本日の1冊: 「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)

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「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)
佐藤 健太郎

光文社 2012-09-14
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リスクを完全になくすことはできないと、誰もが知っているはずが、事に添加物や農薬、放射能といったものになると、拒否反応を起こす。盲目的に危険と考える、あるいは、自動車、たばこなどリスクが明確にあるものは無視するといったバイアスを科学的に分析する1冊。3.11以降の本だけあり原発問題にも誌面の多くを割いている。


ハーバード大のリスク解析センターによる、リスクを強く感じる因子として以下の10を引用している(P.28)。

・恐怖心
・制御可能性
・自然か人工か
・選択可能性
・新しいリスク
・意識と感心
・自分に起きるか
・リスクとベネフィットのバランス
・信頼

これらをもとに、なぜ人々はリスクを見誤るか、統計的な錯誤を、ゼロリスク症候群を解説する。発ガン物質、ホルムアルデヒド、トランス脂肪酸、などなど個々の事例を基に、科学的な検知から嫌悪感は安全性と根拠のないことを示す。また、ホメオパシーといった、逆(科学的に根拠のない物を信望する)も扱っているの興味深い。最終章の放射能に関する記載は、ここだけで基礎的な放射能の知識を得られるほど充実している。

個人的には、以下のようにこの手の本は何冊も読んできたため再確認と言った位置づけだが、改めてリスクは意識的に考えないと簡単に惑わされると思った。



以下、備忘録。

・各種のカビが作る毒(マイコトキシン)には強烈な発がん性をもったものがある。(P.108)
・ショウジョウバエなどでは、X線照射によって子孫に突然変異が出ることがわかっており、これを発見したハーマン・マラーは、1946年のノーベル生理学・医学賞を受賞している。(略) しかしその後、広島、長崎、チェルノブイリで、また放射線技師など職業的に放射線を浴びた人々に対する詳細な追跡調査が行われ、(略) 人間においては、放射線による突然変異の発生は確認できないというのが、現在の結論です。(P.240)

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