ノン・フィクション: 2014年3月 Archives
アラスカ物語 (新潮文庫) 新田 次郎 新潮社 1980-11-27 売り上げランキング : 119685 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
30年以上も前の本でありながら、まったく古さを感じさせない。その面白さに、時間を忘れ読みふけってしまった。一言で言うと、日本人が主人公のダンスウィズウルブス[アラスカ編]と言ったところか(一言じゃない・・・)。
十五歳で日本を脱出したフランク安田は、キャビンボーイとしてアメリカ沿岸警備隊のベアー号に乗っていた。物語はベアー号が北極圏で氷に阻まれ身動きが取れなくなり、食糧危機が起こったところから始まる。差別からあらぬ疑いをかけられたフランク安田1人、150マイル離れたポイントバローの町へ歩いて向かう。
九死に一生を得てたどり着いたフランクは、ベアー号に戻らずポイントバローに残ることにした。やがて現地の人々の信頼を得ていき、エスキモーと結婚する。白人の鯨乱獲や疫病の持ち込みで絶滅の危機にあったエスキモーのために、ゴールドラッシュにあったアラスカで金脈と新たな地を求めて冒険に出る。
金脈の発見や、新たな居住地でのインディアンとの交渉など、まさに事実は小説より奇なりを示す物語。話は、晩年まで続き、第二次大戦で日系人として無実でありながら拘束されたり、あるいは周りに親切すぎて自身には残らず家族からは不満募らせられたり、物語としての面白さとともに、人の一生とは何か考えさせられる。
※エスキモーとイヌイットについて
日本では、カナダの主張に従って生肉を食べるという意味から「エスキモー」は差別用語という認識になり「イヌイット」を使用しているが、以下の理由から、私は敢えて「エスキモー」を使うべきと考える。
・「エスキモー」は北極圏・高緯度に住む原住民を指す単語であるのに対し、「イヌイット」はカナダを中心とした一民族 に過ぎない。アラスカやシベリアなどに住むイヌアピトやユーピクをひっくるめてイヌイットと呼ぶのはおかしい。
・アラスカなどでは「エスキモー」という言葉に誇りを持って使用している。
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