社会: 2009年11月 Archives
イラクとパレスチナ アメリカの戦略 (光文社新書) | |
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中東問題を「外」から語る書は数あまただが、内外双方からの視点でまとめられた本は少ない。タイトルの3カ国に留まらず、イスラエル問題やオスマントルコとヨーロッパ(イギリス・フランス)の関係など、中東の全域、および過去から現在までをも網羅している。白黒はっきりしていたブッシュ元大統領だが、実はアメリカの政策は中道派・右派の争いにより御都合主義であったり(歴史をひもとけばイギリス・フランスも同様に)、中東の中でも民族や宗教によって糸筋縄ではないことが明快に理解できる。
尚、本書における「外」からの視点に関する部分は”仮説”の域を抜けない部分も多数有り、この辺は評価が分かれる。但しそれら外部リソースについては引用先(URL)を明記していて、読者が検証していくことは可能である。何より、中東に関する一辺倒な情報から一歩離れて多角的に検証するきっかけとしては、本書はとても有意義な1冊である。
1年前(2008年11月7日)に肺ガンでなくなった筑紫哲也本人が「ニュース23」の開設から経緯を題材に「ニュースキャスターとは?」を語る。
ニュースキャスター (集英社新書) | |
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自らの意見を発するも強制はせず(判断は視聴者)、身内(TBS)に対する批判も厭わない姿勢に、日本のTVの世界で数少ないジャーナリズムを見ていた故人だが、その筑紫哲也が何を考え、悩み、対処してきたかという内情を知ることができると共に、その精神にさらなる共感を覚える。
”ニュースは儲からない”といわれる中、クリントン元米大統領や中国首相の単独出演などを実現してきたニュース23のような番組、魅力あるアンカーパーソンが続くことを願った次第である。
感染症の時代―エイズ、O157、結核から麻薬まで (講談社現代新書) 講談社 2000-10 売り上げランキング : 742404 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人間とウィルス・細菌の歴史から、現代の食中毒・ウィルス・細菌問題、ワクチンの問題、ウィルスの進化の過程は仮説を踏まえて紹介。スーパー・ドラッグストアでさえ”ウィルスを除菌(殺菌)”などとウィルス・細菌を混同される事が多い世の中、目に見えないものに対する誤解や過剰な恐怖を抱きがちである。そんな中、本書は対策も踏まえて幅広い知識を学べる。
但し、後半で麻薬に言及している部分は、筆者の思いが強く入りすぎている。特に、大麻を麻薬として扱うことに関しては(少なくとも海外では、国内でも「大麻ヒステリー」のような本が出ている)異論があるわけで、事実と主張が混同すると内容全てに懐疑的にならざるを得ず、この点は非常にもったいないと感じた。Leadership and Self-Deceptionで出てきたゼンメルワイス(Semmelweis)と妊婦の院内感染の話がここでも掲載されており、通常単なる人物の引用は記憶に残りにくいが、少し前に読んだ全く異なる分野の本と同じ事が出てきたため、印象深かった。