本: 2013年4月 Archives

ノマド化する時代 (ディスカヴァー・レボリューションズ)ノマド化する時代 (ディスカヴァー・レボリューションズ)
大石哲之(@tyk97)

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2013-03-29
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定年制の崩壊、大企業でさえ安定が崩れるかも知れぬ昨今。一方で今後はグローバルと言いつつも、その実態は英語(しかもTOEIC)に限定した話であったり、日本の海外展開(あくまでも主は日本人)などしっくりこない。本書はそんなもやもやを払拭する、今後の働き方・生き方で参考になる1冊であった。

尚、タイトルのノマドは近頃持てはやされているカフェで仕事する人、フリーランサーなどではなく、グローバルな仕事を求めて、あるいは必要に駆られて地球上を転々とする人々を指す。

著者は外資コンサルの経歴持ち主であり、著書は分かりやすく論点が鋭いものが多い大石哲之氏。本書も、その例外ではなかった。
仕事を求めて世界を股にかける人、あるいはチャンスを求めて飛び出した人、子供の教育のためにアジアへ出た人、などなど事情は様々ながら定住しない人(=ノマド)の実例を多分に紹介する。その前後、最初に前提やノマド化の概要を、最後にそうなる今後の世界を生きるヒントと、非常に分かりやすい構成もしっくり頭にとけ込む。

Twitterでは比較的過激なコメントも多い著者だが、本書ではマイルドで万人受けしそう。日本を中心に生活している身にはいろいろ刺激多き本だった。
ギャンブル大国ニッポン (岩波ブックレット)ギャンブル大国ニッポン (岩波ブックレット)
古川 美穂

岩波書店 2013-02-07
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一時期、生活保護受給者のパチンコが社会問題化した。また、毎年繰り返される駐車場に置いてきた児童の熱中死。パチンコとは、個々の嗜好で済む範囲なのか、あるいはアルコールなどと同様、中毒あるものとして仕組みで考えるものか。結論から言うと、両方だろう。
本書では、東日本大震災後にパチンコにはまる人が増えている実態、ギャンブル依存という病気、公営含めた日本のギャンブル、そしてカジノ誘致に対する批評を簡潔に纏めている。

これを読むと、ギャンブル依存は病気であり、ある程度の閾値を超えると個人の意志だけでは脱することが難しいことが非常ににわかる。前述の熱中死など、当事者を非難するだけの報道も多いが、日本は世界でリゾートであるセントマーチン島、モナコに次いでパチンコ・スロットなどゲーミングマシーンが多い(P.48)という現実を知ると、根本的な対応が必要と感じる。規制は極力少ない方がいいと日々思っているが、町中どこにも氾濫して30兆円規模に膨れているパチンコは、社会の機能として適切か。一方、本書で避難している東京や大阪のカジノ構想、これらは決められた町・地域にとどめての話であり、パチンコと客層が異なると考えるので、一言でギャンブルとひとくくりにするには乱暴と感じた。

「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)
佐藤 健太郎

光文社 2012-09-14
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リスクを完全になくすことはできないと、誰もが知っているはずが、事に添加物や農薬、放射能といったものになると、拒否反応を起こす。盲目的に危険と考える、あるいは、自動車、たばこなどリスクが明確にあるものは無視するといったバイアスを科学的に分析する1冊。3.11以降の本だけあり原発問題にも誌面の多くを割いている。


ハーバード大のリスク解析センターによる、リスクを強く感じる因子として以下の10を引用している(P.28)。

・恐怖心
・制御可能性
・自然か人工か
・選択可能性
・新しいリスク
・意識と感心
・自分に起きるか
・リスクとベネフィットのバランス
・信頼

これらをもとに、なぜ人々はリスクを見誤るか、統計的な錯誤を、ゼロリスク症候群を解説する。発ガン物質、ホルムアルデヒド、トランス脂肪酸、などなど個々の事例を基に、科学的な検知から嫌悪感は安全性と根拠のないことを示す。また、ホメオパシーといった、逆(科学的に根拠のない物を信望する)も扱っているの興味深い。最終章の放射能に関する記載は、ここだけで基礎的な放射能の知識を得られるほど充実している。

個人的には、以下のようにこの手の本は何冊も読んできたため再確認と言った位置づけだが、改めてリスクは意識的に考えないと簡単に惑わされると思った。



以下、備忘録。

・各種のカビが作る毒(マイコトキシン)には強烈な発がん性をもったものがある。(P.108)
・ショウジョウバエなどでは、X線照射によって子孫に突然変異が出ることがわかっており、これを発見したハーマン・マラーは、1946年のノーベル生理学・医学賞を受賞している。(略) しかしその後、広島、長崎、チェルノブイリで、また放射線技師など職業的に放射線を浴びた人々に対する詳細な追跡調査が行われ、(略) 人間においては、放射線による突然変異の発生は確認できないというのが、現在の結論です。(P.240)
竜馬がゆく〈8〉 (文春文庫)竜馬がゆく〈8〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎

文藝春秋 1998-10-09
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線香花火。

読後感を一言で言い表すと、そんな言葉が思い浮かんだ。大政奉還を考案するも、土佐藩、薩長、それぞれの思惑で綱渡りが続く中、いよいよ維新の夜明けが見えてきた。そんな最中、ふっと竜馬は居なくなる---暗殺される。竜馬は明治政府の人事素案も考えていたが、そこに自身の名前は書かず、ひょっとして、結末を知っていたかのよう。

また、小説の終わり方も心憎い。これだけの長編、竜馬が居なくなった後も史実なり何なり、余韻を引っ張ることはいくらでもできたであろう。敢えてそうせず、すっぱり終わらせる---読者の中で物語が続くことを知っているかのように。

生き方―人間として一番大切なこと生き方―人間として一番大切なこと
稲盛 和夫

サンマーク出版 2004-07
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京セラ、KDDIを育てた著者(ちなみに、本書の執筆はJAL再建に関わる前)が、人生の哲学について語る。

仏門に身を置いただけあり、その考え方は道徳的であり、「心」に重きを置く。目先の利益に惑わされず、他利を考えるその姿勢には、一経営者を超えて、タイトルの通り生き方として学ぶ点が多い。
一方、道徳的と言っても、決して仕事を軽視しているわけではない。むしろ、仕事を如何に楽しめるかで人生の輝きが決まる、集中して没頭すべきという、厳しい一面も伺わせる。

少し気になったのは、”日本人は「美しい心」を失ってしまった"のように過去を美化する点があること、仏教の三毒として”妬み”をあげること(これは煩悩の1つであるが、仏典の三毒は「貪・瞋・癡」で違う)。


以下、備忘録として。

・楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する
好きな英語のフレーズで「Think Positive, Simulate Negative」があるが、これは同等のことを言っている上に、さらに実行時について言及されており、心に残った

・西郷隆盛も、「徳高き者には位を、功績多き者には報奨を」と述べています。
前の会社含め、能力・人間性と功績を一緒に評価する人事制度は多いが、所謂ピーターの法則となる。100年以上前に、両者を区別する人事制度を考案していた人がいたと、正直驚きを覚えた。

・心を磨き、高めるには、日々の生活の中の精進が大切であると言うこと(略)。布施、持戒(じかい)、精進、忍辱(にんにく)、禅定、智恵というお釈迦様の説いた「六波羅蜜(ろくはらみつ)

竜馬がゆく〈7〉 (文春文庫)竜馬がゆく〈7〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎

文藝春秋 1998-10-09
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単なる剣豪、変わり者だった竜馬が、倒幕に向かって駆けてゆく。いや、倒幕と言うよりも、むしろ新しい日本の創造にというべきだろうか。事実、倒幕を唱える者は竜馬以外にも居たようだが、議会の制定、法治国家など、倒幕の先を見ていた者は皆無だった模様。

薩長同盟は着々と倒幕に向けて力を蓄えていき、自ら起こした海援隊も幕府相手に火を噴き始める。かつて脱藩した土佐も巻き込み、さらに倒幕と血気盛んな連中の中にあって大政奉還という奇手を考え出す。プライドや自分の考えに固持せず、身内・世に迎合することなく、目指す世界へ向けてひたすらな実直さこそ、竜馬が現代でも人々を魅了する所以か。

余談だが、船に見せられ、手に入れた際には子供のように喜び、沈んだり没収された際には家族を失うように悲しむ姿に共感を覚える。自分の場合、差し詰め飛行機だろうか。。。

勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)
梅原 大吾

小学館 2012-04-07
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TVゲームは好きだったが、Wii Fitなど一部のものを除いてやらなくなって十○年。ゲームの大会で世界一となり、プロとして活躍、そして「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスにも記録された男の1冊。

正直、住む世界が違うのでどこまでその価値観、中身を理解できるか半信半疑だったのだが、、、読んでみてびっくり、どの世界でも頂点に立つにはそれなりの意志、思考と言ったものが備わっていないと成り立たないのだろう、唸らされる部分多数の1冊だった。

著者自身、(まだプロゲーマーというものが存在しない時代に)ゲームばかりでいいのかという葛藤、試行錯誤を繰り返してきたが故の、論理的に筋の通った考え(もはや哲学に近いかも)がある。そして、節々にそれを補完する思慮深い一言がちりばめられている。

最も心に響いたのは、「勝つことと勝ち続けることは違う」。偶然の勝ちはあるし、また勝ちパターンに固執することでいつしか通用しなくなるときがくる。そのためにいかにして備え、変化を起こし続けるか。特に後者は、ある意味今までの成功体験を完全否定することになるから、非常に勇気が要る。本書では、そうした思考の必要性とともに心構えや目的の持ち方などを訴える。もはやゲームに限らない、どの世界でも通用しそうな自己啓発本であった。

池上彰と考える、仏教って何ですか?池上彰と考える、仏教って何ですか?
池上彰

飛鳥新社 2012-07-19
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葬儀・法事で身近にありながら、無宗教と言われる通りあまり深く考える機会の少ない仏教。本書は前半と後半に分かれ、前半は仏教の歴史から意味、教えまで、分かりやすく解説する。また、そこを読むと宗教仏教や檀家制度、他力本願が主となる鎌倉仏教など、日本独自の発展をしてきたことがわかり、後半では、よりオリジナルに近い上座部仏教、チベットの僧やダライ・ラマとの対談が掲載されている。

本書で最も突き刺さったのは、"仏教は心理学"という一言。あぁ、なるほど、三毒や煩悩といった、どうして心が乱れ、どう心を整えるか、という教えが多いのも頷ける。

全体的に池上氏の著書だけあり非常に分かりやすい。個人的には、以下の点を理解できたことが有益だった。
・日本では戦争や災害で人々の心を救った、鎌倉仏教が独自の役割を担って発展した。

・江戸時代に、キリスト教を排除するため、各家庭に寺院と結びつける檀家制度、寺院のヒエラルキーができあがった。

とくに前者は、なぜ日蓮宗、浄土宗、浄土真宗など他力本願(本書ではこの記載はないが)の考えが日本の主となったかはっきりする。また、平民の心を救うため、輪廻転生の考えからは相容れなかった葬儀に踏み込むことで、日本では葬式=仏教の考えが定着したことも興味深い。一方、鎌倉時代の仏教界の人々は人々を救うという明確な目的があって変節してきたことが感動すら覚える。一方、現代はどうか。法事にちらっと来て聞くモノが理解しないお経を唱えるだけ、本書でもさらっと指摘があるが救いを求める人々がオウムなど新興宗教に流れていた(る)状況など、いまの葬式仏教の意義はなんだろうかと考えさせられる。

後半は、チベット僧やダライ・ラマとの対談を載せているが、ここは評価が分かれるところ。科学に見識あるダライ・ラマ氏とのことだが、100%安全でない原発は減らすか停める、太陽光発電に変えていくなど、理想論や科学的でない(原発の電力は太陽光で代替できない)発言など、本書の主旨からずれていて興ざめする。
政治はなぜ嫌われるのか――民主主義の取り戻し方政治はなぜ嫌われるのか――民主主義の取り戻し方
コリン・ヘイ 吉田 徹

岩波書店 2012-11-22
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選挙の度に問題となりつつも、政治に対する無関心とか政治の衰退・信用力の低下など、単純化された原因で終わることの多い投票率の低下。
本書によると、その投票率もOECD諸国ではす全て衰退の一途を辿っているという。先進国共通の問題、即ち資本主義の限界といった制度的な問題であると素人目にも推察できる。そうした、いわゆる政治不信の原因を、科学的に分析していて、さらに副題にもあるとおり提言まで織り込んでいる。少なくとも、世間一般の表層的な問題がいかに表層的、あるいは俗説か、理解できる1

本日の1冊: 心晴日和

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心晴日和心晴日和
喜多川 泰

幻冬舎 2010-02-25
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自己啓発本というには、少し肩肘張り過ぎか。「自分の小さな「箱」から脱出する方法」と似た類で生き方、考え方を示唆してくれる1冊だが、こちらはストーリー自体の面白さもある。

ストーリーは主人公の女性が悩み自立していく14歳の時、社会に出ていてそれなりに自立しているが、あることをきっかけに人生の意味を考えさせられる28歳の時と二部立てとなっている。単純明快、全てがこのように良くいくわけではないと著者も言っているとおり、できすぎの感はあるが、不思議と嫌みに感じない。むしろそれが心地よくもあり、所々でてくるフレーズが心に突き刺さる。例えば、

「人間は、自分が探しているものしか見つけることができない」
「他人は変わらない」
「人生において起こる全ての原因は自分にある」
「真実は1つ解釈は無限」

挙げれば枚挙に暇がないが、どれも結局は、自分の人生を自分で生きる、即ち自立するということに尽きる。
本書にも語られるメッセージ「空白の将来を『不安』で埋めるか『希望』で埋めるか、前者は安定を求め、後者は挑戦する。同じく失敗したとき、前者は他人に転嫁して依存するが、後者は成長するチャンスが生まれる。自分の人生に自分で責任を持つ」が強く、心に残った。
国が悪い、会社が悪い、時期が悪いと責任転嫁するのは簡単だが、そうした考え方は結局は他者に自分の幸せを委ねている。本書では、そうした人は最後に、依存していたと気付くとあるが、周りを見るとそれに気付かない人も如何に多い。自分自身、心に強く刻もうと自戒を込めて、所感の結びとする。