社会: 2013年4月 Archives
ギャンブル大国ニッポン (岩波ブックレット) 古川 美穂 岩波書店 2013-02-07 売り上げランキング : 100460 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一時期、生活保護受給者のパチンコが社会問題化した。また、毎年繰り返される駐車場に置いてきた児童の熱中死。パチンコとは、個々の嗜好で済む範囲なのか、あるいはアルコールなどと同様、中毒あるものとして仕組みで考えるものか。結論から言うと、両方だろう。
本書では、東日本大震災後にパチンコにはまる人が増えている実態、ギャンブル依存という病気、公営含めた日本のギャンブル、そしてカジノ誘致に対する批評を簡潔に纏めている。
これを読むと、ギャンブル依存は病気であり、ある程度の閾値を超えると個人の意志だけでは脱することが難しいことが非常ににわかる。前述の熱中死など、当事者を非難するだけの報道も多いが、日本は世界でリゾートであるセントマーチン島、モナコに次いでパチンコ・スロットなどゲーミングマシーンが多い(P.48)という現実を知ると、根本的な対応が必要と感じる。規制は極力少ない方がいいと日々思っているが、町中どこにも氾濫して30兆円規模に膨れているパチンコは、社会の機能として適切か。一方、本書で避難している東京や大阪のカジノ構想、これらは決められた町・地域にとどめての話であり、パチンコと客層が異なると考えるので、一言でギャンブルとひとくくりにするには乱暴と感じた。
「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書) 佐藤 健太郎 光文社 2012-09-14 売り上げランキング : 17050 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
リスクを完全になくすことはできないと、誰もが知っているはずが、事に添加物や農薬、放射能といったものになると、拒否反応を起こす。盲目的に危険と考える、あるいは、自動車、たばこなどリスクが明確にあるものは無視するといったバイアスを科学的に分析する1冊。3.11以降の本だけあり原発問題にも誌面の多くを割いている。
ハーバード大のリスク解析センターによる、リスクを強く感じる因子として以下の10を引用している(P.28)。
・恐怖心
・制御可能性
・自然か人工か
・選択可能性
・新しいリスク
・意識と感心
・自分に起きるか
・リスクとベネフィットのバランス
・信頼
これらをもとに、なぜ人々はリスクを見誤るか、統計的な錯誤を、ゼロリスク症候群を解説する。発ガン物質、ホルムアルデヒド、トランス脂肪酸、などなど個々の事例を基に、科学的な検知から嫌悪感は安全性と根拠のないことを示す。また、ホメオパシーといった、逆(科学的に根拠のない物を信望する)も扱っているの興味深い。最終章の放射能に関する記載は、ここだけで基礎的な放射能の知識を得られるほど充実している。
個人的には、以下のようにこの手の本は何冊も読んできたため再確認と言った位置づけだが、改めてリスクは意識的に考えないと簡単に惑わされると思った。
以下、備忘録。
・各種のカビが作る毒(マイコトキシン)には強烈な発がん性をもったものがある。(P.108)
・ショウジョウバエなどでは、X線照射によって子孫に突然変異が出ることがわかっており、これを発見したハーマン・マラーは、1946年のノーベル生理学・医学賞を受賞している。(略) しかしその後、広島、長崎、チェルノブイリで、また放射線技師など職業的に放射線を浴びた人々に対する詳細な追跡調査が行われ、(略) 人間においては、放射線による突然変異の発生は確認できないというのが、現在の結論です。(P.240)
政治はなぜ嫌われるのか――民主主義の取り戻し方 コリン・ヘイ 吉田 徹 岩波書店 2012-11-22 売り上げランキング : 117922 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書によると、その投票率もOECD諸国ではす全て衰退の一途を辿っているという。先進国共通の問題、即ち資本主義の限界といった制度的な問題であると素人目にも推察できる。そうした、いわゆる政治不信の原因を、科学的に分析していて、さらに副題にもあるとおり提言まで織り込んでいる。少なくとも、世間一般の表層的な問題がいかに表層的、あるいは俗説か、理解できる1冊。