを促せるか。そうした観点で幾度となく、改訂がなされる。さらに、運行会社などによって、同じ観点で細部がアレンジされることが推奨される。飛行機のチェックリストを見て、当初はなぜ、ものによって同じ機体でも微妙に違うのか、なぜ、書かれていない手順があるのか疑問だったが、これを読んで非常にすっきりした。また、著者がチェックリストの効能を知るために飛行機のフライトシミュレータを体験する話、2009年1月14日に発生したUSエアウェイズ1549便のNYハドソン川不時着の話など、どれも非常に興味深い。
最後は飛行機の話に終始してしまったが、一見単調なチェックリストの奥深さを、これほど面白く読める本書は素晴らしい。
安全・快適エアラインはこれだ (朝日新書 41) | |
朝日新聞社 2007-04-13 売り上げランキング : 649435 おすすめ平均 報告書的で読みもの的面白さには欠けるが・・ 安全面から見た航空機の雑学本 フライト中に楽しめる本ではないようです Amazonで詳しく見る by G-Tools |
各種ランキングを紹介するも、著者としての結論が出ているわけでもなく、少し消化不良であった。安全・快適の章では380の脱出テストを紹介していたり食事を紹介したり最新設備紹介したり、航空会社ごとの快適なシートを掲載するWeb(URL)を紹介したり(P.168)、中には航空管制の話を出したり(タイトル通り趣旨はエアラインの比較なはずで、ここで航空管制が出てくるのは少し違和感)。良くも悪くも雑学集。
航空ジャーナリストの事故分析関連の著書は得てして、豆知識のパッケージになってしまうのか、誰に、何を訴えたいのか、論点がぼやけてしまうように感じる。
肩肘はらずに、雑学集として読めばいいのだろうが・・・。
読んで愉しい 旅客機の旅 (光文社新書) | |
光文社 2003-08-13 売り上げランキング : 614522 おすすめ平均 飛行機での旅行が楽しくなるために 写真がもっと欲しいが、大変興味深い本 今までに2回しか乗ったことがないのですが… Amazonで詳しく見る by G-Tools |
20世紀初期から現在まで、様々な航空会社を、今昔東西の旅客輸送を”旅客”の目線でまとめている。初期のスチュワーデス(初期は看護婦の資格から身長・体重、年齢、未婚限定等厳しい条件があった)から機内食、今はなき喫煙にエンターテイメント、飛行機の迷彩まで、タイトルのごとく豆知識として参考になる。国内線の映画上映や機内食の廃止・有料化、2010年4月からは全日空が国内線の無料飲料を水とお茶だけにしたり、9.11/SARSを発端に航空会社の経営・コスト削減が厳しくなるにつれ、本書で謳っているような愉しみがだんだん過去の物となっていくのは少し寂しい。
著者はかなりマニアックな一面もあるようで、各種コレクションの話など、興味ない分野の記述は著者と読者に温度差が生じる。また、そうしたグッズを言葉だけで熱く語られてもイメージがわかないので、写真をもっとふんだんにあると良かった。