2012年11月 Archives

本日の1冊: 特殊清掃

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特殊清掃特殊清掃
特掃隊長

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2012-04-14
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特殊清掃と呼ばれる、遺体処理を始めゴミ処分・清掃を行う著者のブログを書籍化。その職に深い思いもないが、プロとしてやることはやる、20年死体を見てきた人ならではの死と生に対する思い、日々の生活などなど。現場の描写もそれほどグロテスクではなく(人にもよりそうなので、あまり強くは言えないが・・・)、あまり重くならずに死について考えてみる、事故・事件の際の遺体はどういう人達が処理するのかなど多くの人は知らない世界を知れる1冊。

本日の1冊: 観察眼

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観察眼 (角川oneテーマ21)観察眼 (角川oneテーマ21)
遠藤 保仁 今野 泰幸

角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-01-10
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三部構成となっており、最初に今野の観察眼、最後に遠藤の観察眼とあり、間に2人の観察眼として対談が挿入されている。

見事に性格が異なる2人だが、リバーシブルのように、読んでいて違った楽しみ方ができる。今野は自分の臆病さや素直さを臆せずにオープンにし、一見頼りないところに、人間くささや面白味が感じられる。一方、遠藤はサッカーのプレー、観客、クラブ、そして日本のサッカーの未来に至るまで、節々に深い考察や思いを感じられる。(代表)試合の鑑賞が、選手の思いや裏側、戦術など理解することで、より楽しめるようになりそう。
「常識」としての保守主義 (新潮新書)「常識」としての保守主義 (新潮新書)
櫻田 淳

新潮社 2012-01-17
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「保守主義」とは何か。政治のニュースでは数多く目にする言葉だが、意外にも答えにくいのではないだろうか。本書は自民党の機関誌に連載されていた内容だが、「保守主義」とは何かを非常に分かりやすく解説されている。

そもそも保守主義とは、エドマンド・バークという英国の政治家がフランス革命を前にして著した「フランス革命の省察」に端を発するという。旧いものを守る思想と理解していたが、そうではないと一蹴される。右翼やタカ派ともイコールではない。もちろん、左翼とも相容れない。特定の国や人種を排除する姿勢、ナショナリズムとも違う。伝統を尊びつつ、柔軟かつ大胆に新しいものを取り入れ、中庸を美徳とする。

後半ではレーガン、吉田栄作、ドゴール、チャーチルなど偉人達を紹介すると共に、保守主義の拠り所は歴史により違うこと、しかしながら、その中でも保守主義の普遍的な本質に迫る。こうしてみると、今の日本の保守主義の政治家は、保守主義で無い方も見受けられてくる。

興味深かったのが、「草食系男子の脆さ(P.60)」で、草食系男子の出現を国家の衰退の兆しとした高坂正堯(まさたか)著「文明が衰亡するとき」に出てくるヴェネチアの歴史を紹介している。即ち、人々がリスクを取って何事かをなそうとする精神が減退することで、国自体も衰亡する。正に今の日本を示しているようだ。
経済アナリスト森永卓郎氏は偏った社会主義的な考え方であり、傾倒することはないものの、話も著書もわかりやすく面白いのでよく拝聴・拝読する。しかし、コラム危機に立つ日本」 - 森永卓郎

 石原氏のこれまでの主張は、「日本が世界に対して強い発言力を確保するためには、核武装することが必要だ」というものだ。そして、「現実問題として核武装が不可能なら、少なくともやる気になればいつでも核兵器を製造できる状態にしておくことが抑止力につながる」という主張もしてきた。それを実現するためには、プルトニウムを生成し続ける原発を稼働させておかなければならないのだ。

と述べ、原発再稼働と核武装を結び付けている。また、最後には

いま日本の平和が戦後最大の危機にさらされているのだと思う。

とまとめている。この推論は、事実誤認や思考の過程に無理があるので、反証を記す。

まず原発再稼働は核武装の必要条件ではない。それぞれ、経済性、及び国防の問題であり、ここは分けて考えるべきであろう。
日本政府は毎年、「我が国のプルトニウム管理状況」(http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2012/siryo39/siryo2.pdf)として保有プルトニウムの量を公表しているが、それによれば平成23年度で国内に大よそ10t、海外(英、仏に再処理委託している分)35tの計45t、1万発以上の核爆弾を作れるだけのプルトニウムを既に持っているのである。また、各原子力発電所にある使用済み燃料のプルトニウム推定量159tも考慮すれば、核兵器が目的なら、もう原子力発電を動作させる必要はないのである。むしろ、IAEAとの協約から、持ちすぎたプルトニウムを減らすために、MOX燃料としてプルトニウムを一緒に燃やすプルサーマル計画として、原発を稼働させる必要がある(2030年に脱原発と言われる最中に大間原発の建設が再開が決定したのも、フルMOX燃料を使用する国内初の原発であるのが理由の1つだろう)。


次に、特にきれいごとでなんでも解決すると思う、厳しい交渉事をあまりされていないと思われる人々の発言には、外交(に限らず交渉事)ではあらゆるカードを保持しておく必要があるという前提がない。実際に核武装するか否かは別として、核武装というカードもその1つとしてシミュレーションするのは、必要なことであろう。

例えば外交問題として竹島、尖閣諸島の問題が起きたばかりであう。特に中国の動向は興味深いので、時間軸を広げて考察してみよう。まず過去にさかのぼれば、中国は1970-80年代に軍事衝突の末、ベトナムから南沙諸島を手中にしている。また、米軍が撤退直後のフィリピン・ミスチーフ礁に建造物を構築し、既成事実を構築した。
次に現在だが、過去の流れ、最初は一般人を装った漁船を派遣し、そのうち海洋監視船が訪れ、最後に軍が行って実効支配を確立してきた手法は、今の尖閣問題が具体的にどの段階であるか、もっと言うとアメリカの圧力もあって次のステージに進めないでいると理解できる。
そして未来に目を向ければ、今後中国の軍事力がますます増すのは疑いようのない事実であり、日米同盟のアメリカ軍は影響力も減っていくだろう(そもそも、日本国内でオスプレイの問題化や、基地不要論などもあり、グァムやオーストラリアにシフトする動きもある)。そうした時、日本はどのようなカードを保持できるか、逆算して考える必要がある。

そもそも、領土は固有か否かが争点になることが多いが、世界の現状を見れば領土か否かは固有と関係なく、既成事実と守る意思と力関係と外交の成果によってのみ成り立っている。アラブがイスラエルを、アルゼンチンがフォークランドを、インディアン(ネイティブアメリカン)がアメリカ本土を、アボリジニがオーストラリアを、アイヌの人が北海道を我々の固有の領土だと言って認められるか?否であろう(ヨーロッパが植民地の独立を認めた例をあげられるかもしれないが、あれは本国の財政上の問題である)。

問題は、得てして物事のトレードオフとなることが多いが、「領土問題」「原子力」「米軍の基地」などとシングルイシュー化されて全体像を見なかったり、冒頭のコラムのように関係のないものを無理やりくっつけて、誤った解を出さないようにしたい。
加齢臭読本 いくつになっても、におわない人の習慣加齢臭読本 いくつになっても、におわない人の習慣
奈良 巧

草思社 2012-04-14
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”加齢臭とは何か?”から始まる臭いの基礎知識、石けんと洗い方・保湿とワキガ対処・食事習慣・洗剤と洗濯法の4つの構成で対処法、そして最後に他の人の臭いに対する対処で構成される。特に、石けんと洗い方に本書の大部分が割かれており、様々な商品を、実際にメーカーの人へのインタビューと共に紹介している。”いいにおい”だとか、”柔らかな泡が立つ”など、臭いの有無に関係なく使ってみたくなるものも多い。資生堂の売り場にいるビューティカウンセラー(女性)への肌診断依頼など、体当たり的なリポートも好感を持てる。

但し、本書の構成や、種々結論づけるところは、論理的でない。例えば、巣鴨の薬局では加齢臭に対処する石けんがなく、今までも問い合わせないという事実から、巣鴨にくる高齢者は女性が多い(事実か著者の推測か不明)、そして他者とのコミュニケーションのない人は加齢臭に悩まない(P.212)と結論づけているが、これは明らかに論理の飛躍である。
ザ・ライト・スタッフ―七人の宇宙飛行士 (中公文庫)
トム・ウルフ 中野圭二

中央公論社 1983-11
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アメリカ最初の宇宙飛行士が誕生する様子を、主にパイロットの側面に焦点を当てながら、時代の側面も織り交ぜながら記したルポ小説。時代は1960年代、ソ連が次々に有人飛行を成功させる中、アメリカは失敗続きでその威信は大いに失墜していた。信用回復を賭け、またソ連に宇宙を征される危機感から、NASAは有人飛行を目指し、本書はその最初の宇宙飛行士に選ばれた7人にスポットをあてる。

優秀なテストパイロットから選定されるが、先に宇宙に飛んだ犬や猿からも分かるとおり、ほとんど自動化されているためパイロットである必要がない。しかしマスコミや世間の眺望、いざ宇宙に飛び立ちアメリカに戻ればヒーローとしての栄光、いろいろ翻弄される様を、見事に描写している。そして、イエーガーのテストパイロット中の事故で話は終わるのだが、宇宙飛行士が特別な存在でなくなると、昔のテストパイロットの価値や音速を超えた偉業も風化していく様子が、哀愁を感じさせられる。
パイロット達の苦悩や生活(表も裏も)、価値観など細かく描画されている。興味深かったのが、宇宙ロケットを自分で操縦したいと思うパイロットと、コンピュータ制御にまかせたい技術者の意識の差。この辺が、宇宙へ行くのには本来不要な翼を、スペースシャトルで設けることとなったのか、などと空想に耽ってみるのも面白い。


本筋とは関係ないが、1983年初版の本書、とにかく字が小さく、最近の大きい字の本に慣れていると読みづらい。
来年4月に開校を目指す3大学の設置不認可を発表した田中文科相に対し、3大学を始め猛反発によって撤回、さらに謝罪するに至った。この件で非常に気になったのは、うわべだけで本質を考察した記事を見ていないので、ここに記載してみる。

田中文科相:「設置不認可」 翻意へ委員会で与野党包囲網
毎日新聞 2012年11月10日 15時00分(最終更新 11月10日 15時02分)
 田中真紀子文部科学相が秋田公立美術大(秋田市)など3大学を「設置不認可」とした問題は、田中文科相が発言を二転三転させたあげく「認可」に言及、9日にやっと謝罪して決着した。

発端は、

クローズアップ2012:文科相、3大学再審査へ 猛反発で一転「決断」 「問題提起」手法に疑義
毎日新聞 2012年11月07日 東京朝刊
 田中文科相の「問題提起」は、大学数の多さや審議会の在り方だ。この日の記者会見でも「乱立に歯止めをかける」と述べた。「方法に問題はあるが、問題提起は正しい」という声もある。
 規制緩和の流れを受け、03年度から文科省が大学新設の抑制方針を撤廃したこともあり、大学数は増加。00年に649校だった4年制大学は12年で2割(134校)増の783校となった。同省は今年度から財務情報や学生の就職情報を公開していない大学・短大への助成金を減額しており、定員割れなど経営難に陥っている大学の統廃合を促している。

にもある通り、大学の増えすぎと共に質の低下に対する問題提起だったのだろう。確かに、関係者が検討、合議してきた内容を就任したばかりの大臣が撤回するのは横暴、突発に思える。しかしながら、これは冷静に考えれば、大臣は職務である決裁を遂行しただけであり、これが騒動になるということがそもそもおかしい。開校前年の11月に大臣許可というスケジュールも、そもそも不許可を想定しないわけで、大臣はハンコを押すことしか期待されていない(余計なことはしてくれるな)という暗黙のルールが垣間見える。これは民主党が主張していた脱・官僚政治が進んでいないことを露見させたわけだ。

そもそも、数年の任期の大臣が、その道のプロである官僚とまともに戦えるはずもない。官僚支配を脱却するには、人事権を大臣が持つとともに、官僚と少なくとも互角に議論できるだけのスタッフ、体制としてシンクタンクがもっと必要と感じる。(※)

※例えばアメリカでは、政策に民間のコンサル会社が深く関わっている。
http://careers.accenture.com/us-en/about/news/Pages/military-veterans.aspx
Winnie-the-Pooh on Management: In which a Very Important Bear and his friends are introduced to a Very Important SubjectWinnie-the-Pooh on Management: In which a Very Important Bear and his friends are introduced to a Very Important Subject
Roger E. Allen

Penguin Books 2011-05-31
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プーさんが、Managerのイロハ、即ち”目標”、”組織”、"動機付け”、”人材開発”、”コミュニケーション”、”評価・分析”について、"The Stranger"の指導やクリストファー・ロビン、ティガー、ピグレットといったお馴染みの仲間達とのやりとりを通じて学んでいく。すっとぼけたプーさんなど、その世界観は壊さず再現されており、プーさんの読み物としても楽しめる。
一体全体、どんな読者をターゲットにしているのかと疑問を持ちながら、初戦は入門書と読んでみれば、XY理論の説明やらピーター・ドラッカーの書の紹介やら、節々の解説やら、学ぶことが多かった。

以下、備忘録。
"It is very, very difficult to change someone, (略)  You see, the manager really can't develop people. It just can't be done. All she can do is to provide an environment that encourages them to develop themselves."(P.129)
この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)この世でいちばん大事な「カネ」の話 (角川文庫)
西原 理恵子

角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-06-23
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内容は、半分が自伝、半分が(タイトルの通り)西原理恵子氏の経験に基づくお金の考え方。あまり西原氏の生い立ちは知らなかったこともあり(この本がドラマ化された一部を見た程度)、特にその過去が印象的だった。親の暴力、荒れた高校生活、父親の自殺、極貧状態で上京、売れてからもギャンブルで数千万円の損失等々、なかなか強烈な生き方をしてきたからこそ、後半のお金の話が説得力がある。

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