教養: 2010年11月 Archives

自立が苦手な人へ―福沢諭吉と夏目漱石に学ぶ (講談社現代新書)
自立が苦手な人へ―福沢諭吉と夏目漱石に学ぶ (講談社現代新書)長山 靖生

講談社 2010-06-17
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仕事の能力もない結婚もできない・・・の方に目が行ってしまうが、中身は至ってまじめそのものである。福沢諭吉と夏目漱石は名前を借りているだけと思いきや、「学問のススメ」や「坊ちゃん」「心」などの経緯や裏事情、エッセンスから両者の個の立て方(=自立)の考え方、そこから我々が学ぶべきを示している。

また、個々の自立と共に競争の原理から弱者と強者の関係は必然的に生じるが、そうした弱者・強者と Community 内での個々の自立といった、一見矛盾する関係についても提言される。

社会・他人、環境・・・非難囂々するは安し、だが人を呪わば穴二つで、自ら思考をする大切さ、そのための学びの必要性を痛感させられる。

以下、読後メモ。

「自ら考える」という労力をリストラしてしまうと、次は自分自身がリストラされることになる。というか、思考のリストラは自分で自分そのものをリストラしていることに他ならない。「我思う、故に我あり」が近代の出発だとすれば、思索のないところに、その人はいないのである。(P.150)

福沢によれば、<独立の気力なき者は必ず人に依頼す、人に依頼する者は必ず人を恐る、人を恐るる者は必ず人に諂う(へつらう)ものなり。常に人を恐れ人に諂う者は次第にこれに慣れ、その面の皮鉄の如くなりて、恥ずべきを恥じず、論ずべきを論ぜず、人をさえ見ればただ腰を屈するのみ>(以下、略) (P.191~)