Yuki: 2014年5月 Archives

全身がん政治家全身がん政治家
与謝野 馨 青木 直美

文藝春秋 2012-06-22
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こんなにすごい人だったのか。これを読んでの、素直な感想である。

与謝野氏は、39歳の初告知から35年間で4つのガン、3度の再発を経験しつつも、閣僚など政治家として要職をこなしてきたという。中でも圧巻は、平成21年8月の麻生内閣解散に伴う選挙。全身麻酔の手術から1日も経たず、点滴のまま選挙カーで演説をしていたという。並大抵の気力、信念でなければなしえないだろう。

ガンの闘病記としても、客観的に病気を見つめ、医師を信頼し、腹をくくる態度は、敬服に値する。35年間も戦っているだけあり、ガンは39歳の初告知の時代はガン=死だったが、今では直る病気という言葉に重みを感じる。

以下、備忘録まで。
古代ギリシアの哲学者・アリストテレスの思想の中に、いい文章があります。
「政治の形態は、専制君主制と、寡頭制(少ない数の集団指導制)、デモクラシーの三つ。それぞれいいようで欠点がある。続けていくと最後には危機に陥る」と。
 たとえば、デモクラシーを続けると、民衆の言うことばかり聞くようになります。(P.195~)
経済学は人びとを幸福にできるか経済学は人びとを幸福にできるか
宇沢 弘文

東洋経済新報社 2013-10-25
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経済学というが、内容はほとんど歴史や思想に関するものが多く、哲学に近い。ベトナム戦争や環境破壊など、激動の時代において負の側面を多く見てきたからであろう、自然環境や子どもの成長を社会的共通資本と捉え、歴史も踏まえたマクロの視点に心の深さが感じられる。反面、21世紀の現代において、解となるヒントが見あたらなかった。例えば、化石資源に対する竹の偉大さを述べていたりするが(P.187)、エネルギーの観点では全く代替しえないので、論点が見えない。また、各エッセイを集めてきたからであろう、同じ内容が繰り返されていたり、読む者にとって話が見えにくいのもきになった。
改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める
尾山大輔 安田洋祐

日本評論社 2013-03-19
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コンソル債(永久債)の割引現在価値は、ラーメン1日あたりの需要関数はD(p)=400-1/2×p(ただし0≦p≦800)とすると利潤を最大化するために1杯の値段をいくらにすべきか、などなどいろいろな例題に対し、解法・解説が続く。興味深いが、テイラー展開など、明らかに高校数学を超えるものもあり、久しく数学と疎遠な身としては・・・ちと辛い。
世界の特殊部隊作戦史1970-2011世界の特殊部隊作戦史1970-2011
ナイジェル カウソーン 友清 仁 Nigel Cawthorne

原書房 2012-12-07
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文字通り1970年から2011年オサマビンラディン暗殺まで、主に米英特殊部隊の作戦を31収録する。中には映画化された「ブラックホーク・ダウン」や、本「アフガン、たった一人の生還」になっている話なども含まれていて、1つ1つは短いものの、内容は濃い。

とても残念なのが、飛行機の名前や単位など、誤りが多い。かなりの頻度で遭遇するため、読む者の腰を折る。
飛行機技術の歴史飛行機技術の歴史
Jr.,ジョン・D. アンダーソン Jr.,John D. Anderson

京都大学学術出版会 2013-12-18
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ライト兄弟からジェット機まで、飛行機技術の歴史が凝縮されている1冊。少々効果だが、イラストや写真も多用されていて、専門の知識がなくても興味あれば十分堪能できる。

飛行機にロマンを感じる人なら、間違いなくお薦め。
論文捏造 (中公新書ラクレ)論文捏造 (中公新書ラクレ)
村松 秀

中央公論新社 2006-09
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ネイチャーやサイエンスに数多の論文を出し、ノーベル賞まで有力視されていたベル研究所のシェーン。本書ではその捏造があばかれていく過程だけでなく、なぜ科学誌や論文の共同著者、ベル研究所誰しも見逃してきたかを考察する。

今読むと、昨今騒がれているSTAP細胞の小保方氏問題と非常に似通っていることにハッとさせられる。

・本人以外、誰も追試に成功せず、「神の手」とまで言われる。
・上司含め、だれも実験結果(サンプル)を確認していない。
・実験ノートがない(ベルでは、内規で実験ノートをつけ、かつ外部持ち出しを禁止していたためこれだけで就業違反。ここの厳しさは理研と異なる)。
・シェーンは「(取り違えと主張する)いくつかのミスを犯した」、「私はこれらすべてのデータをたしかに測定した。これらは本当に起きたことなのだ」と主張。


本書では科学者の捏造に関して深い考察をしているが、今回のSTAP問題にほとんど活かされていないし、またはこうした過去の事情を知らずに論点のずれた意見している人が多いことがわかる。
例えばシェーンに対する調査では逃げ道を作らせないよう調べぬいて本人との面接に挑んでいるのに対し、STAP問題に対する理研の対応はそこまで至っていない。
また、STAP細胞は本当にあるかもしれないということで捏造問題を無視、または擁護する主張。普通に考えれば、STAP細胞の有無と捏造は別問題なはずだ。

シェーンは本人のアイデアを、いつか他の科学者が追試で成功させると信じていたのではないかと本書では言っているが、STAPの小保方氏も同じように思える。

マッキンゼー―――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密マッキンゼー―――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密
ダフ・マクドナルド 日暮 雅通

ダイヤモンド社 2013-09-21
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マッキンゼーの設立から今日まで、成長や変遷の経緯を時のMD(マネージングディレクター)を中心に纏めている。”秘密”という日本の副題から実際の案件の詳細や裏話を期待させられるが、どちらかというと歴史的な話なので原題の”Story”の方が近い。また、大前研一氏についてもマッキンゼーとしての評価が詳しい。

100年単位でマッキンゼーの歴史を知ることで、経営の複雑さを考えさせられる。即ち、昔はクライアントの業績を躍進させていたものの、今では必ずしもそうなっていない。ではなぜ、企業はマッキンゼーを雇うのか---フォーチュントップ100の2/3がマッキンゼーのクライアントだという。本書ではその解が、マッキンゼーを雇うことがステータスであり企業のブランドイメージであるという。だからこそ、BCGやアクセンチュアなどと違い高額フィーを維持し続けているのだろう。

最後には、ITに乗り遅れ苦戦を強いられていること、クライアントのためになっているのか疑問を呈して終わる。
単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)
池谷 裕二

講談社 2013-09-05
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自分の意志はどこまで自由か。本書では高校生への講義という形で、脳の様々な仕組みを解説する。

物事を判断する前に脳は決断している、好みは操作される、がんばれと応援されることで握力測定の値は上がる、などなど、意志とは無関係に記憶や体の反応が変化することを示されると、そもそも自分の言動はどこまで自らの意志によるものか、懐疑的になる。

全体的にユーモラスに書かれており、興味本位で読んでも楽しめる。
10年後、金持ちになる人 貧乏になる人10年後、金持ちになる人 貧乏になる人
田口 智隆

廣済堂出版 2013-02-19
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お金の使い方を消費・浪費・投資で考える、新しい物を買う前に今ある物を捨てられるか自問する、誘われて飲むのではなく誘って飲め、などお金の使い方で参考になる点は多い。

一方、個々の中身にはいると表層的と感じてしまう点もあった。例えばファーストフードとオーガニックのコーヒーと野菜サンドイッチを比較している場面で、前者は単に「消費」だが後者を選ぶ人が健康を考えているのでそのお金の使い方は「投資」としているところ。世間一般でオーガニックは言葉で釣っているだけということから実はオーガニックが害ということもあるので、そう短絡的に結論づけるのは疑問。