ビジネス書: 2012年10月 Archives

「困った人」の説得術「困った人」の説得術
出口 知史 伊東 明

日本経済新聞出版社 2011-08-09
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”困った人”を評論家クレーマー、職人クレーマー、思考停止クレーマー、現実逃避クレーマー、近視眼クレーマーに分類し、それぞれについて対策を述べている。一見、それぞれ適当に名付けていそうだけれどうまく分類されており、多数がやっかいと思う人は上記のいずれかに属するのではないだろうか。著者はコンサルティングファームに属していたとなるほど、その分類の納得感(MECE)に頷く。

それぞれに対する分析も的を得ていて、チャレンジしてみよう(そんな人達に遭遇しないのが1番なのだが)と思わせるとともに、そうした人達を如何に持ち上げるか書かれているのを見て、これら困った人はその人の一部の側面でしかないと気付かされる。対立が全ての解決策ではなく、如何にお互い向上するか。と同時に、自分自身、こうした”困った人”の顔がでていないか、ちょっと冷静になってみる。


アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
アトゥール ガワンデ 吉田 竜

晋遊舎 2011-06-18
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”人間は間違いを起こす生き物である”  誰でも一度は聞いたことあるフレーズだが、ではどのようにHE(ヒューマン・エラー)をなくすか、体系立てて整理していないところは意外に少ない。医療の世界でも、医者の裁量で行われることが多いため、ちょっとしたミスが多発しているという。著者はTIMEの最も影響力ある100人(2010年)に選出された医師で、WHOで医療ミスを防ぐためのチェックリスト作成を綴っている。

構成は自身の失態も含めた医療ミスの実態、WHOから依頼されてチェックリスト作成に至る経緯、チェックリストの事例として建築業界と航空業界の調査、そして医療へチェックリストの適用でなっている。ストーリーとしても秀逸で、読み物としても面白いが、特に興味深かったのが事例の建築業界と航空業界。

まず建築業界の話だが、スケジュール自体がチェックリストとして機能しているという。遅れを可視化し、一度問題が発生すれば関係者で協議して是正する仕組みができあがっているというのには目から鱗である。長年、WBS(Work Breakdown Structure)の類やスケジュールを扱っているが、チェックリストという発想はなかったので、非常に新鮮だった。
そしてもう1つが航空業界として、パイロットが扱うチェックリスト。医療も瞬時に必要最低限のことを確認するという点が同じため、こちらにより重点がおかれているのだが(実際、チェックリストと言われてイメージするのもこちらだろう)、”良いチェックリスト”という発想が興味深い。つまり、いかに面倒くさくさせないため、無駄を省くか(その削り方が、詳細は本書を参照いただくとして、熟慮の賜と思い知らされる)、その上で使う人に気づきを促せるか。そうした観点で幾度となく、改訂がなされる。さらに、運行会社などによって、同じ観点で細部がアレンジされることが推奨される。飛行機のチェックリストを見て、当初はなぜ、ものによって同じ機体でも微妙に違うのか、なぜ、書かれていない手順があるのか疑問だったが、これを読んで非常にすっきりした。また、著者がチェックリストの効能を知るために飛行機のフライトシミュレータを体験する話、2009年1月14日に発生したUSエアウェイズ1549便のNYハドソン川不時着の話など、どれも非常に興味深い。

最後は飛行機の話に終始してしまったが、一見単調なチェックリストの奥深さを、これほど面白く読める本書は素晴らしい。
入社1年目の教科書入社1年目の教科書
岩瀬 大輔

ダイヤモンド社 2011-05-20
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ライフネット生命の副社長を勤める岩瀬大輔氏の著書。最近は10年目の社員向けの新刊も出ているが、こちらはタイトル通り新入社員向けに、仕事の3つの原則と50の提言をまとめている。この手の本は書店(amazon)に数多とあるが、それでもこの本を選ぶ理由は2つある。
まず1つに、著者である岩瀬氏の考え、魅力をかいま見られること。2つめに、氏の著書故だが、仕事に偏重しつつも、英語の勉強、新聞の読み方からスーツの合わせ方、お金の話など、大凡新人の時に考慮すべき事が網羅されて書かれており、どれも非常に分かりやすい。

タイトルは入社1年目とあるが、10年選手でも20年選手でも十分堪能できると思う。例えば、仕事の面は、自分の考えが正しいことの裏付けとして使える。仕事以外の話では、資格はそのものの価値よりも刺激を受けるペースメーカーとして使う(P.127~)という生き様的な考えに頷いてみたり、新聞は2紙以上、紙で読む、著者は日経と朝日とフィナンシャルタイムズを購読している(P.129~)に「紙の必要性あるか、そもそも前出の3紙とったら月いくらなるんだろう」と首をかしげてみたり。きっと、引き込まれている自分に気付くことだろう。