歴史: 2011年4月 Archives
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) | |
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太平洋戦争における日本の敗戦を、物量などは一旦抜きに戦略を主眼として、ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル、インパール、レイテ海戦、沖縄戦と6つの戦闘にポイントを置き考察する。米軍と日本軍の比較から真理、即ち戦略や組織としての失敗を追求していくのだが、今に通じる普遍的な内容で、読みながら現代の話と錯覚する。
まず米軍との比較だが(前述通り物・人の量は抜きに)、以下P239の表(抜粋版)のようにまとめられている。大きく戦略、組織に分け、そこから1つ1つ分析されているが、現代でも思い浮かぶ事象がちらほらある。
日本軍 米軍
戦略 戦略策定 帰納的(インクリメンタル) 演繹的(グランドデザイン)
戦略オプション 狭い 広い
技術体系 一点豪華主義 標準化
組織 構造 集団主義 構造主義
学習 シングルループ ダブルループ
評価 動機・プロセス 結果
最終的な結論として、自己革新組織の必然性を問う。
組織が継続的に環境に適応していくためには、組織は主体的にその戦略・組織を環境の変化に適合するように変化させなければならない。(P.264)
即ち、日本軍は日露戦争の勝利に酔いしれ、その時代の戦略を盲目的に信じ、官僚的な組織で自らの革新を起こせなくなっていた。ところで、
およそイノベーション(革新)は異質なヒト、情報、偶然を取り込むところに始まる。官僚制とは、あらゆる異端・偶然の要素を徹底的に排除した組織構造である。(P.273)
は身近で思い当たるところも多い。