社会: 2011年10月 Archives

パワー・ハングリー――現実を直視してエネルギー問題を考える
パワー・ハングリー――現実を直視してエネルギー問題を考えるロバート ブライス 古舘 恒介

英治出版 2011-07-21
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原著は3.11の前に書かれた本だが、再生エネルギー=善で化石・原子力エネルギー=悪といった偏見は以前から少なからずあった。本書は各種エネルギーを客観的に捉えると共に、まさに今、原発をどうするか、今後のエネルギーをどうするか考える必要のある日本人必読の書とも言える1冊。

アメリカ視点で書かれているため、石炭発電の必要性と害は、日本では今ひとつぴんと来ない部分もあるが、少なくともどの発電方式も害はあるわけで、それらを総合的に評価する必要性はあり、本書では(少なくとも今現在は)結論として原子力と天然ガスを環境に優しいとしている。”原子力は環境に優しい”は今の日本で受け入れられないだろうが、パワー密度・エネルギー密度といった概念をもとに各エネルギーを比較されると、救世主のように扱われる再生エネルギー(太陽電池・風力)がいかに補助的なポジションを脱し得ないか、理解できる(そもそも、それらは人間が発電量をコントロールできないので当然と言えば当然なのだが)。

興味深いのは、電気自動車が未来の自動車であるようなことは、20世紀初頭から延々と繰り返され、主力になりえないという事実。(P.236)

地球温暖化問題しかり、石油問題しかり、原発問題しかり、経済問題しかり、エネルギー問題は評価基準がひとそれぞれだからよけいややこしい。本書ではそれに対する解として、マイケル・サンデルの正義に対する3つのアプローチを紹介している。即ち、幸福の最大化、自由の尊重、美徳の促進。(P.368~)

繰り返しになるが、エネルギー問題を考えるスタートラインとして、誰もが読むべき1冊だと感じる。

以下、備忘録
・パワーの計算(P.104)
 1バレルの石油=5.8Btu=58億ジュール=22,152W/日=29.7馬力/日
・ニューヨーク・シティ パール・ストリート255・257番地 エジソンが1882年9月4日商業発電開始