歴史小説: 2010年10月 Archives

坂の上の雲〈4〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈4〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-01
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おすすめ平均 star
star通勤電車の中で・・
star組織とは何か?人材とは何か?
starあの乃木も司馬にかかれば・・・・・

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4巻では旅順から出てきた艦隊との黄海会戦、陸軍の遼陽会戦、及び膠着している旅順攻略と、バルチック艦隊の出航が記述。国力が乏しい中、当時の日本の字のごとく必死な想い、決意の重さは決して今の時代では計り知ることができない。逆に、日本・ロシア問わず、うまく立ち回れなかった箇所を、組織・人間などの視点で冷静に記述している内容は現代にも通ずるものが多々あり、考えさせられる。

また、そうした中で渦中の人物らが引用する歴史についても興味深い。
・黒木は遼陽作戦として義経の鵯越(ひよどりごえ)と理解。(P.128)
・うかうかすると、乃木はグルーシー将軍になる」(P.405~)
ナポレオンがウォーターローで英普連合軍との戦ったとき、別同隊を率いていたのがグルーシー将軍。彼は愚直という以外に取り柄のない将軍で、柔軟な頭脳と決断心を持っていれば、ナポレオンの運命は違っていたかもしれない。

もちろん、小説としても読む者を惹きつけるおもしろさは、なるほどこれだけ読まれるのも納得である。

以下、個人メモ
・長岡外史はのちに飛行機に着眼したり、伝書鳩を鷹でやっつけようとしたりしたところを見ると、飛ぶものが好きなのかも知れなかった。(P.212、気球を活用するシーンにて。)
坂の上の雲〈3〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈3〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-01
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おすすめ平均 star
star読むほどに止まりません。
star懸命に生きるということ
star正岡子規の、《業績》。

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迫り来るロシアの脅威、それに立ち向かった日本。様々な事象が、奇跡のように、しかし必然としてあった。48%が軍事予算という驚異の国家予算とそれに耐えた当時の日本国民、旧幕府の人間や維新の功労者でも容赦なく首切りで組織の刷新化を計った権兵衛、切腹覚悟で議会を欺き戦艦を発注した西郷、今昔東西の兵法を独学して30代にして日本の海軍の戦略を担った真之。物語としてのおもしろさは当然とし、心に強烈な印象を残す、現代でも生きる考え方が満載である。

以下、引用。

日清戦争の前、権兵衛がやった最大のしごとは、海軍省の老朽、無能幹部の大量首切りだった。(P.51)

少佐の真之を異例ながら昇格させて先任参謀にした。三十七歳の男が、日本の運命を決する海上作戦をひとりでになってゆくことになったのである。(P.215)

方針やら戦略戦術なりは、ふつう水兵に無関係なものとして知らされることがない。(中略)マカロフの統率方は、水兵のはしばしに至るまで自分がなにをしているかを知らしめ、なにをすべきかを悟らしめ、全員に戦略目的を理解させたうえで戦意を盛りあげるというやりかたであった。(P.326)
坂の上の雲〈2〉 (文春文庫)
坂の上の雲〈2〉 (文春文庫)司馬 遼太郎

文藝春秋 1999-01
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star明治時代
star雄大な明治魂の連鎖。
star明治人の明るさ

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清と日本の戦争が始まる。圧倒的に劣勢と思われながら、洋上では清海軍を撃破、陸上では難攻不落と言われた旅順要塞を1日で陥落する。列強に対する恐怖から、新しい日本を必死に作っていた時代の人たちに感銘を覚える。諸外国の先進事例・戦術について、必死に勉強し、それを実践で実行する姿は、第二次大戦の精神主義はおろか、現代の目先に目を奪われた政策とは明らかに違う。ーター・ドラッカーの「リーダーは他人が何を思うかではなく、正しいことを実施するべき」というのがまさに歴史を通して理解できる。

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