社会: 2013年10月 Archives

グローバル経済の誕生: 貿易が作り変えたこの世界 (単行本)グローバル経済の誕生: 貿易が作り変えたこの世界 (単行本)
ケネス ポメランツ スティーヴン トピック 福田 邦夫

筑摩書房 2013-08-22
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大航海時代に始まり、世界が1つになり始めたときに何が起きたか。本書はタイトルに「経済」とあるが、単に商品(金、銀、砂糖、綿、etc.)の移動だけでなく、需要の発生した背景や、供給側の実情まで深掘りした歴史書である。

株式会社の始まりと習った東インド会社や西インド会社がほとんど国営企業だった実態から、奴隷商だったロビンソン・クルーソーなど、表層的な歴史の授業からは、異なった認識を持っていたことに気付かされる。西欧の需要を満たすため始まった新大陸の制覇や植民地政策、奴隷制度は、まさにグローバル化の負の側面であるが、その細かく描画された実態は想像を絶する(当時の奴隷は、1日5000kcalの食事をとっても痩せていったという事実は、ただただ驚愕するばかり)。

今日では普段何気なく口にする砂糖やコーヒー、じゃがいもといったものが、どのように生まれてきたか、当時の人々の意識(特に、じゃがいもは、高地でも育ち高カロリーだったため重宝されたが、当初は奴隷食だったため市民からは敬遠されたとのこと)を知ることで、また違った認識を持つだろう。

歴史から今日に至る身の回りの品まで繋がったストーリーとなっており、非常に興味深い1冊だった。

99%対1% アメリカ格差ウォーズ99%対1% アメリカ格差ウォーズ
町山 智浩

講談社 2012-09-20
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映画評論家の町山智浩氏が、アメリカの政治やマスコミの醜態を辛辣に書き下ろす。

アメリカは保守・キリスト教(カトリック)を拠り所とする共和党と、リベラルの民主党の二大政党によるのは言わずも知れたところだが、本書ではどちらの政党も理念から外れ、マスコミをも巻き込んだ利己的な活動に成り下がったアメリカ政治の姿を書きつづっている。
国民皆保険制度への反対や企業の利益至上主義に対する考え方や、そのための政治利用の仕方は、いくらもともと自由主義(ここがややこしいところだが、アメリカの言うリベラルとは別で、共和党の考えである個人中心の保守主義)がアメリカの考え方とは言え、非常に違和感を覚える。

本書は淡々と負の側面を書いて展望や示唆と言ったものはなく、ユーモアとともに書かれているので読み物として楽しめる。一方、成熟した資本主義社会の政治のあり方は、利己主義的なアメリカだけでなく、無関心が増えている日本でも共通の問題と感じた。即ち、国民主権がもはや水や空気のように当然の存在となり(民衆を搾取するような目に見える悪がいなくなり)、もはや理念や信念がなくなったとき、政治はどうあるべきか。