本日の1冊: 池上彰と考える、仏教って何ですか?

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池上彰と考える、仏教って何ですか?池上彰と考える、仏教って何ですか?
池上彰

飛鳥新社 2012-07-19
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葬儀・法事で身近にありながら、無宗教と言われる通りあまり深く考える機会の少ない仏教。本書は前半と後半に分かれ、前半は仏教の歴史から意味、教えまで、分かりやすく解説する。また、そこを読むと宗教仏教や檀家制度、他力本願が主となる鎌倉仏教など、日本独自の発展をしてきたことがわかり、後半では、よりオリジナルに近い上座部仏教、チベットの僧やダライ・ラマとの対談が掲載されている。

本書で最も突き刺さったのは、"仏教は心理学"という一言。あぁ、なるほど、三毒や煩悩といった、どうして心が乱れ、どう心を整えるか、という教えが多いのも頷ける。

全体的に池上氏の著書だけあり非常に分かりやすい。個人的には、以下の点を理解できたことが有益だった。
・日本では戦争や災害で人々の心を救った、鎌倉仏教が独自の役割を担って発展した。

・江戸時代に、キリスト教を排除するため、各家庭に寺院と結びつける檀家制度、寺院のヒエラルキーができあがった。

とくに前者は、なぜ日蓮宗、浄土宗、浄土真宗など他力本願(本書ではこの記載はないが)の考えが日本の主となったかはっきりする。また、平民の心を救うため、輪廻転生の考えからは相容れなかった葬儀に踏み込むことで、日本では葬式=仏教の考えが定着したことも興味深い。一方、鎌倉時代の仏教界の人々は人々を救うという明確な目的があって変節してきたことが感動すら覚える。一方、現代はどうか。法事にちらっと来て聞くモノが理解しないお経を唱えるだけ、本書でもさらっと指摘があるが救いを求める人々がオウムなど新興宗教に流れていた(る)状況など、いまの葬式仏教の意義はなんだろうかと考えさせられる。

後半は、チベット僧やダライ・ラマとの対談を載せているが、ここは評価が分かれるところ。科学に見識あるダライ・ラマ氏とのことだが、100%安全でない原発は減らすか停める、太陽光発電に変えていくなど、理想論や科学的でない(原発の電力は太陽光で代替できない)発言など、本書の主旨からずれていて興ざめする。


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