教養: 2011年11月 Archives

成川式文章の書き方―ちょっとした技術でだれでも上達できる
成川式文章の書き方―ちょっとした技術でだれでも上達できる成川 豊彦

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文章の善し悪しは、常套となる「型」を知っているか知らないかでだいぶ違ってくる。本書はそうした「型」毎に改善ポイントと悪い例・良い例とともに多数掲載されている。大抵は小学校の作文で一通りのことを習った後はなかなか文章を添削される機会も少ないので、そうした「型」(ルール)を知らない・忘れていることも多いだろう。事実、本書を一通り読んで知らないこともあった。

一例を挙げると、”37 カギカッコでくくった文章には句点「。」を打たない”。
悪い例(抜粋)
 ①「今日は雨が降った」。
   「今日は雨が降った。」
良い例(抜粋)
 ①「今日は雨が降った」
 ③花子は言った。「今日は雨が降りそうね」。
 ④「今日は雨が降りそうね」。花子は言った。
基本はタイトルの通り、悪い例、良い例の1番目だが、良い例の③④のように前後で文章が続くときは打つ、など。
※但し、”昔は閉じ括弧の前にも句点を打つことがあった”と記載の通り、市販の書籍でも句点が打たれている文は多い気がする。

いろいろ参考になった書籍だが、各種のルールで、例が具体例をあげるものの本質的でない印象を多々受けた(例えば、”一般に、慣用が固定していると認められるもの”<P.241>などは判断を読者にゆだねるよう受け取れる)。また、常用漢字を使用する(P.160)例として、”新製品の進捗状況”を悪い例とし、良い例に”新製品の進行状況”をあげるなど、一般的なビジネスの実態からは疑問の箇所もある。
数学的思考の技術 (ベスト新書)
数学的思考の技術 (ベスト新書)小島 寛之

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惜しい。タイトルがいかにも学術的で興味をひくものではないのだが、中身はわかりやすく(難解な部分もあるが)面白い。まずは目次を一部、引用する。

第1部 不安定な毎日を生き抜くための数学的思考
第1章 相手を自分の思い通りに動かすには
第2章 給料が上がらないのはなぜか
第3章 人に本音をいわせるテクニック
第4章 「だらしない人」の経済学
第5章 年金問題を数学から考える
第6章 協力って、大事?
第7章 不確実な世界における行動法則
第8章 勝ち組は、運か実力か
第2部 幸せな社会とはどういうものか
第1章 どんな経済、社会が望ましいか
第2章 今、コモンズを考える
第3章 デフレ不況への処方箋
第4章 伝統的な経済学の限界
第5章 お金より大切なものはあるか
第6章 私たちが暮らすべき魅力的な都市とは
第7章 人間の「不完全知」といかに向き合うか
第3部 「物語」について、数学的思考をしよう
~省略~

タイトルで手に取らせ、中身が薄っぺらい本ほど腹立たしいことはないが、本書は正反対。凡庸なタイトル(失敬!)と比べ、各章のタイトルは興味をそそられるではないか。そして、中身はもっと面白い。日経新聞に時折登場する、経済の解説やゲーム理論などをわかりやすく、論理的に解説されている。

例えば第1部 第2章から、リスクを取らなければ人並みの給料しか手に入らないことが証明される。その他、人々が衰退産業にしがみつく理由として「ダウ&ワーラン効果」を解説したり(P.84)、魅力的な都市の条件が普通に考えるのと正反対、狭くて古今の建物混在し複数の機能を持って人口密度があること(P.158、アメリカの都市学者ジェーン・ジェイコブスが調査・分析)、など目から鱗の話も。

終盤は村上春樹の世界観が出てきて、単に数学的世界だけではなく飽きないと同時に、複雑な世界観の思慮を要求する。