フィクション: 2010年1月 Archives
W/F ダブル・ファンタジー | |
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中央公論文芸賞など3つの文学賞を受賞、新聞各紙にも広告・書評等掲載されていた1冊。生々しい描画でありながら、清涼感すらあり、濃いストーリー展開でありながら空虚感漂うエンディング、最後まで一気に惹きつけられる。タイトル「ダブル・ファンタジー」の通り、どんなにわかり合ったつもりでも男女はそれぞれ別のファンタジー(空想・幻想)を見ているかのように暗示しているとおり、男性の目からは主人公・奈津の思考・生理的な感覚は理解できない(体験できない)。また、登場人物の男性達はどことなく違和感があり、その違和感を突き詰めると少女漫画に行き当たる(登場する男達が女性のような思考であったり、過度なまでに乱暴な言動を全面に出すようことで男らしさを表す)。良くも悪くも女性作家ならではの作品と思う。
外科医・百田滴は、結婚十年目に妊娠した。喜びも束の間、彼女はがんの再発を知る。その事実を胸に秘め、売れないカメラマンを続ける夫に苛立ちをぶつけた。深夜に心の深淵を覗き込んでは身を強ばらせた。だが、滴は独りで生きてきたわけではなかった。暖かな愛情が、震える魂をそっと包んでくれた。ひとりの女性の愛と覚悟を描き、生きることの意味をあなたに問いかける、傑作長篇。(「BOOK」データベースより) | |
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新たに生まれる命と迫り来る自らの死、医者の道を諦め売れないフリーカメラマンの夫と悲壮な決意で医者でもある滴、過去と現在といった対局の描写が主人公の状況をより際だたせている。メインとなる滴のストーリーを過去の話として位置づけ、現在(子供、夫の変貌)のストーリーを交えることで、読み終わったときには悲劇の中にも清々しい気持ちが残る。