歴史小説: 2013年4月 Archives
竜馬がゆく〈8〉 (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋 1998-10-09 売り上げランキング : 4121 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
線香花火。
読後感を一言で言い表すと、そんな言葉が思い浮かんだ。大政奉還を考案するも、土佐藩、薩長、それぞれの思惑で綱渡りが続く中、いよいよ維新の夜明けが見えてきた。そんな最中、ふっと竜馬は居なくなる---暗殺される。竜馬は明治政府の人事素案も考えていたが、そこに自身の名前は書かず、ひょっとして、結末を知っていたかのよう。
また、小説の終わり方も心憎い。これだけの長編、竜馬が居なくなった後も史実なり何なり、余韻を引っ張ることはいくらでもできたであろう。敢えてそうせず、すっぱり終わらせる---読者の中で物語が続くことを知っているかのように。
竜馬がゆく〈7〉 (文春文庫) 司馬 遼太郎 文藝春秋 1998-10-09 売り上げランキング : 7639 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
単なる剣豪、変わり者だった竜馬が、倒幕に向かって駆けてゆく。いや、倒幕と言うよりも、むしろ新しい日本の創造にというべきだろうか。事実、倒幕を唱える者は竜馬以外にも居たようだが、議会の制定、法治国家など、倒幕の先を見ていた者は皆無だった模様。
薩長同盟は着々と倒幕に向けて力を蓄えていき、自ら起こした海援隊も幕府相手に火を噴き始める。かつて脱藩した土佐も巻き込み、さらに倒幕と血気盛んな連中の中にあって大政奉還という奇手を考え出す。プライドや自分の考えに固持せず、身内・世に迎合することなく、目指す世界へ向けてひたすらな実直さこそ、竜馬が現代でも人々を魅了する所以か。
余談だが、船に見せられ、手に入れた際には子供のように喜び、沈んだり没収された際には家族を失うように悲しむ姿に共感を覚える。自分の場合、差し詰め飛行機だろうか。。。