社会: 2014年4月 Archives

ルポ 正社員になりたい―娘・息子の悲惨な職場ルポ 正社員になりたい―娘・息子の悲惨な職場
小林 美希

影書房 2007-05
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派遣社員などフリーターとして働く人々の実態を記したルポ。それぞれの経歴や仕事内容、賃金から、時には会社側への取材を通し、彼・彼女らの苦労が良くわかる。

一方、著者自身も非正規というポジションで社会人を始めたこともあり、立場がフリーター寄りとなっている。例えば、"自宅に帰宅できるのは9時近く。疲れて何もできない。介護福祉士の勉強もなかなか進まなかった。"(P.116)とあるが、これは正規・非正規の問題とは別物だろう。いかに非正規が大変かということをひたすら強調しようとしているようで、マクロの視点が欠落している。
合衆国再生―大いなる希望を抱いて合衆国再生―大いなる希望を抱いて
バラク・オバマ 棚橋 志行

ダイヤモンド社 2007-12-14
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現アメリカ大統領のオバマが、大統領出馬を表明した2007年に書かれた1冊。ブッシュJr.大統領の減税政策などで格差が拡大した中、一般国民の失業や貧困の実態から決して目をそらさず、平等や社会保障を充実しようという信念が揺るぎない。オバマ氏の国民皆保険を成立させたオバマの原点がわかる。

決して自分の主張を通すのではなく、問題に対して具体的な解決策を提示する姿勢に、初のアフリカ系大統領となったオバマ氏の人間性が伺える。出生や幼少時代、家族の話なども織り込まれていて、妻ミッシェルとの馴れ初めややりとりも、興味深い(兵器拡散を防ぐ法案の重要性をミッシェルに電話で話したら、帰りに蟻退治用の罠を買ってくるように言われた話など)。
ドキュメンタリー ルーシー事件の真実―近年この事件ほど事実と報道が違う事件はないドキュメンタリー ルーシー事件の真実―近年この事件ほど事実と報道が違う事件はない
ルーシー事件真実究明班

真実究明班 2007-05
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膨大な裁判資料が本書の大半を占める。タイトルの通り、過去におきたルーシー事件が、報道の内容とどれだけ違うか、もっと言うと検察がどのように証拠を隠匿・改竄して被告を有罪に持って行くかが鮮明に理解できる。このような事実を見ると、先日釈放された袴田事件のように、日本の死刑制度そのものも否定せざるを得ない。

残念なのが、引用されている資料群。整理されておらず、また右開きで構成されているので横文字の資料が右から左に行ったり、別の資料では後ろから読まなければならなかったり、読むのに苦労させられるのが残念。
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン 池村 千秋

プレジデント社 2012-07-28
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未来の働き方がどうかわるか、いくつかのモデルを出して、読者にイメージさせ変貌や準備を促す。少しSFちっくなところは否めないが、ピーター・ドラッカーの言葉にもあるとおり、今後はますます個の重要性が増すのは確かだろう(労働集約型の時代は協調性が生産性に影響を与えたのに対し、知的労働型では個々が何ができるか、その個々がどう結びつくかが生産性やイノベーションに影響する)。

本書ではその解として、得意な分野を複数極めていく連続スペシャリストになること、そうした人達とグローバルな人的ネットワークを形成することをあげる。ピラミッド階層の組織がフラット化する未来において、知識もますますWebで調べられる中、中途半端な技能やゼネラリストは要をなさなくなるというのは、頷ける。

一方、本書ではスペシャリストのキーとして、1万時間の習熟期間を述べているが(引用はないが、マルコム・グラッドウェル氏の「天才! 成功する人々の法則」が基だろう)、最近ではそれに疑問も出ている。

ハンブリック氏のチームは、エリクソン氏による音楽とチェスの名人の事例研究を見直してみた。そして、こ れまでの意図的な練習(演奏や競技ではないという意味)の時間を被験者たちに質問し、成功の要因のうち練習 が占める割合は音楽で30%、チェスで34%にすぎないという結論に達した。

 また、練習時間にも大きなばらつきがあった。チェスのグランドマスターたちの平均は約1万530時間だった が、832時間から2万4284時間まで幅があった。音楽家も1万~3万時間にまたがっていた。

 これだけばらつきがあれば、1万時間の法則は意味を失ってしまうと、ハンブリック氏は指摘している。

ナショナルジオグラフィック ニュース 揺らぐ“1万時間の法則”


最も、個々が考え備えなければならないのだから、本書は単にきっかけを提供してくれているに過ぎない。この本を読んでその通りにする程度の意識であれば、厳しい未来になるのも事実だろう。
習慣の力 The Power of Habit習慣の力 The Power of Habit
チャールズ・デュヒッグ 渡会 圭子

講談社 2013-04-26
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人は自分で考え決断しているようでも、ほとんどは習慣で決まっているという。逆に言えば、悪い習慣を良い習慣に変えて行くことが重要であり、その仕組みを解説する。

その仕組みとは、習慣は”きっかけ”→”ルーチン”→”報酬”というループがあり、変えられるのはルーチンだけということ。例えば職場でとる間食を止めようとした時、まずはどんなとき(きっかけ)、なに(報酬)を求めるかを考え抜く。例では、疲れる前の決まった時間に(きっかけ)、いきぬき(報酬)できるよう同僚との会話する時間を設けて間食を止められたという(毎日定時に話しかけられる同僚はどうなんだ・・・ってのは突っ込んではいけないのだろうか)。

後半では、データを分析して本人の好みのクーポンを案内をする研究が紹介される。本人が気付く前に妊娠していることを把握するのは気持ち悪い、と思ったら、そこは抜かりない。実際に売りたい(売れる)商品のクーポン以外に、全く関係ないクーポンを混ぜたりするというのはさすが。

偶然消臭剤ができたので、当初はにおい消しとして出す物の全然売れず。”習慣”に狙いをつけ、掃除後に香りつけるためにスプレーするもの、としたら爆発的に売れるようになったというファブリーズの話から、野菜売り場が右回りの理由(10年以上前にスーパーで働いていた時、なぜ野菜売り場から始まって右回りの導線に売り場を作るのか疑問だったことが、やっと理解できた)、大きなイベントの時に習慣が変わるのでメーカーは出産時に父親にも贈り物をする(p266。自身、子供が生まれたとき病院からプレゼントされるものの中に、ミルクなど赤ちゃん用品の他にジレットの髭剃りが入っていた理由を理解)など身近なこと(の裏にある狙い)がいろいろわかって面白い。