教養: 2011年4月 Archives

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)戸部 良一 寺本 義也 鎌田 伸一 杉之尾 孝生 村井 友秀 野中 郁次郎

中央公論社 1991-08
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太平洋戦争における日本の敗戦を、物量などは一旦抜きに戦略を主眼として、ノモンハン、ミッドウェー、ガダルカナル、インパール、レイテ海戦、沖縄戦と6つの戦闘にポイントを置き考察する。米軍と日本軍の比較から真理、即ち戦略や組織としての失敗を追求していくのだが、今に通じる普遍的な内容で、読みながら現代の話と錯覚する。

まず米軍との比較だが(前述通り物・人の量は抜きに)、以下P239の表(抜粋版)のようにまとめられている。大きく戦略、組織に分け、そこから1つ1つ分析されているが、現代でも思い浮かぶ事象がちらほらある。

              日本軍             米軍
戦略 戦略策定    帰納的(インクリメンタル)  演繹的(グランドデザイン)
    戦略オプション 狭い               広い
    技術体系    一点豪華主義         標準化 
組織 構造       集団主義            構造主義
    学習       シングルループ        ダブルループ
    評価       動機・プロセス         結果

最終的な結論として、自己革新組織の必然性を問う。

 組織が継続的に環境に適応していくためには、組織は主体的にその戦略・組織を環境の変化に適合するように変化させなければならない。(P.264)

即ち、日本軍は日露戦争の勝利に酔いしれ、その時代の戦略を盲目的に信じ、官僚的な組織で自らの革新を起こせなくなっていた。ところで、

およそイノベーション(革新)は異質なヒト、情報、偶然を取り込むところに始まる。官僚制とは、あらゆる異端・偶然の要素を徹底的に排除した組織構造である。(P.273)

は身近で思い当たるところも多い。
言葉はなぜ生まれたのか
言葉はなぜ生まれたのか岡ノ谷 一夫 石森 愛彦

文藝春秋 2010-07-13
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カラーイラスト多く、絵本のようにさらっと読めるが、内容はなかなか奥が深い。

研究結果として、
・ことばの4条件
・上記4条件のうち、いずれか1つをもつ動物の紹介
・ことばの発祥から現代までの歴史
がロジカルにまとめられている。主題であることばの理解もさることながら、疑問→仮説→検証のステップの実例として、物事を単純化して表現する例として、様々な視点で参考になる。

シンプルだけど奥が深い、奥が深いけどシンプルな1冊。