本: 2014年4月 Archives

かばん屋の相続 (文春文庫)かばん屋の相続 (文春文庫)
池井戸 潤

文藝春秋 2011-04-08
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池井戸氏の短編集。お得意の銀行員を中心に、中小企業の経営者や家族との関わりが描かれる。タイトルにもなっている「かばん屋の相続」は実際にあった話、一澤帆布工業株式会社をベースにしているのだが、そのラストは正に圧巻で、半沢シリーズを彷彿される。一方で、「妻の元カレ」のように、想定通りのストーリー展開でありながらそこにスリルを感じさせるなど、違った趣の話も。
カリスマ・ナニーが教える赤ちゃんとおかあさんの快眠講座カリスマ・ナニーが教える赤ちゃんとおかあさんの快眠講座
ジーナ・フォード 高木 千津子

朝日新聞出版 2007-03-22
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赤ちゃんが泣いたらおっぱいか寝かしつけを探り、後者なら揺らして寝かしつけ・・・今まで当たり前と思っていたことが、真っ向から否定されて、まさにコペルニクスの天動説的なショックだった。

著者はナニーとして数々の赤ちゃんを見てきた経験から、赤ちゃんの要求に応えるディマンドフィード(Demand feed)方式より、スケジュールに赤ちゃんを合わせる方が、赤ちゃんも親も楽になると主張する。そして、月齢ごとに適切と主張するスケジュールを提示する。

本書は母親向けに書かれているので授乳の部分が多いが、睡眠など父親でも参考になるところはある。本書に従い(妻が)スケジュール通りに試したところ、昼寝の時間になったら暗くしたベッドへ連れて行くだけで自然と寝てしまったのには感動すら覚えた。もちろん、今でも夜泣きは多いし、うまくいかないこともある。しかし、今まで泣いている赤ちゃんを抱えてスクワットしたりしていたのがアホらしい。。。赤ちゃんの育児は奥深い。


ルポ 正社員になりたい―娘・息子の悲惨な職場ルポ 正社員になりたい―娘・息子の悲惨な職場
小林 美希

影書房 2007-05
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派遣社員などフリーターとして働く人々の実態を記したルポ。それぞれの経歴や仕事内容、賃金から、時には会社側への取材を通し、彼・彼女らの苦労が良くわかる。

一方、著者自身も非正規というポジションで社会人を始めたこともあり、立場がフリーター寄りとなっている。例えば、"自宅に帰宅できるのは9時近く。疲れて何もできない。介護福祉士の勉強もなかなか進まなかった。"(P.116)とあるが、これは正規・非正規の問題とは別物だろう。いかに非正規が大変かということをひたすら強調しようとしているようで、マクロの視点が欠落している。
合衆国再生―大いなる希望を抱いて合衆国再生―大いなる希望を抱いて
バラク・オバマ 棚橋 志行

ダイヤモンド社 2007-12-14
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現アメリカ大統領のオバマが、大統領出馬を表明した2007年に書かれた1冊。ブッシュJr.大統領の減税政策などで格差が拡大した中、一般国民の失業や貧困の実態から決して目をそらさず、平等や社会保障を充実しようという信念が揺るぎない。オバマ氏の国民皆保険を成立させたオバマの原点がわかる。

決して自分の主張を通すのではなく、問題に対して具体的な解決策を提示する姿勢に、初のアフリカ系大統領となったオバマ氏の人間性が伺える。出生や幼少時代、家族の話なども織り込まれていて、妻ミッシェルとの馴れ初めややりとりも、興味深い(兵器拡散を防ぐ法案の重要性をミッシェルに電話で話したら、帰りに蟻退治用の罠を買ってくるように言われた話など)。
ドキュメンタリー ルーシー事件の真実―近年この事件ほど事実と報道が違う事件はないドキュメンタリー ルーシー事件の真実―近年この事件ほど事実と報道が違う事件はない
ルーシー事件真実究明班

真実究明班 2007-05
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膨大な裁判資料が本書の大半を占める。タイトルの通り、過去におきたルーシー事件が、報道の内容とどれだけ違うか、もっと言うと検察がどのように証拠を隠匿・改竄して被告を有罪に持って行くかが鮮明に理解できる。このような事実を見ると、先日釈放された袴田事件のように、日本の死刑制度そのものも否定せざるを得ない。

残念なのが、引用されている資料群。整理されておらず、また右開きで構成されているので横文字の資料が右から左に行ったり、別の資料では後ろから読まなければならなかったり、読むのに苦労させられるのが残念。
私はガス室の「特殊任務」をしていた私はガス室の「特殊任務」をしていた
シュロモ ヴェネツィア 鳥取 絹子

河出書房新社 2008-12-11
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アウシュビッツに強制収容され、特殊任務部隊として同胞の遺体処理をになってきたシェロモ・ヴェネチィア氏。特殊任務部隊自体も、隠匿のために3ヶ月毎に抹殺されて入れ替えられるのだが、シェロモ氏は奇跡的に助かり、こうして語ることができた。本書は氏との対談形式で綴られる、歴史の暗部を明らかにする貴重な資料(シェロモ・ヴェネチィア氏が著者となっているが、実際に編集したベアトリス・プラスキエ氏に関するクレジットはない)。

アウシュビッツにやってきて選別された病人・女性・子供・老人らは、そのままガス室に詰め込まれ(ガスを節約するために、ぎゅうぎゅうに押し込まれる)、10分以上悶え苦しみ、絶命していく。後に残った遺体は眼球が飛び出たり、体内の液体・排泄物が外に出て、それは悲惨な状況だったのだろう。特殊任務部隊は、それらをひたすら焼却炉に運び、次のために(シャワーを浴びると言って押し込めるために)ガス室を綺麗にする。一度、母親の母乳を吸っていた赤ちゃんが奇跡的に助かっていたが、やってきたドイツ人将校がやってきて銃で殺したという話は、言葉にならない。

ガス室から死体を焼却炉へ運ぶ特殊任務部隊
ガス室から死体を焼却炉へ運ぶ特殊任務部隊(P.101)

罪悪感や感傷に耽る余裕などまったくない、生きるために必死だったという言葉が非常に重い。
嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え
岸見 一郎 古賀 史健

ダイヤモンド社 2013-12-13
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アドラーの思想を青年と哲人の対話という物語形式で解説する。簡易な言葉で書かれており、かつ今でも(今でこそ?)通用するアドラーの考え方は、衝撃的でもある。ベストセラーとなるのも納得

”嫌われる勇気”とは他人の問題を抱え込まず、自分の問題に集中するかということ。上司、教師、親、パートナーがどう思うか、何をしてくれない、何をする、といった不満は全て他人の問題であり、切り離すことで自由になるという考え方は、一見自己中心的と思われるが、アドラーに言わせると逆なのだ。他人に対しては承認要求ではなく、アドラー思想で共同体感覚という貢献の重要性を説く。

万人向けにするが故、軽い感じもするし、単なる自己啓発本の1つと捉えられそうだが、アドラー心理学の偉大さは変わらない。もしアドラーの思想を知らなかったら、とっかかりとしてぜひ読みたい1冊。
日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル
橘 玲

ダイヤモンド社 2013-03-15
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恐らく誰もが、支出以上の国債を発行している現在の日本を是とはしていないだろう。そして、過去には韓国、昨今ではギリシャのように、国家が破綻またはそれに近い状況になるという自体も懸念しているのではないだろうか。 しかしながら、備えている人は少ないように思う(あるいはどのように備えればいいのかわからない、という人も多いだろう)。

本書では、国債デフォルトが起こる過程の以下3ステージを定義し、国債や金利、為替といった基本的な仕組み平易に書きつつ、それぞれのステージで具体的な商品名をあげつつ有効な手段を消化する。

・「第一ステージ」(国債下落、金利上昇)
・「第二ステージ」(円安、インフレ、国家債務膨張)
・「第三ステージ」(国債デフォルト、IMF管理下入り)

過去、デフォルトを起こした国でも、今の時代では餓死するような自体にはならない一方、希望を失い自殺という手段に走る人は多い。本書の”恐れる必要はない、しかし、備える必要はある。”はまさしく言い得て妙。
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
リンダ・グラットン 池村 千秋

プレジデント社 2012-07-28
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未来の働き方がどうかわるか、いくつかのモデルを出して、読者にイメージさせ変貌や準備を促す。少しSFちっくなところは否めないが、ピーター・ドラッカーの言葉にもあるとおり、今後はますます個の重要性が増すのは確かだろう(労働集約型の時代は協調性が生産性に影響を与えたのに対し、知的労働型では個々が何ができるか、その個々がどう結びつくかが生産性やイノベーションに影響する)。

本書ではその解として、得意な分野を複数極めていく連続スペシャリストになること、そうした人達とグローバルな人的ネットワークを形成することをあげる。ピラミッド階層の組織がフラット化する未来において、知識もますますWebで調べられる中、中途半端な技能やゼネラリストは要をなさなくなるというのは、頷ける。

一方、本書ではスペシャリストのキーとして、1万時間の習熟期間を述べているが(引用はないが、マルコム・グラッドウェル氏の「天才! 成功する人々の法則」が基だろう)、最近ではそれに疑問も出ている。

ハンブリック氏のチームは、エリクソン氏による音楽とチェスの名人の事例研究を見直してみた。そして、こ れまでの意図的な練習(演奏や競技ではないという意味)の時間を被験者たちに質問し、成功の要因のうち練習 が占める割合は音楽で30%、チェスで34%にすぎないという結論に達した。

 また、練習時間にも大きなばらつきがあった。チェスのグランドマスターたちの平均は約1万530時間だった が、832時間から2万4284時間まで幅があった。音楽家も1万~3万時間にまたがっていた。

 これだけばらつきがあれば、1万時間の法則は意味を失ってしまうと、ハンブリック氏は指摘している。

ナショナルジオグラフィック ニュース 揺らぐ“1万時間の法則”


最も、個々が考え備えなければならないのだから、本書は単にきっかけを提供してくれているに過ぎない。この本を読んでその通りにする程度の意識であれば、厳しい未来になるのも事実だろう。
聞かないマスコミ 答えない政治家聞かないマスコミ 答えない政治家
池上 彰

ホーム社 2013-04-26
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日本では政治家にインタビューするのは若手の仕事となっているためシニアのマスコミがおらず、また情報を流してもらうため政治家寄りになっていくため突っ込んだ追求をしない。それ故、政治家も育たない。タイトルが示すとおり、マスコミの勉強不足や甘え、鋭い質問になれておらず必死さが足りない政治家を両者両断する。

その他、2012年12月の総選挙の開票番組「池上彰の総選挙ライブ」についても書かれている。。池上 彰氏は番組スタッフと共にテレビ東京というポジションでどう戦うか考え抜いた結果、時間帯によっては民法1位の視聴率をたたき出した。

全体的に、池上氏には珍しく熱がこもって語っている。つまり、読者を向いて書いているのではなく、マスコミ・政治家に向けて発信しているよう。
9・11事件は謀略か―「21世紀の真珠湾攻撃」とブッシュ政権9・11事件は謀略か―「21世紀の真珠湾攻撃」とブッシュ政権
デヴィッド・レイ グリフィン David Ray Griffin

緑風出版 2007-08
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日本でもTVの特集が組まれたこともあるが、9.11の数々の謎
・飛行機が衝突していないWTC第7ビルがなぜ崩壊したのか。
・なぜ後から飛行機が衝突したWTC第2ビル(サウスタワー)が先に崩落したのか。
・ペンタゴンに衝突した跡は、飛行機にしては小さい&飛行機の残骸がない。

本書ではさらに踏み込んでおり、 ・WTCのオーナーは数ヶ月前にテロ保険をかけて、莫大な利益をあげている。
・WTCの崩落は飛行機ではあり得ず、爆薬を使用した計画破壊の崩れ方である。
・WTCに入る会社の株が、テロの直前に大量の先売り注文がなされていた。
・通常であれば行われていたスクランブルが、当時機能していなかった。
・テロが行われ、さらに不明機がいるとされていた最中、ブッシュは小学校訪問の行事を続行した。
・ペンタゴンの衝突は敢えて難しい工事中の箇所に行われた。
・ペンタゴンの防空ミサイルが機能しなかった(自軍の航空物体であれば、作動しない)。
・ピッツバーグ郊外に墜落したというUA93便は、テロから機体を取り戻し、かつパイロットが乗っていたという連絡をした後、撃墜された。
・テロ後、オサマ・ビンラディンを逮捕できる機会を意図的に逃していた。
・テロの数ヶ月前から戦争の準備がされていた。
・議会でもめていた軍事予算の要求が、9.11をきっかけに認められた。

などなど、陰謀説を臣事させる事実が真挙に暇がない。単に政府が無能故防げなかったのではなく、第二次大戦のきっかけとなった真珠湾攻撃が必要だったように、中東の石油権益や軍事産業のために。全て、状況証拠でしかないのだが。
10歳までが勝負!「生きる力」をはぐくむ子育て10歳までが勝負!「生きる力」をはぐくむ子育て
高濱 正伸

SSコミュニケーションズ 2007-10-25
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子供に必要なのは「生きる力」、それを要素分解すると「知識や技能を身につけ活用する力」、「学ぶことへのやる気や意欲」、「自分で考える力」、「自分で判断する力」、「自分を表現する力」、「問題を解決し自分で道を切り開いていく力」だと言う。最近の教育論、非認知スキルとも重なる部分多く、共感持てる内容が多かった。

タイトルの”10歳までが勝負”の理由が最後の方(P.187~「つ」のつくうちは神の子)に書かれているのだが、その内容がへぇーであった。つまり、ひとつ、ふたつ、・・・、ここのつと「つ」がつく9歳までは神様が育ててくれるから、大人があまり介入するなと言う。親自身が本を読む、勉強すべきというのは頷くところ。その他にも、ダメなものはダメという、子供部屋で勉強させない、干渉しすぎると子供は伸びない、不自由な経験をさせる、など多くの実績がある話が分かりやすく書かれている。

一方、外遊びを殊更強調されているのは疑問だった。虫や生物に触れる利点はわかるが、それが学力にも影響するのは本当だろうか(真実だとすれば、外遊びが多い昔や、田舎の方が学力が高くなるということになる)。犯罪が多くなっているような印象操作も感じられるが、外遊びの多かった昔の方が少年犯罪は多かったわけで、単に”昔は良かった症候群”に感じられた。
習慣の力 The Power of Habit習慣の力 The Power of Habit
チャールズ・デュヒッグ 渡会 圭子

講談社 2013-04-26
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人は自分で考え決断しているようでも、ほとんどは習慣で決まっているという。逆に言えば、悪い習慣を良い習慣に変えて行くことが重要であり、その仕組みを解説する。

その仕組みとは、習慣は”きっかけ”→”ルーチン”→”報酬”というループがあり、変えられるのはルーチンだけということ。例えば職場でとる間食を止めようとした時、まずはどんなとき(きっかけ)、なに(報酬)を求めるかを考え抜く。例では、疲れる前の決まった時間に(きっかけ)、いきぬき(報酬)できるよう同僚との会話する時間を設けて間食を止められたという(毎日定時に話しかけられる同僚はどうなんだ・・・ってのは突っ込んではいけないのだろうか)。

後半では、データを分析して本人の好みのクーポンを案内をする研究が紹介される。本人が気付く前に妊娠していることを把握するのは気持ち悪い、と思ったら、そこは抜かりない。実際に売りたい(売れる)商品のクーポン以外に、全く関係ないクーポンを混ぜたりするというのはさすが。

偶然消臭剤ができたので、当初はにおい消しとして出す物の全然売れず。”習慣”に狙いをつけ、掃除後に香りつけるためにスプレーするもの、としたら爆発的に売れるようになったというファブリーズの話から、野菜売り場が右回りの理由(10年以上前にスーパーで働いていた時、なぜ野菜売り場から始まって右回りの導線に売り場を作るのか疑問だったことが、やっと理解できた)、大きなイベントの時に習慣が変わるのでメーカーは出産時に父親にも贈り物をする(p266。自身、子供が生まれたとき病院からプレゼントされるものの中に、ミルクなど赤ちゃん用品の他にジレットの髭剃りが入っていた理由を理解)など身近なこと(の裏にある狙い)がいろいろわかって面白い。