社会: 2010年2月 Archives

さすが!

書籍「フリー」の方式を日本で最初に(多分)実現したのが、ネットベンチャー企業「ライフネット生命」の副社長・岩瀬大輔氏となった。

http://totodaisuke.asablo.jp/blog/2010/02/27/4910657

4月15日までの期間限定ながら、同氏の書籍「生命保険のカラクリ」の電子版を無料でダウンロードできるようにされた。

最も伝えたいメッセージ(=生命保険を理解してもらう)を多くの人に伝えるため本を無料とし、結果(間違いなく)同氏・ライフネット生命のファンとなる人が増えていく、「フリー」に記載のあった新しいビジネスモデルの1つだ。

「フリー」に記載あることだが、アメリカでラジオが登場した当時、流す音楽のロイヤリティーをどうするかもめたらしい。全リスナーを対象とすると、膨大な金額となりラジオ局が払える金額ではなくなるし、そもそも正確なリスナー数を把握することは不可能であった。それから試行錯誤を経て、今の形式に至った。当時のラジオと同様の問題が、現在のネットであり、違法ダウンロードや新聞・TVといった旧態のマスメディア衰退だろう。

この辺の事情は「フリー」に詳しいのでここでは割愛するが、とにかく日本でこれほど早く、しかも明確なメッセージをもって革新的な事ができたことに感動した。

c.f.

生命保険のカラクリ (文春新書)
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フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
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傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)
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光文社 2009-06-17
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starタイトルそのままズバリで内容にうなった
star自らの権威を守るために新療法を拒否する医師は恐ろしい
star医学界全体の問題についても言及されている

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傷を消毒して乾燥する治療を真っ向から否定する本書。ここでの正しい傷口治療は
①出血を止める
②ハイドロコイド(商品名:キズパワーパッド)、プラスモイスト(http://www.allergy-biz.com/ などで購入可能)、白色ワセリン(商品名:白色ワセリン、プロペト、Vasellin)、あるいは食品ラップで覆って乾燥を防ぐとともに、1日数回、汗や滲出液(ジュクジュク)を洗うだけというもの。消毒液は外敵を攻撃する皮膚常在菌までも殺してしまい軟膏(クリーム)は含まれる界面活性剤が傷ついている細胞を破壊するため逆効果といている。それらの内容については治療結果や、自らの体実験結果で示している(http://www.wound-treatment.jp/)。ではなぜ、誤った治療が未だ医療現場で横行するのか。権威の話、思考停止等々でるのだが、話は中盤からは「99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方」と同様にガリレオの天動説・地動説問題同様、時代時代に誤った定説があること、それが正される経緯をパラダイムシフトとして説明。
後半は皮膚と体内が異なる治癒能力・過程があることを、生物の進化の過程から説く。間等、陸に上がった生き物は体内(血液)から治す仕組みが出来上がったのに対し、皮膚(表皮)は傷つきのシグナルで回復する。後者のシグナルとはドーパミン、即ち脳は皮膚から作られたという仮説まで登場する。
序盤は、消毒など既存の考え方がいかに間違っているか、延々と説かれるのかと思っていたが、中盤以降は前述の通り科学や歴史、生物の進化から意外な仮説検証まで、最後まで一気に引き込まれる内容だった。実用書としてはもちろん、物語としても非常に面白い1冊。
c.f.
以下、読後メモ
・昔、外科は床屋の仕事だったため、赤(動脈)・青(静脈)・白(包帯)のサインポールが使われる(P.142)。
・ゼンメルワイスとリスター(P.88)
・パラダイムはトーマス・クーン(1922~1996)が定義(P.149)
・生まれたばかりの新生児を母親が抱く、授乳するのは母親の皮膚常在菌を分け与えて定着してもらう意義がある(P.220)。
南アフリカの衝撃(日経プレミアシリーズ)
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star2010年W杯。南アフリカのことがよく分かります。
star知れば知るほど複雑な、南アフリカという国
star錯綜する南アフリカ情勢をすっきり理解

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今年、サッカー・ワールドカップが開催される南アフリカ。アパルトヘイト、マンデラ、犯罪、資源、・・・と点でしかなかった南アフリカの知識。それらが本書によって、一気に繋がった。南アフリカ駐在の経歴が長い著者だけあり、歴史、現状、地理、等々様々な視点から南アフリカという国を理解できる---それでも、変化が激しいため著者も数年空いただけで別物のように感じるというのだから、絶対ではないのだが。

ちなみに、モーガン・フリーマン主演で映画化された、ネルソン・マンデラがラグビーのW杯を利用して国の士気を高め、ついには史上最強と言われたNZのオールブラックスを破って優勝する話ももちろん掲載されている(映画のタイトルは「インビクタス・負けざる者たち」)。

ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質
ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質 望月 衛

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starやはり、文章が読みにくい
starそれなら、どうすれば良いのか?
starフラクタルを感じさせる内容、つまり美しい寄せ集めの構造か?

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今までの統計やリスク分析を真っ向から否定した上巻でもやもやしたまま終わったのに対し、下巻でその本質を示している。σ(シグマ)やベル型カーブ、80/20ルールといった見方が、いかに視野を狭めているか、皮肉たっぷりに解説。斬新な考え方であり、リスクについて再考させられる1冊であるが、気軽に読める代物ではないのも事実。

 

■関連書籍

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
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