Yuki: 2011年9月 Archives

「情報創造」の技術 (光文社新書)
「情報創造」の技術 (光文社新書)三浦 展

光文社 2010-05-18
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強烈なインパクトあった「下流社会」の著者のアイデア本とあり、非常に興味深い内容の1冊。著者によると、これからの社会に生き残る力、他者と差別化できる能力が、即ち情報創造力とのこと。その必要性、方法、情報の収集と整理(なぜか方法提示の後)、そして仮説の立て方と続く。

情報創造の方法にある、著者のオリジナル(と思われる)フレームワークが非常に斬新だった。短期、中期、長期で時間軸を分け、それぞれ事象を火薬と引き金のマトリクスにする。(P.101)

いろいろおもしろい点、参考になる点は多々あったが、著者への批判に対する反論(それも主観的な)が少し読み手を興ざめさせてしまい、残念。こういう類の本、せっかくなので、そのアイデアの中身で勝負してほしかった。
132億円集めたビジネスプラン
132億円集めたビジネスプラン岩瀬 大輔

PHP研究所 2010-11-16
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ライフネット生命・副社長の肩書きで有名な著書。一見、タイトルからは錬金術のような類を想像してしまう可能性もありそうだが(私だけか?)、至極まっとうな1冊。新会社の構想から、実際に出資を募る段階で説明された新規生保のリスク、対象とするマーケットといった内容をロジカルに書かれている。とにかくそのシンプル・明快な説明は心地よく、ライフネット生命のファンが増加している原点が垣間見える(社長、出口氏の魅力もあるがここでは割愛)。

前半の論理的な展開と変わって、後半の人集め・組織作りの説明ではパッション(情熱)が濃く出てくる。目指すべき目標、意志の強さといったものの大切さもしみじみ感じさせられる。論理と情熱のバランスが感動的ですらある。

BCG出身でもある著者だけあり非常にロジカルに書かれており、戦略立案の参考はもちろん、人生観を考えるきっかけなど価値ある1冊。
アメリカ人はなぜ肥るのか (日経プレミアシリーズ)
アメリカ人はなぜ肥るのか (日経プレミアシリーズ)猪瀬 聖

日本経済新聞出版社 2010-11-10
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標準体型の方がマイノリティであるアメリカ。アメリカ=大ボリュームというイメージであるが、著者によると昔はアメリカもさほど多かったわけではなく、もう少しほしいという欲望に答え、また様々な営利目的(お得感、客単価の増加)の結果、肥大化していったという。アメリカで起こった健康志向とその反動によるメガバーガー的な高カロリー食の好調など、まさに日本でも同じことが起こっている。肥満率で言えばまだ余裕があるが、明日の日本の姿かもしれない。

この辺は個人の自由(何をどう食べるか)との兼ね合いで難しいテーマでもあると思うが、低所得者ほど肥満が多いという数値からは、個人の責任だけに課すことは酷に思えるし、合成の誤謬ではないが、社会全体でも考えるべきことだろう。肥満者用に救急車も車体を強化しなければならないアメリカの事例、笑い事のようだが笑えない。
その英語、ネイティブはカチンときます (青春新書INTELLIGENCE)
その英語、ネイティブはカチンときます (青春新書INTELLIGENCE)デイビッド・セイン 岡 悦子

青春出版社 2010-02-02
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中学・高校の英語からは、またその後の英語学習でもネイティブとかなり密なコミュニケーションを持ち続けなければ与り知らぬであろう、微妙なニュアンスが解説されている。本書ではよくありそうな表現に対し、複数の英語表現を掲載とともに、そうしたネイティブの受け取り方を解説。例えば相づちを打つのに、単なる"I see." よりは "Oh, I see." と"Oh" 一つで上品になる(P.21)など、なるほど的なものが多い。

ただ、英語を仕事から生活まで全て、母国語のように習得する必要のあるようなごく一部の人を除き、本書は読み物程度の位置づで十分だろう(むしろ、気にする余り会話を躊躇する方が問題)。その理由として、以下があげられる。

1.通常の会話は一語で終わらない。(相手の反応でフォロー可能)
2.相手も、ノンネイティブとの会話であれば、いくらか理解を期待できる。(逆の立場を想定すれば納得できるであろう)
3.中には、使用頻度が疑問なものもあり。(娯楽的な読み物としては良いが、誰がどんなシチュエーションで「お腹が出てきたんじゃない」「彼と関係を持ったの?」などを使うのか)

その他、第1刷ではP.125で日本語に対する英文例が間違ったものを掲載している(具体的には英文のみ、P.12の内容が重複して掲載されている)。もしかしたら最新の刷では修正されているかもしれないが、そもそもこのような、単純な誤植のまま出版されているのをみると、内容全体に対して懐疑的にならざるを得ない。
SEからコンサルタントになる方法
SEからコンサルタントになる方法北添 裕己

日本実業出版社 2008-01-31
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内容は簡潔でわかりやすい。のだが、タイトルと内容のギャップが気になる。メソドロジーやフレームワークの説明、ケーススタディの解説などは一切なく、転職のための内容は後半に少しあるだけなので、”コンサルタントになる方法”というよりは、(要件定義・PMを担当する)上級SEへの架け橋と、コンサルタントとは何かを紹介する本といったところ。また、また、コンサルタントの分類は前半でしているのだが、具体的な解説(例えば報酬体系)は、全体の一部分(おそらく筆者の環境のみ)を書かれている。パワーポイントの使い方ではフォントサイズなど、少し細かいのも気になる。(おそらく、タイトルでこの本を取った人はこういうことを学びたいのではないと思う)。
原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)
原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)有馬 哲夫

新潮社 2008-02
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原発のイメージ作りがどのように作られてきたか、CIAと政治への権力欲強い読売新聞社主・正力の駆け引き、ディズニーの利用などを公開されたCIA資料を基に明かされる。

2度の原爆投下、第五福竜丸事件と原爆・水爆共に初の被爆者を出した日本で、なぜほど原子力が夢のエネルギーとしてもてはやされたのか。1人の日本人とアメリカCIAの思惑が緻密に描かれている。ディズニーも巻き込んだアメリカのイメージ醸成、読売新聞・日本テレビとマスコミを思うがままに操作する正力。

テレビなどマスコミはおろか、ディズニーランドでさえプロパガンダとして機能していたという事実。原発賛成、あるいは反対と感情的に言うは易し。どちらにせよ、まずは過去の歴史を知ることは必須であると痛感した。と同時に、今まさに報道されている内容もどういう意図を含んでいるか、考える教材にもなる。
観想力 空気はなぜ透明か
観想力 空気はなぜ透明か三谷 宏治

東洋経済新報社 2006-10-20
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主題の”空気はなぜ透明か”はアクセンチュアの採用面接で三谷氏が課したお題とのこと(P.1)。発想力や、はてはなぞなぞのように捉えてしまいそうだが、アクセンチュアの面接課題、かつ三谷宏治氏の著書とあり、そこには至って普遍的で論理的な展開が成される。

常識に囚われず、本質を見抜くか。著者はそのためのポイントを「視点」、高さの「視座」、見通し方の「切り口」と説き、その力を「観想力」と名付けている。前半でそのポイントの説明や各分野の(将棋の羽生名人など)言葉を引用、後半には種々のビジネス成功モデルのケーススタディ、最後に2×2のマトリクスツールの解説と続く。

難しいことを簡単に、深く、面白くまとめられた内容は感銘の限り。なぜもっと早く手に取らなかったのだろうと思う。

余談ながら、世間一般ではクラウゼヴィッツ的な理論はなかなか理解されない。しかし、正しい視点を持つトレーニングの1つと記された”無定形に知識ベースを拡げる --- 乱読のススメ”(P.179)のような論調は、クラウゼヴィッツ理論を頼る者としては嬉しいと共に心強い。
新TOEICテスト 直前の技術—スコアが上がりやすい順に学ぶ
新TOEICテスト 直前の技術—スコアが上がりやすい順に学ぶロバート ヒルキ ポール ワーデン ヒロ前田 Robert Hilke

アルク 2006-12-21
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セミナー(「セミナー: TOEIC速効セミナー/日経アソシエセミナー」参照)のテキストとして配られた1冊だが、3~4年前から気になっていた(結果、ダブらなくてすんだが)。

長くTOEICを研究した氏によるTOEIC解説本。問題の分類、出題者の意図、解答のテクニックがPart毎に掲載されている。問題の分類ができれば効率的な学習ができ、問題の意味・出題者の意図が理解できれば惑わされずになり、解答のテクニックを知れば時間に追われなくなる。発行は5年前と若干古いのだが、今でも十分役に立つ。例えば、ハングル(TOEICの受験者は大半が日本人と韓国人であり、双方の弱点を狙った問題が出題されるとの説明が前述のセミナーであり)でコピーとコーヒーは発音が似ているため、その間違いを狙った問題が出される(P.19)は、今回2011年9月11日の第165回TOEIC公開テストにも出題されていた。

なお、当然ながら練習(セミナーでは氏は”Practice”を使用)は必要性も説かれており、一読で点数が上がるというものではない(それができれば誰も苦労はしない)。
ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)
ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)立花 隆・佐藤 優

文藝春秋 2009-10-17
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立花隆氏、佐藤優氏による推薦図書リストとそれを元にした対談。とにかく、両氏の知識の広さ・深さにただただ圧倒される。いかに自分の知識が偏っていて無知か、教養とは何か、思い知らされる。歴史・宗教・政治・科学・・・etc.マンガも含めて、それぞれ200冊、計400冊の書(シリーズ物は1冊としてカウント)をリストアップ。

頭のいい人は何を知り何を考えているか、まずは自分の立ち位置把握に、読書のスタートとして必読の1冊(大学生向けに書かれているところもあるが、恥ずかしながら自分が大学生の時にこの本を読んでも感じるところは少なかったと思う)。
Three Cups of Tea: Young Readers Edition: One Man's Journey to Change the World... One Child at a Time
Three Cups of Tea: Young Readers Edition: One Man's Journey to Change the World... One Child at a TimeGreg Mortenson David Oliver Relin

Puffin 2009-01-22
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NYTimesで長らくベストセラー・トップ10にランクインされていた本の、子供向け版。そのため平易な文法、語彙(本書最後にGlossary<用語集>あり)で書かれているため、英語が得意でないNon-Nativeにも最適な1冊となっている。

とある登山家Greg Mortensonが、K2の麓の村々の実情を知るや、文字通り人生をかけてパキスタン・アフガニスタンに学校を建てていくストーリー。日本人にとってごく当たり前の教育が、世界が違えば(とくに、本書で登場する地域の女性にとって)如何に当たり前でなかったか気付かされる。私財を投げ売り、ただでさえ偏見のあったイスラムに対する支援に9.11といった逆風を乗り越えた主人公に敬服すると共に感動させられる。9.11で冷静さを失ったアメリカも、”教育が平和を作る”という本書の言葉に、きっと感銘を受けたに違いない。

後半に掲載されたテロの恐怖もあったパキスタン・アフガニスタンに行ったり、国内(米国)でも講演等で飛び回り留守の多かった主人公を父に持つ娘のインタビューも、寂しさを共感すると共に、立派な考えを持って育っていることから父親の信念の大切さも気付かされる。
A Guide to the Business Analysis Body of Knowledge (Babok Guide)
A Guide to the Business Analysis Body of Knowledge (Babok Guide)Iba Iiba Kevin Brennan

International Institute of Business Analysis 2009-03
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要件分析(要件定義)を知識体系にまとめたガイドブック。PMBOKはだいぶ世間一般に知れ渡り、Project Management は体系だった管理が主流になりつつあるが(うまく回っているかは別として)、要件定義のフェーズはそれに比べて1世代も2世代も前の進め方ではないだろうか。即ち、完全にスキルが属人化しており、またそのノウハウも個人が四苦八苦しながらベスト解を模索している段階と言えよう。

ここで簡単にBABOKを紹介すると、PMBOK同様に知識エリア(knowledge area)を定義しており、各エリア毎にタスク・テクニック・インプット・アウトプットを定義している。

自らの体験を鑑みても、全容がわからず闇雲に仕事をしていたことが多いだけに、参考となる部分が多い。要件定義の漏れ・抜けがどれほど後続タスクに響くか、そのためにプロセスの全容を把握することが重要なのだが、例えば本書の各タスクなどは、流用してチェックシート化することもできよう。Project ManagerがPMBOKの知識必至なのと同様、業務分析・要求定義・要件定義をする者にとって、必読の1冊。

本日の1冊: BABOK超入門

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BABOK超入門
BABOK超入門広川 智理 日経コンピュータ

日経BP社 2011-03-21
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要件定義の知識体系、BABOK自体がまだ世間一般に知れ渡っていないため、その解説書も非常に少ない(7月に購入した時は、本書と他にもう1冊くらいだった)。

本書はBABOKを「30日で完全マスター」という触れ込みの入門書で、文字も空白も大きく、単に読むだけなら1~2時間もあれば十分だろう。その中に、エッセンスを凝縮している。BABOK自体はPMBOK同様に知識体系書なので、それ自体に順序性がなく、なかなか読み解くには骨が折れるのも事実。本書で流れを把握し、必要に応じて原書を参照するという使い方が向いていそう。

まだマイナー=高い(内容の割に1800円)のをどう評価するか、分かれ目となりそうである。