本: 2012年7月 Archives

武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える   知的生きかた文庫武士道―人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える 知的生きかた文庫
新渡戸 稲造 奈良本 辰也

三笠書房 1993-01
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岩波文庫版とはまた趣向の異なった、現代語による記述のため、また字の大きさ・フォント的にも読みやすい。

キリスト教始め大抵の宗教は教典があり、作法から恥や罪といった考え方まで明文化されているが、日本人に根付く神道・仏教にはそれがない(正確には仏教には教典があるが、体系的にまとまっているとも言えず、またキリスト教やイスラム教・ユダヤ教のように原点として絶えず読まれているわけではない)。それが故、一気に近代化した日本と日本人がわからなかった西洋に対して日本を説いた本書の背景を考えても、本書の価値がよくわかる。

なお、現代語になったが故、考え方に古くささというか、普遍性のなさを感じてしまったのは気のせいだろうか。
放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ
ユーリ・バンダジェフスキー

合同出版 2011-12-13
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チェルノブイリ時代は得体の知れぬ恐怖心の方が大きかった放射能(一説には、冷戦時代の核武装の正当性のための情報操作とも)。フクシマ以降はLNT仮説の反証がMIT(マサチューセッツ工科大学)で発表されたり、徐々にその危険性が科学的に解明されつつある。即ち、低線量・長期被爆・内部被爆の確率的影響は数値比較することで他の危険因子(健康不足、喫煙、飲酒、etc.)ほどではないこと、また放射能事故の実害は避難やデマ・差別、不安と言った心理的ストレスの方が大きい。

本書はゴメリ医科大学の学長だった著者が、放射線被曝の研究成果として、未だ実害が認められていないセシウム137の危険性を述べる。別件で逮捕・禁固刑を受けたりと、いかにも口封じ的な背景も気になり手に取るが・・・

結論から言うと、タイトルにもある”放射性セシウムが人体に与える描く的生物学的影響”の実証に至っていない、と感じる。その理由として、まずはデータの示し方がある。構成は大別して、動物実験や実態調査によるセシウム取り込み経路や濃度の実態、セシウムが引き起こす症例、そして長期的な影響、(+防護方法)となるのだが、総じて、提示するグラフの殆どにおいて、母数や範囲の提示が無いので納得性がない。次に、検討範囲というか、反証をしていない。特に後半の長期的影響にあるのだが、ヨーロッパ諸国のガンの推移を示すところなど、セシウムの濃度との関係を示しておらず、またその他の因子を考慮していないので必要十分条件となっていない。最後に、論理構造が弱い。文章で示す内容としての根拠がないところが多い。例えば、P.47で文はゴメリ州のガン増加を述べているが、データ(グラフ)ではヨーロッパにおけるガンの死亡率として旧ソ連のデータを示したり、最終的な結論では今まで述べていない数世代への影響を訴えるなど論理の飛躍が見られたりする。即ち、本書はタイトルの内容を訴えることが大前提であり、根拠は後付けという印象を持たざるを得なかった。

P.S.本書は後半に、まるっきり同じ内容で英文バージョンも掲載している。そういう意味では、とても勉強になる。
ドイツ式シンプルに生きる整理術ドイツ式シンプルに生きる整理術
リタ ポーレ Rita Pohle

主婦の友社 2002-10-01
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物(?)の整理に関する本なのだが、個々の内容は有益なものの総じて良くわからず。まず(?)をつけたのは、気の流れ的な風水の話も織り込んでおり、シンプルに生きる整理術=モノを少なくする、またはわかりやすく整理する技術と想定して読むと戸惑いを覚える(”シンプル”の定義が不明となる)。また、内容も矛盾や突っ込みどころに富む。一例を挙げれば、

・説明の中ではモノの整理・処分はどこから始めてもかまわないが、例えば玄関から始めたとしよう(P.108)と書きながら、章末のまとめでは”玄関の前からスタートし、・・・”と断定している(P.118)。
・”パソコンのハードディスクにも「ガラクタ」が入っている可能性がある。古くて不要になったデータを削除すれば、新しくインプットするスペースができる!”と「空き容量」の話をしているのに、次に続く文では、”インプットしてある住所録をすべて点検してみよう(携帯電話やメールのアドレス帳も同様だ)。”と「人」の話に置き換わっている。
・”コードレス電話や携帯電話の時代である。どこか一定の場所に電話を置く必要はない。”(P.141)と空間を占有しないように訴えているが、モノ探しに時間を浪費しないよう、また定位置が決まっていなければ片付けることができないからという理由で”すべてのモノはふさわしい場所に置こう”(P.218)と述べている。

など枚挙に暇がない。全体を通しても、同じ事の繰り返しや、話の飛びが気になる。肝心の、モノの整理も、整理術は使用頻度により機械的に整理する方法を提示しつつ(自分自身はなかなか整理できないので、このような方法は至極有益だと納得)、記念品や美しい品などを取っておく品としているが、そのような抽象的な価値観のモノが溢れるから整理できない、と反論したくなってしまう。
塩で浄化、など風水の部分は、私のように実利を求めて本書を手に取り、そっち系を信じない者にとっては脱線以外の何者でもない。

高品質なモノを長く使う、などうなずく部分もあったが、総じて(皮肉にも)整理されていない、著者の主観的な主張と感じる。