社会: 2011年12月 Archives

愛する二人別れる二人―結婚生活を成功させる七つの原則
愛する二人別れる二人―結婚生活を成功させる七つの原則ジョン・M. ゴットマン ナン シルバー John M. Gottman

第三文明社 2000-03
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夫婦喧嘩は犬も食わぬではないが、古くも永遠のテーマとも言える結婚生活について、16年・1000数十余組の夫婦を面接、そのうち650組の夫婦を14年間追跡調査した研究結果より、関係を改良・改善・強化する7つの原則として説いた、世界各国でベストセラー書。恐ろしくもあり、興味深くもあるのは、研究の成果から夫婦の言動を5分間観察するだけで、平均91%の確率で幸福な結婚生活を送るか、離婚するか言い当てられるという。(P.14)

性差、育った環境差、今の生活差、様々な差がある以上、齟齬が生まれるのは当然でもある。その上で、妥協やあきらめではなくよりよい関係を育てていくか。男女それぞれのマイナス行動、望ましい行動、男女それぞれのセックス・出産に対する考え方の違い、新しい発見から当然のものでも再考させられるものまで、いろいろ。
随所で出てくる質問集(例えば、”配偶者の賞賛できる点を三つ、すぐに言える。 はい・いいえ” )の回答結果から出される診断内容、前述の通り多く・長期のサンプリングが基になっているだけに、考えさせられる。趣味、価値観、目標、いつのまにかベクトルずれていることすら気付かなくなっていないだろうか。

これから結婚するカップルから熟年夫婦まで、いずれの世代にも一読の価値ある1冊。
医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か小松 秀樹

朝日新聞社 2006-05
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医療ミスや薬害問題、時には産婦人科での訴訟問題など、ひとたび事故が起きれば医療従事者がマスコミ・検察から極悪人扱いされる現状に対し、警笛を鳴らす。航空・原子力など、安全に関わる分野ではどこもそうだが、何か事故が起きたときに、日本では常に過失を犯した人を裁く風潮があるが、どこかの国の高速鉄道・衝突事故のようで、それは著者の言うとおり何も原因の解決にならない。例えば航空の世界では、アメリカでは事故を正しく報告して原因解明に協力する者は罰しないが、日本では原因解明よりも過失の立証が優先される。医療の世界も同様で、強盗や殺人同様にミスを犯した者を扱うことで、医者は萎縮すると著者は説く。

最初は「医療に完全はない」との言葉に、医者が言うことかと疑問を持ったのも確か。しかし、原子力問題同様「絶対」を求めていては冷静な議論ができないのも確かである。そして後半からは現在の医局システムの弊害、そして責任が少なく収入の多い開業医(参考 開業医の月収1割増、231万円 09年比、勤務医の1.7倍 出典:日経)ばかりに偏って行く問題など、客観的に医療側の問題提起もする。
その上で、策として
・開業医への責任委譲、患者と専属医契約を持ち、病院へは紹介状なしに診療できなくする(開業医のゼネラリスト化)
・補償制度の拡充(ごく一部の人が賠償金を得る訴訟から転換)
など、他の国の制度・データを示しながら提言する。

医療の現状を知る、今後を考えるのにはもちろん、「ミス」を分析して根本原因を追及・改善して行くプロセス(トヨタなどの事業の生産プロセスも題材にしている)も参考になり、非常に中身の濃い1冊。