教養: 2012年11月 Archives

「常識」としての保守主義 (新潮新書)「常識」としての保守主義 (新潮新書)
櫻田 淳

新潮社 2012-01-17
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「保守主義」とは何か。政治のニュースでは数多く目にする言葉だが、意外にも答えにくいのではないだろうか。本書は自民党の機関誌に連載されていた内容だが、「保守主義」とは何かを非常に分かりやすく解説されている。

そもそも保守主義とは、エドマンド・バークという英国の政治家がフランス革命を前にして著した「フランス革命の省察」に端を発するという。旧いものを守る思想と理解していたが、そうではないと一蹴される。右翼やタカ派ともイコールではない。もちろん、左翼とも相容れない。特定の国や人種を排除する姿勢、ナショナリズムとも違う。伝統を尊びつつ、柔軟かつ大胆に新しいものを取り入れ、中庸を美徳とする。

後半ではレーガン、吉田栄作、ドゴール、チャーチルなど偉人達を紹介すると共に、保守主義の拠り所は歴史により違うこと、しかしながら、その中でも保守主義の普遍的な本質に迫る。こうしてみると、今の日本の保守主義の政治家は、保守主義で無い方も見受けられてくる。

興味深かったのが、「草食系男子の脆さ(P.60)」で、草食系男子の出現を国家の衰退の兆しとした高坂正堯(まさたか)著「文明が衰亡するとき」に出てくるヴェネチアの歴史を紹介している。即ち、人々がリスクを取って何事かをなそうとする精神が減退することで、国自体も衰亡する。正に今の日本を示しているようだ。