本日の1冊: 北方領土交渉秘録―失われた五度の機会

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北方領土交渉秘録―失われた五度の機会
北方領土交渉秘録―失われた五度の機会東郷 和彦

新潮社 2007-05
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以前は2島の先行返還などの可能性もニュースに出ていたが、鈴木宗男氏、佐藤優氏の逮捕を機に進展が見られなくなり、民主政権の今、完全に冬の時代になっている北方領土問題。問題の本質を知るためにも過去の交渉内容の把握が必要だが、本書は3回のモスクワ大使館勤務を筆頭に、ロシア関係で17年携わられた東郷氏による、交渉秘録。”秘録”というとよくゴシップや著者の自慢話の類が見受けられるが、本書は著者の失敗も含め客観的に記述されており、冷静に分析されている。

どのように下地作りをし、どのように準備し、どう交渉してきたか。関わっていた人だから書ける側面が多く、読んでいて非常に面白い。いままで自分が理解していた北方領土の交渉は、マスコミによる、しかも表面的な部分のみであったと痛感させられる。

また、読み物としての北方領土の交渉実録以外に、”交渉”の参考書としても有益な1冊である。とくにエピローグに記載された、著者の母が死の床で語った祖父の言葉という内容から下る以下の内容は、考えさせられる。

「交渉で一番大切なところに来た時、相手に『51』を譲りこちらは『49』で満足する気持ちを持つこと」と言った。
(略)
ここで言う「51対49」とは、足して二で割るとか、大体半々くらい譲歩するとか、そういうことを意味してはいなかった。(略)それは交渉ぎりぎりの時点に来たときに、自分の立場だけではなく、相手がどういう立場に立っているかを理解する意志と能力の問題であるように思われた。(P.390)

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