ノン・フィクション: 2012年11月 Archives

本日の1冊: 特殊清掃

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特殊清掃特殊清掃
特掃隊長

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2012-04-14
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特殊清掃と呼ばれる、遺体処理を始めゴミ処分・清掃を行う著者のブログを書籍化。その職に深い思いもないが、プロとしてやることはやる、20年死体を見てきた人ならではの死と生に対する思い、日々の生活などなど。現場の描写もそれほどグロテスクではなく(人にもよりそうなので、あまり強くは言えないが・・・)、あまり重くならずに死について考えてみる、事故・事件の際の遺体はどういう人達が処理するのかなど多くの人は知らない世界を知れる1冊。
ザ・ライト・スタッフ―七人の宇宙飛行士 (中公文庫)
トム・ウルフ 中野圭二

中央公論社 1983-11
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アメリカ最初の宇宙飛行士が誕生する様子を、主にパイロットの側面に焦点を当てながら、時代の側面も織り交ぜながら記したルポ小説。時代は1960年代、ソ連が次々に有人飛行を成功させる中、アメリカは失敗続きでその威信は大いに失墜していた。信用回復を賭け、またソ連に宇宙を征される危機感から、NASAは有人飛行を目指し、本書はその最初の宇宙飛行士に選ばれた7人にスポットをあてる。

優秀なテストパイロットから選定されるが、先に宇宙に飛んだ犬や猿からも分かるとおり、ほとんど自動化されているためパイロットである必要がない。しかしマスコミや世間の眺望、いざ宇宙に飛び立ちアメリカに戻ればヒーローとしての栄光、いろいろ翻弄される様を、見事に描写している。そして、イエーガーのテストパイロット中の事故で話は終わるのだが、宇宙飛行士が特別な存在でなくなると、昔のテストパイロットの価値や音速を超えた偉業も風化していく様子が、哀愁を感じさせられる。
パイロット達の苦悩や生活(表も裏も)、価値観など細かく描画されている。興味深かったのが、宇宙ロケットを自分で操縦したいと思うパイロットと、コンピュータ制御にまかせたい技術者の意識の差。この辺が、宇宙へ行くのには本来不要な翼を、スペースシャトルで設けることとなったのか、などと空想に耽ってみるのも面白い。


本筋とは関係ないが、1983年初版の本書、とにかく字が小さく、最近の大きい字の本に慣れていると読みづらい。