本日の1冊: 大麻ヒステリー 思考停止になる日本人

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●大麻取締法違反で逮捕された芸能人や文化人、スポーツ選手、大学生などを、テレビや新聞を中心としたマスメディアが袋だたきにする----同じような構図が、日々繰り返される。
しかし多くの日本人には、大麻がどういうものか、大麻取締法がどういう経緯で成立したか、そもそも痲薬とは何かという知識が決定的に欠けている。にもかかわらず、なぜ大麻というだけで思考停止状態に陥り、批判の大合唱になるのだろうか?

 

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マスコミ上では、大麻は覚醒剤と同レベルで扱われるが、そもそも大麻に含まれる麻薬成分(カンナビノール)の量ではなく、大麻そのもので判断する大麻取締法に対して、疑問を投げかけているのが本書である。例えばビールであればノンアルコールビール(本当にアルコール0%のものを含め)飲んで運転しただけで、飲酒運転で摘発されるようなものである。

そもそも大麻はなぜいけないのか?本書ではまず法の経緯を記している。そもそも日本では昔から大麻と関わってきた(吸引ではなく繊維として、何より日本の大麻には麻薬成分がほとんどないとのこと)が、戦後GHQの勧告で日本で禁止された。ではなぜGHQは日本に禁止を求めたのか?アメリカで違法だから。ではなぜアメリカで違法となったのか?この辺りに、政治的な理由が見えてくる。

時は禁酒法(本書ではその問題、制定の背景から廃止に致る経緯まで同様に記載しているが、ここでは割愛する)が廃止されて4年後の1937年、大麻課税法が制定された。その背景には禁酒法の取り締まりのために雇用された警察の雇用弁として、当時大量に流入していたヒスパニック系の排除に彼らの嗜好品であった大麻が格好のターゲットとなったという。但し、大麻自体は影響が科学的に証明されていないため、法律の名前が示すとおり使用には多額の税金を課すことで、実質使用を違法化したという、禁酒法同様、非常に曖昧なものである。

本書では、大麻とニコチン・ヘロイン・コカイン・アルコール・カフェインとの比較を、依存性・禁断性・耐性・切望性・陶酔性といった観点でも比較している(P.139 表5)が、なぜニコチン・アルコールがOKで、大麻がいけないのか見えない。また、「財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター」の大麻に関するページでは、”普通の社会生活を送れなくなる”とまで明記されているが、本書によるアメリカの各研究報告内容やWHOの報告では否定される。

オバマ大統領が使用経験を公然と述べたり、ダウンタウンの夜道では普通に売買されていたり、同じように禁止していてもアメリカ(前述の通りグレーではあるのだが)ではだいぶ日本の感覚と異なる。もちろん、法律がある以上、それを破るのは違法であることには変わりないし、罪を受けるのは当然である。但し、違法と言うだけで何も考えずに社会から追放しようと刑罰以上に糾弾する現状の報道・社会に、物事を考えずに行動する社会に、警笛を鳴らす本書は非常に興味深い1冊だった。

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