科学: 2012年10月 Archives

化学物質はなぜ嫌われるのか ‾「化学物質」のニュースを読み解く (知りたい!サイエンス 33)化学物質はなぜ嫌われるのか ‾「化学物質」のニュースを読み解く (知りたい!サイエンス 33)
佐藤 健太郎

技術評論社 2008-06-25
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子供の頃、化学物質は害、自然の物がいいと言われてきた。たぶん、これが世間一般の感覚だろう。事実、食べ物で人口調味料・添加物が含んでいる物と含んでいない物があったとき、敢えて前者を取る人は皆無だろう。しかし、そもそも化学物質とは何だろうか。自然界にも即効性のある毒物から、発ガン性物質さえある(※1)。また、農薬未使用の方が、アレルギーが起きやすいという話もある(※2)。化学物質の何を恐れ、そもそも何を知っているのか。

本書は、ダイオキシン、界面活性剤、着色料、保存料、DDT、アスピリン、、などなど薬品から食品添加物などさまざまな騒がれたもの・問題視されるものについて、表層的な問題と実態を考察する。そして、3つの重要な示唆を与えてくれる。

まず1つは、普段何気なく口にしているものでも毒となるものはたくさんあるということ。カフェインは5g、塩は200gとのこと。また、発ガン性という意味では着色料よりも、アルコールの方が高いとのこと。(P.94~96) そういえば、アメリカで水を大量に飲んだ人が水中毒で死亡した事故があったが、何かの物質が毒かどうかというのは量にも依存する(余談だが、これは放射線も同様だろう)。
次に、短絡的な思考(添加物=悪)は、得てしてマイナスになると言うこと。例えば添加物バッシングによって保存料(ソルビン酸)が嫌われると、保存料となのつかないグリシンや酢酸ナトリウムを用いるようになり、かつそれらは効果が弱いため大量に使うようになっている。(P.111)

最後に(これは化学物質うんぬんに限定されないが)リスクは比較する物、即ち1つの物で善悪決めるものではない。

冒頭で、仏教説話の「群盲象を撫でる」という教えが心に残る。

※1 例えば、HERPという発ガン性を評価・順位付けした以下のドキュメントでは、多数の天然物が掲載されている。
※2 近畿大学農学部講師の森山達哉氏らのグループが農薬使用よりも無農薬リンゴの方が「口腔アレルギー症候群」になりやすいことを発表している。

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