ノン・フィクション: 2014年11月 Archives

ヤノマミ (新潮文庫)ヤノマミ (新潮文庫)
国分 拓

新潮社 2013-10-28
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南米アマゾンの原生林に原初の暮らしを残すヤマノミ、彼らの元で4回計150日間に渡って暮らして記録したルポタージュ。初期は言葉もまともに通じない人間、彼らに馴染むために必要最低限の人数(著者、カメラマン、彼らの数人が多少理解するポルトガル語の通訳者)での住み込み、慣れないアマゾンの環境、病気や時には死の危険すらあり得る環境下での取材は、並ならぬ覚悟で行ったと推察する。

原初の暮らしとは言え同じ人間、怒りや笑い、悲しみといった感情は持ち合わせていることに、なぜかホッとする。著者も、暮らしはじめこそは時間を気にしていたが、やがて都会の感覚とは異なるゆったりとした時間感覚に気付いて自然の流れに任せるようになったという。しかし、彼らを知るに連れ、独特の死生観、恐ろしさを知るようになる。

夫婦の形はとるが、比較的自由な性。しかしながら現実問題として、家族が居なければ、また居たとしても夫の力量(狩りのスキル)で養える家族の数が決まる。また、障害児が生きていくのは厳しい世界において、時に母は生まれた子供を天に帰すと言う---生まれてすぐに、生かすか殺めるかを決断する。

近年はブラジルが医療や教育を提供する。医療技術の存在を知り、祈祷を施していた長老の権威お低下。お金の存在を知り、また食や生活環境の激変で太る者も出るなど、急速に独自の文化は失われているよう。文明と出会うことで、彼らは何を得、何を失うのだろう。