Yuki: 2014年8月 Archives

伝わる書き方伝わる書き方
三谷宏治

PHP研究所 2013-11-09
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三谷氏の”伝える・・・”シリーズ(と言うのか?、末尾参照)、書き方編。伝わるための3つの戦略として、
・短く書く
・構造化する
・波をつくる
をあげてそれぞれ型やチップスを具体例とともに解説する。所々、他のフレームワーク(例えばPDCAやVisible Thinkingなど)や、ネタ的な話を織り込み、飽きさせない。

一方、書かれていることは他の”伝える・・・”と同様の事も多く、どれかを読んでいる人にとってはポイント・ポイントを抽出して読むことが可能。

※三谷氏の”伝える・・・”シリーズの本
親と子の「伝える技術」
一瞬で大切なことを伝える技術
コンサル一年目が学ぶことコンサル一年目が学ぶこと
大石哲之

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2014-07-30
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社会人1年目に学んで今でも役立っていることを、コンサルを卒業後も各界で活躍する人々へインタビューし、その結果から普遍的なスキルを定義する。1年目はもとより、コンサル業界以外の社会人にとっても、役に立つことが多いのではないだろうか。

議事録の書き方、質問には言い訳や解釈の前にまず聞かれたことを答える・・・などの基礎的な事柄は他でも多く書かれているので、ここでは特に、コンサルが重視する点から気になった点を記したい。

・数字というファクトで語る
コンサルは若手でも、企業の経営層などベテランと会話することが多い。それができるのはなぜか、の答えが上記である。経験も知識もない中、事実だけは動かせない。また、世界共通の言語は事実(数字)である。2カ国程度であればお互いの文化を共有することもできるが、複数になってそれをやっていたら仕事にならない。なので、事実(数字)を追求し、事実(ファクト)で語る。

・空雨傘提案の基本
空雨傘ご存じない方は、ググってみてください。ある程度の経験を持っている方でも、いずれかが欠けていたり、ごちゃ混ぜの方も多い。

・考え方を考える

一般的には走りながら考えるという方法が多いと思うが、コンサルではまず「アプローチ」「考え方」「段取り」を最初に考える。遠回りに見えるが、結果、効率的になる。

上記はほんの一例だが、どれもコンサルの仕事の本質を、分かりやすく解説している。お薦めの1冊。
「日本史」の終わり  変わる世界、変われない日本人「日本史」の終わり 変わる世界、変われない日本人
池田 信夫 與那覇 潤

PHP研究所 2012-09-19
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日本は西洋化によって近代化を成し遂げたと考えられるが、本書によると”日本は西洋化ではなく、中国化している。”という。形上は三権分立とあるが、実質は官僚機構が権力を握る人治政治であるというのがその根拠。

池田信夫氏と與那覇 潤氏の対談形式で書かれているのだが、西洋や中国との文化の違いからDNAとして刻まれているかのような日本人としての考え方を浮き彫りにする。
池田氏の主張は『「空気」の構造: 日本人はなぜ決められないのか』と同じなので、ここでは異なる視点に注目したい。

それは、人類としての謎、宗教。ほとんど実用的な要素のないものに膨大なエネルギーが費やされるのはなぜか。本書が引用するニコラス・ウェイド「宗教を生み出す本能」によれば、戦争に備えるための心的メカニズムだと言う。(P.38)
明治政府が国をまとめるために天皇制を掲げ、靖国神社をはじめ国家宗教として突貫工事的に拵えたのは、実に理にかなっていると納得した。
政治をあきらめない理由――民主主義で世の中を変えるいくつかの方法政治をあきらめない理由――民主主義で世の中を変えるいくつかの方法
ジェリー・ストーカー 山口 二郎

岩波書店 2013-03-27
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ポピュリズムの台頭、投票率の低下など政治に対する無関心など、民主政治に対する幻滅が言われて久しい。これは日本など特定の国だけではなく、民主主義国家で共通する現象だという。本書は民主主義の問題を追求し、政治の再生を提言する。

そもそも、政治とは利害の一致しない人同士をまとめ、強制するものである。経済が成長している時代、国家共通の目的(戦時中など)がある場合をのぞき、少なかれ多かれ人々に不満があって当然である。その上でどうすべきか。私は、アリストテレスの言葉「政治の形態は、専制君主制と、寡頭制(少ない数の集団指導制)、デモクラシーの三つ。それぞれいいようで欠点がある。続けていくと最後には危機に陥る」が思い出したが、著者は代表制の改革や市民参加の新しい仕組みなどを提案し、あくまでも民主政治の再生を訴える。

これからの民主政治を考えさせられる1冊である。
人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)
山田 風太郎

徳間書店 2011-11-02
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古今東西、著名人の死に様を纏めたマニアックな本。全4巻で、本巻では10代~40代で亡くなった方を納めている。

アンネ、ジャンヌダルク、ジェームス・ディーン、キリスト、坂本龍馬、アレキサンダー大王、マリリン・モンロー、ガガーリン、モーツァルト、太宰治、芥川龍之介、ジョン・レノン、プレスリー、ケネディ、聖徳太子、織田信長などなど。

自分の年齢で亡くなった人を見て、自分より若くなくなった人を見て、感慨深くなると共に、いくつまで生きるかよりは何をしてどう死ぬかが人生であることを痛感させられる。
アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)
岸見 一郎

ベストセラーズ 1999-09
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今、ホットなアドラー。本書はアドラーの経歴や著作など人物像、アドラー心理学の理論や育児・教育論(アドラーはパーソナリティだけでなく、子供の教育についても深く研究している)など、入門書とありながらアドラーについて一通りの知識を得られる。「嫌われる勇気」のように興味そそらるようにエッセンスを抽出した本もマーケティング的にはありだと思うが、そのような本だけでは本質を得られないと感じた。

例えば「嫌われる勇気」では”他人の課題”を説明し、他人を気にしない自立の必要性を諭す。一方で、アドラーは他者貢献や他人への信頼について言及しており、決して個々が独立して生きていけるわけではなく、他人と関わらなければ生きていないことを言っている---「嫌われる勇気」だけを読んだ人の感想は、他人と境界を作るべきと捉えた人が多かったので、気になっている。

ルポ 介護独身 (新潮新書)ルポ 介護独身 (新潮新書)
山村 基毅

新潮社 2014-06-16
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ある日、突然やってくる”介護”の現実。そこには同じ大変であっても、子育てとは違った、悲惨の現場が多い。本書ではさらに、孤立しやすい独身者による介護にスポットを当てている。

様々なケースの介護の現場を紹介しており、その重いリアルに、介護を経験してい者としては今まで考えたこともない、あるいは浅はかだったと痛感させられる点多々。当然ながら介護する・される側それぞれの事情や生活があり、単純に介護と言っても千差万別であり、本書を読んだからといって解決策がすんなり出るものではないのは事実だが、迫られていない時にこそ、読んで考えておくべきと感じる。

本書は独身者が介護をする場合の孤立を主題にしているが、孤立という意味では夫婦間の介護でも、あるいは家族から押しつけられている場合などでも発生し、必ずしも独身者に限らないのではないかと感じた。むしろ、独身者が介護される側に回ってからの方が切実なのでは?
5歳までに決まる!才能をグングン引き出す脳の鍛え方・育て方5歳までに決まる!才能をグングン引き出す脳の鍛え方・育て方
成田奈緒子

すばる舎 2010-05-20
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専門家の著者が言うことなので、いろいろ参考になることが書いてあるように感じるが・・・いくつか書かれていることに疑わしい点、誤りがあり、このまま読んで信じていたら、イソップ童話の"ろばを売りに行く親子"になると感じた。

例えば、”「残しちゃダメ」で摂食障害になることも!?”と言って残すことを母親に怒られ食事が恐怖となった子供の例を紹介しているが、それがどれだけ発生していることなのか、そもそも因果関係を考慮しているのか。偏食を是とする主張には、大いに疑問が残る。

そしてもう1点、早寝の根拠として"成長ホルモンの分泌は夜11時頃から午前2時頃にかけてみられますが(略)”としているが、これは典型的な都市伝説である。そもそも成長ホルモンは1950年代に高橋康郎氏が発見したもので、成長ホルモンの分泌は決まった時刻ではなく寝入ってからの時間が影響するという報告をしているのだが、その中で寝入った時刻が遅かったときに通常よりも成長ホルモンの分泌が少なかったため、(有意な差がないにもかかわらず)特定の時刻に分泌すると後生の人間が解釈して、広まっていったものである。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC297368/

これらから、著者はどこまで専門家としての知識があるのが、正直疑わしい。