社会: 2013年11月 Archives

階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現階級「断絶」社会アメリカ: 新上流と新下流の出現
チャールズ・マレー 橘明美

草思社 2013-02-21
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単に格差社会を問題提起するルポと推測していたが、本書は緻密な調査・分析に基づきマクロの視点でアメリカの現状を示す---そして、同じ道を歩むことになるであろう日本の将来も示しているとも理解できる。



日本は、昔は一億総中流社会と言われているが、アメリカでも同様に多くの人が豊かな中流階級を構成していた。そして、お金持ち層も同じ地域に暮らして社会を構成していた。しかし今は高学歴・高収入の層が住む地域は限定されており、中流階級、ましてや下流階級と交わることがないという。そして、高収入世帯が暮らす町とそれ以下の世帯が暮らす町で、生活習慣や価値観が異なる。つまり、’一般の人々’を知らない人達が政治・企業などの要職について社会を動かすことに著者は強い警戒感を抱く。


社会が弱者を守らなくなっていくなか、建国時の美徳はどこへ消えてしまうのか。社会保険さえ強い拒絶にあうようなアメリカと日本は違うという意見もあろう。しかし、人口オーナスとなる日本でも、社会保障の増加は限界に来ている。また、本書で示される、技術の発展で身体的ハンディキャップが仕事に影響しなくなっているにもかかわらず、働かない、失業保険受給者が増えている実態は日本でも他人事ではないと感じる。日本よりも先に製造業が衰退を経験、格差社会が進行したアメリカだからこそ、日本が学ぶべきものがあると感じた1冊だった。