ノン・フィクション: 2014年10月 Archives

本日の1冊: 詐欺の帝王

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詐欺の帝王 (文春新書)詐欺の帝王 (文春新書)
溝口 敦

文藝春秋 2014-06-20
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オレオレ詐欺(振り込め詐欺)の頂点にいた人物へ取材を元に、システム金融からオレオレ詐欺へ変遷した歴史、詐欺に関わる人物の素性に迫る。

本書を読んで何よりびっくりしたのは、オレオレ詐欺の頂点に立つ人物が如何に優秀かということ。決して思いつきや暴力だけで成り立っていない、むしろそれらは全く使っていないと言うこと。知識有り、カリスマ有り、論理的に考え、行動している。例えば被害にあう人物の分析に対しては、ノーベル経済学賞のダニエル・カーネマンの理論を理解した上で実践している。---だからこそ、多くの人が多額に騙され、警察に捕まるのは末端だけで決して全容に迫れないのだろう。感想は憎しみや怒り(自分や身近が被害にあっていないというのもあるが)という感情よりも、才能が勿体ないの一言に尽きる。 いる
決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)
半藤 一利

文藝春秋 2006-07
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広島、長崎を経て終戦へ向けた議論、天皇の降伏聖断。そして8月14日から15日正午の玉音放送までの緊迫した24時間を克明に(一部、史料が不十分な箇所はその旨明記有り)記す。

戦争継続派によって起こされたクーデターによって皇居を占拠されるも、ちょっとしたきっかけから玉音放送を録音したテープリールを奪われなかった偶然によって、承知の通り無事に終戦放送に至る。実は終戦も、ぎりぎりの状況でなしえた奇跡と知る。

国の存続のために降伏を決意した天皇、指導者。同じく国を憂い、降伏を翻そうとクーデターを起こした青年将校、敗戦の責任を感じて自害する阿南陸相。手段や結論としての正しさは別として、共通するのは、登場人物の日本を強く想う気持ちに、心揺さぶられる。