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日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)
日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)浅川 芳裕

講談社 2010-02-19
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こういう客寄せタイトル的な本は中身が伴わないことが得てして多いのだが、本書はインパクトを狙いつつ、著者の主張と筋が通っており、納得感がある。(ネタバレ:肝心の5位は、農業GDP

”自給率”について、指標の中身、自給率の問題点、自給率と決別した海外(英国)の事例紹介と、如何に自給率が低くて問題でないか説く。具体的には、自給率は国産の肉でも海外の飼料で育った場合は自給率に換算されない、廃棄される分なども分母に含まれる、そして何より日本を始め先進国はカロリーを抑えようとしているのにカロリーを基に計算している、などなど。

また、民主党の戸別所得補償制度など選挙のための政策が日本のためになっていないばかりか日本の農業の発展を阻害している点、小麦、バター・チーズ、豚肉・・・関税などの統制が一部の利権のみで消費者に弊害をもたらしている点(2008年のバター品薄問題も一例にあげられている)など、非常に興味深いとともに無知の恐ろしさを感じる。

提言部分は仮説の域を出ず、少し弱く感じるが、新聞・ニュース等マスコミの報道する内容が一辺倒であると認識する上でも、選挙権を持つ者の必読書とも言える。

P.S.
折しも8/20 日経のプラス1で特集される(3面)。GDPベースの自給率などいいところまで掲載しているが、本書に比べると甘く、どこまで”自給率”が恣意的であることに気付けるか疑問が残る。