本日の1冊: 医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か

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医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か小松 秀樹

朝日新聞社 2006-05
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医療ミスや薬害問題、時には産婦人科での訴訟問題など、ひとたび事故が起きれば医療従事者がマスコミ・検察から極悪人扱いされる現状に対し、警笛を鳴らす。航空・原子力など、安全に関わる分野ではどこもそうだが、何か事故が起きたときに、日本では常に過失を犯した人を裁く風潮があるが、どこかの国の高速鉄道・衝突事故のようで、それは著者の言うとおり何も原因の解決にならない。例えば航空の世界では、アメリカでは事故を正しく報告して原因解明に協力する者は罰しないが、日本では原因解明よりも過失の立証が優先される。医療の世界も同様で、強盗や殺人同様にミスを犯した者を扱うことで、医者は萎縮すると著者は説く。

最初は「医療に完全はない」との言葉に、医者が言うことかと疑問を持ったのも確か。しかし、原子力問題同様「絶対」を求めていては冷静な議論ができないのも確かである。そして後半からは現在の医局システムの弊害、そして責任が少なく収入の多い開業医(参考 開業医の月収1割増、231万円 09年比、勤務医の1.7倍 出典:日経)ばかりに偏って行く問題など、客観的に医療側の問題提起もする。
その上で、策として
・開業医への責任委譲、患者と専属医契約を持ち、病院へは紹介状なしに診療できなくする(開業医のゼネラリスト化)
・補償制度の拡充(ごく一部の人が賠償金を得る訴訟から転換)
など、他の国の制度・データを示しながら提言する。

医療の現状を知る、今後を考えるのにはもちろん、「ミス」を分析して根本原因を追及・改善して行くプロセス(トヨタなどの事業の生産プロセスも題材にしている)も参考になり、非常に中身の濃い1冊。

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