本: 2009年12月 Archives

本日の1冊: フリー

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フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 小林弘人

おすすめ平均
stars「自明である」と切り捨てられない良書
stars「古くて新しいビジネスモデル」 これまであるようで無かった本
starsとりあえず読んでも損は無し
stars”ルール”が変わったことを認識させてくれる
stars不正コピーを潜在的なファンを作るためのマーケティング

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Googleを始めとしたネットにおける無料の世界を十分理解しているつもりでいたが、それでも得るもの・目から鱗が落ちる思い多数だった。

例えばMP3等の違法ダウンロード。罪は罪なのだが、日本語の「罪」にSINとCRIMEの区別がないためか、違法=道徳的にも悪という短絡的な考えに結びつきやすい。しかし本書を読んで、単に現状ではCRIMEというだけであり、むしろ旧態依然とした過去のしがらみにしがみついているだけでは、と思い知らされる。音楽(主にレコード会社)だけではなくTVにしかり、新聞にしかり、市場が縮小しているのに、著者の言葉を借りれば”ルールが変わった”のに、新しいビジネスモデルを模索するどころか、現実に目をつぶっているように感じる。

本書はフリー化した過去のビジネスモデル------例えば本体(かみそり、プリンタ、etc.)を安く売って周り(替え刃、インク、etc.)で儲ける------から現在のWeb2.0世代のビジネスモデルまで全貌を俯瞰でき、要所要所にコラムで現在のフリー(無料)のビジネスモデルを、、巻末にはフリーを利用した50のビジネスモデル紹介など、内容も非常に濃厚。

産業革命が起こったとき、”人々は筋肉が衰え機械に支配される”といった杞憂があったように、100年規模の変革が起こっている今の現実に目を背けていたら、時代に取り残されるだろう。

読んで損はない、と言うよりこれからの時代に必読の1冊。

c.f. 日本語の特設サイト http://www.freemium.jp/ も設けられている。

2009/1/17 追記 日経新聞の書籍紹介コーナーに掲載

カモメになったペンギン
カモメになったペンギン 野村 辰寿

おすすめ平均
stars1時間で読める
stars「ノーノー」のキャラクターが秀逸!
stars目的に応じて活用できる良書
stars組織変革をカモメとペンギンに例えた寓話
stars改革・変革へ周りを巻き込むときに配る本

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J.コッターが、自身の提唱する「組織変革を成功させる8段階の変革プロセス」を分かりやすい寓話(ぐうわ)に。どこでもありがちな危機を危機と認識せずに変化を恐れる人・組織。それを変革するプロセスを---この手の本は難解な物になりがちだが---1時間もかからずに読了できる貴重な1冊。個性豊かなペンギンたちが主人公の物語となっているのでそうした本筋は無視しても楽しめる(話自体は結論ありきなので突っ込み所ももちろんあるのだが)。

ちなみに、8段階のプロセスは以下の通り。(詳細は割愛)

1.危機意識を高める

2.変革推進チームをつくる

3.変革のビジョンと戦略をたてる

4.変革のビジョンを周知徹底する

5.行動しやすい環境を整える

6.短期的な成果を生む

7.更に変革を進める

8.新しい文化を築く

内容(「BOOK」データベースより)

第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作として、「描写力抜群、正統派の魅力」「新人離れしたうまさが光る!」「張り巡らされた伏線がラストで感動へと結実する」「ここ十年の新人賞ベスト1」と絶賛された感涙のベストセラーを待望の文庫化。脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が山奥の診療所で遭遇する不思議な出来事を、最高の筆致で描く癒しと再生のファンタジー。

 

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)
おすすめ平均
stars豪華客船、肝腎のネタであえなく沈没
starsこのミステリーがすごい大賞1200万円の価値なし。
starsタイトルどおりの「四日間の奇蹟」
stars大賞を与えるほどのものかな?
stars過去これほど何度も泣いた本は無い

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前半は主人公の回想・思考や情景の描画を中心に少女との話が淡々と進み、トリガー(ある事件)をきっかけに急展開する後半では終結へ向かって物語が一気に流れていく。主人公がピアニストを目指していたという設定から随所にピアノの曲や演奏が織り交ぜられるのだが、まるで本書が1つの曲のように静と動のコントラストが心地よい。また、一見無意味に見えた前半の描写1つ1つが、何かしらの伏線だったりと奥深い。

ネットの書評では賛否両論だが、事前情報やノイズを何も得なければ十分堪能できる。

直球勝負の会社―戦後初の独立系の生命保険会社はこうして生まれた
直球勝負の会社―戦後初の独立系の生命保険会社はこうして生まれた
ダイヤモンド社 2009-04-10
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おすすめ平均 star
star直球勝負の生き方を知る
star泣く子も黙る業界の寵児のビジネス人生
star業界外の人にも。。。

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社長自らが創立した会社や自伝を本にすると得てして自己満足の類になりがちだが、本書は全く違った。

前半はライフネット生命を起こすことになったきっかけから実際に設立までの奮闘記を生命保険会社の理想やライフネット生命の理念を織り交ぜながらおもしろおかしく、後半は自らの人生を簡潔にまとめているのだが、その中には参考になるフレーズがいっぱい詰まっていた。以下、ちょっとした逸話から参考になる言葉など、個人的な備忘録がてら記す。

・基幹システムに採用したCSCのLIFE/JというパッケージはSBIアクサ生命も採用していた。P.53

・ライフネット生命における手術の定義を「健康保険法等に基づき厚生労働省が定める医科診療報酬点数表」に合わせ、給付対象判定に関して争点の余地を排除した。P.74

・ライフネット生命のマニフェスト(詳細割愛)。P.85

・至言として引用している、完了の後藤田正晴氏が若い官僚に向けたスピーチから「諸君は、上司を自分の言葉で説得できなければ、自分を無能だと思いなさい。なぜなら、上司の方が職務範囲が広く、細部まで目が届かないのであるから。また、お茶くみのおばさんに可愛がられなければ、決して偉くなろうとは思ってはいけない。なぜなら、失う物がない彼女たちは、諸君の人間性を一番よく見ているのだから。」P.155

・著者が中国の人に言われた言葉「中国は、国家の原則は社会主義、金融政策の原則は至上主義。日本は、国家の原則は資本主義、でも金融政策は社会主義」P.162

・スイス銀行のマルセル・オスペル頭取は(「レイオフは従業員を犠牲にしているのではないか。」という問いに対する回答として)「ポストが与えられない人間を組織内に抱えていれば、彼は、無為に歳を重ねるだけです。飼い殺しほど非人間的なことはありません。すぐクビにして、彼に新しいチャレンジの機会を与えるべきです。」P.166

・部下が「どうしましょう。決めてください」と相談してきたら追い返す。「こういう状況で、対案としては、A案とB案があります。私はこういう理由でA案の方がいいと思いますが、これでいいかどうか決めてください」と言ってきたときだけ、相談に乗る。P.171

本日の1冊: 超凡思考

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超凡思考
超凡思考
幻冬舎 2009-02-10
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おすすめ平均 star
star立ち読みで十分です。
star稀代の秀才と稀有な導師の導き本
star多くの「勉強本」「仕事術本」を読む前に

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2人の共著による、「目標設定」「時間術」「情報整理」「伝える力」に指南書。主にマインドよりな内容で、シンプル・かつ明快なメッセージ集。それぞれの章の主な内容は以下の通り(抜粋)。

「目標設定」”他人と比較しない。小さな勝利をペースメーカーに、達成感を覚える。”、”ワンランク上に目標設定する。ストレッチが人を伸ばす。”、”とにかく続ける。やり続ける人がいちばん強い。”、”目標設定の先の熱い想いが、人を動かす。”

「時間術」”リーガル・マインドで自分を客観視する。”、”原理原則があれば後悔しない。”、”読書は時間を増やす。”

「情報整理」”情報は集めない。”、”手の内は明かす。”、”インプットは未知半分。アウトプットで情報が定着する。”

「伝える力」”ロゴスとパトスのバランス”、”欲張らない。10のうち2伝われば十分。”

全体を通して特に目新しい物ではないが、改めて再認識させられることが多い。章の合間にあるコラムでも”ズームイン/アウトの力を備えると膨大な情報を、必要に応じて3分、30分、3時間と自由自在な時間設定の中でプレゼンテーションできるようになる。”(P.107)など、重要なメッセージが含まれている。

お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)
お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)
おすすめ平均
stars本当に「実践」できるのか?
stars単純な誤り
starsごく真っ当な投資啓蒙書
starsいくつか欠点もあるけれど
stars時流が見えない人

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資産を銀行(預金)に集中してリスクをとらないことのリスク、なぜ日本人がリスクをとらない・とれないか(住宅・保険で十分リスク投資しているから)、及び様々な金融商品を非常に分かりやすく、簡潔に説明している。そして後半では実践編と称し、実際に資産を国内・海外/安定・リスクと4分割して運用していく方法を示し、最後には資本主義の弊害(=リターンのみに注目しがち)から、環境や社会的意義のある分野への投資を呼びかけている。

分かりやすい説明や、単に金儲けではなく投資の意味を問いかけている点が、盲目的な初心者向け書籍(「○○で儲ける」のようなタイトルの類)・難解な経済書とは一線を画している。しかし、著者の主張も選択肢の1つでしかないのも事実であり、それを実践すればハッピーになれる的な内容は疑問を感じ得ない(事実、本書が刊行された2年前はサブプライムローンが顕在化し始めた時期でもあり、本書の通りに実践したら痛い目をみただろう)。

ホンダF1設計者の現場―スピードを追い求めた30年 (CG BOOKS)
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1961年本田技研工業に入社、66年からホンダ第1期F1開発チームの一員となり、市販車開発を挟みホンダの黄金期(第2期)を歩んだエンジニア田口英治氏とホンダF1の歴史。

話はセナとNA(自然吸気)エンジン幕開けの1986-89年から始まり、著者が車に魅せられホンダに入るまで、著者F1への参加、ターボ時代(1982-88)、圧倒的なパワーを誇ったV12エンジン時代(1990-92)、そして最後は21世紀のF1へとまとまっていく。F1を毎戦かかさず見て、マクラーレン・ホンダが非常に輝いていた頃の'90年前後については、舞台裏とも言うべきエンジン開発や数々の努力・失敗に対するエンジニア達の努力が事細かく書かれ、急遽部品を作成することとなった時の設計書スケッチなども掲載しており、読んでいて興奮すら覚える。

しかしながら、セナが亡くなり、シューマッハが去った昨今、F1が車の憧れ(最高峰)という一般のイメージもだけでなく存在自体が、環境問題等あり、過去の遺物のようになりつつあるのを感じ得ない。著者は良くも悪くも家族をないがしろにし、エンジニア人生糸筋だと書いているが、こういった人生観もまた、古き時代の考え方と言えよう。著者は現在はホンダを離れ、イギリスで働きながらもっぱらクラシックカーを楽しむというのも、哀愁のようなものを感じさせられた。

忙しいパパのための子育てハッピーアドバイス
忙しいパパのための子育てハッピーアドバイス 太田 知子

1万年堂出版 2007-11-07
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おすすめ平均 star
star一体誰に向けて書かれた本なのか?
star夫婦円満になれます
star参考になります

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タイトル通り子育てハッピーアドバイスシリーズのパパ向け。よくある、起こりがちな問題を対策と共にわかりやすいマンガで説明していて、参考になる点が多数ある。必ずしもパパに対する”べき論”で書かれているわけではなく、客観的なのでママが読んでも参考になると思う。、前回の3冊が比較的すんなり受け入れられたのに対し、こちらはターゲットが少しよく分からない。メインがパパ向け、とするにはパパの深層心理が少し理解不足と思う点もあり、少し違和感もあった。読みやすく、得る物はあるので本書自体を否定するものではないが。

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)
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光文社 2006-02-16
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おすすめ平均 star
star副題どおり、頭がやわらかくなる「かもしれない」書
star主観とは、世間とは関係なしに自分だけが白だと考える仮説にしたがうこと 〈by竹内薫〉
star批判する人

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飛行機を飛ばす人がまず最初に学ぶ「ベルヌーイの定理」の否定から始まり、いきなり先制ジャブを食らった感じである。

アメリカで論争を起こした進化論と知的設計者理論、ガリレオ等の天動説・地動説問題、ニュートン力学とアインシュタインの相対性理論・ホーキングなど様々な対峙を紹介しながら、冥王星の惑星扱い(注:現在は「矮惑星」に格下げされている)やひも理論など、今現在、真実と思われている様々な事も明日には変わる可能性があることを訴える。

「科学」とは事実・自然の理の学問と思いこんでいたが、著者によるとあくまでも現在の考え方、理論であり、それは真実ではないと。つまり、真実に限りなく近似していくことはできても、それが絶対ではない。西洋ではもともと「哲学」が前身というのも目から鱗が落ちる内容であった。

様々な例をあげつつ、最後はきれいにまとまっている。科学史だけでなくね話が通じない人と接したときの客観的な対処法、自分の頭の固さを気付かされる。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
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ダイヤモンド社 2009-06-19
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おすすめ平均 star
star半分で十分
star分野を分けて論ずるべき
star生い立ちと索引は切って一冊にしたらよかったのに

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数々の話題にも上り、図書館の予約も半年近くかかった1冊。

どんなにリスクに対する対処をしたつもりになっても、リスクを100%回避することは不可能、故に不果実性をコントロールするのではなく積極的に受け入れる必要がある、との主張。9.11の前日にだれがこのような事態を予測し得たか、感謝祭前日の七面鳥のように、過去(気前よく餌を与えてくれる人間)からいくら学んでも明日には180度異なった事象はいくらでも起こりうるといった例示をいろいろ紹介。

類を見ない視点で発想は斬新。しかし期待が大きかった分、話が拡散して so what 的な部分も多数あり個人的には期待はずれだった。