2012年8月 Archives

2時間でいまがわかる! 告発 ニッポンの大問題30! (2時間でいまがわかる!)2時間でいまがわかる! 告発 ニッポンの大問題30! (2時間でいまがわかる!)
竹中 平蔵 中田 宏

アスコム 2011-09-30
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元総務大臣の竹中平蔵氏と元横浜市長の中田氏が対談形式で、日本と地方行政、メディアや、果ては1人1人の国民・住民の問題点を論述していく。そのテンポが非常に気持ちよく、また政権内情の話は多岐にわたり、示唆に富む。1点1点上げられないし、他人事の批判に同調するだけでは芸がないので、ここでは1つ、心に突き刺さった点を上げる。

中田:とくに30代以下の若い人たちが、政治にコミットメントしていないなと思い・・・(P.165)

具体例として、公営地下鉄やバスの敬老パスを有料化した際、老人クラブから猛反発があったが、待機児童を減らそうと保育園を増やしたことには賛意がまったくなかったと明かす。確かに、市長も人間、どんなに良くても反発されること、反応がないことを進んでやるはずがない。政治、行政を他人事としていたか(その認識はなかったが)、考えさせられる。
どうしてもがんばらなくてはならない人の徹夜完全マニュアルどうしてもがんばらなくてはならない人の徹夜完全マニュアル
宮崎 総一郎 森国 功

中経出版 2012-03-02
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序文ではいきなり、睡眠を軽んじることの弊害を上げられ、はっとする。そう、本書は「徹夜」をあくまでも非常事態として、準備と回復方法をのせることでダメージの最小化を目指しており、決して睡眠時間を削ってあれこれすることを認めている訳ではない。事実、第6章「徹夜のリスク」(P.126~)では安易に徹夜を逃げないよう諭している。

内容は、徹夜を3タイプにわけて、即ち、仕事・勉強が終わらないなど非定期・短期の徹夜である「突発的徹夜」、夜勤など「慢性的徹夜」、そして災害時や家族の病気など「不眠不休」それぞれの対処方法を延べ、徹夜で受けたダメージの回復方法が続く。ここまでが実践的な中身で、その他、知識として徹夜のリスクや”ナポレオン型・アインシュタイン型”など睡眠に関する知識が後半に続き、付録として、朝型・夜型の診断表が ある。

内容は薄いのだが、実践的で、かつ有益な情報が多かった。また、説明も論理的であり、納得感が高い。例えば、作業を適度に切り替えて脳を部分的に交代で休ませる「ローカルスリープ」を提唱しているが、根拠として渡り鳥などがポジションを時々変えることでそれを実践しているため、不眠不休でも飛べることを解説している。その他、仮眠の時刻・時間や運動、飲食など、まさに”マニュアル”として種々網羅されており、また如何にダメージを最小限にするかという冒頭の根拠も首尾一貫しているから読み物としてもすんなり理解できる。

タイトルからは軽そうに見えるが(実際、文量は薄いが)、なかなか実用的な1冊。
墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社プラスアルファ文庫)墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便 (講談社プラスアルファ文庫)
飯塚 訓

講談社 2001-04-19
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1985年8月12日に御巣鷹山で墜落したJAL123便。本書は、127日間に及んだ身元確認のうち、特に藤岡市内の3つの体育館で指揮した方による、警察・医者・看護師の47日間にわたる記録が主となる。

初めこそ完全な遺体もあったが、その後は部分遺体ばかり、別の人の 頭蓋骨が埋まっていたため目が3つあった頭部、焼けて煤のみとなった皮、大量にわいてくる蛆虫、そして猛暑の中の体育館で連日・連夜明け方帰宅で、体には腐臭が染みつき外にも出られず、文字通り過酷を通り越して極限状態の作業だったことがわかる。例え指1本でも、ここまでして身元を確認する執念に、ただただ頭が下がる。

一方で、結論が早急と感じる場面も多々あった。遺体の確認にこだわるのは日本くらいとし、アメリカなど海外ではその考え方が理解されないとしているが、諸外国でも遺体を回収する考え方はあるので一概にそうとも言えないのではないか。また、後半からは日本、警察、自信の自画自賛的な描写が気になった。遺体から婚約指輪を紛失した際、遺族に辞職で責任をとると謝罪して最後は理解してもらえたと書いているのだが、原因が何も書かれておらず、安易に精神論で対応しようとしていることに、警察の一面をみた気がした。
不都合な真実不都合な真実
アル・ゴア 枝廣 淳子

ランダムハウス講談社 2007-01-06
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映画でも話題になった元アメリカ副大統領アル・ゴアの1冊。本人は豪邸にプライベートジェットに、と一部マスコミから批判受けていたが、アメリカの副大統領が自国だけでなく地球規模の環境問題を考え、かつ素晴らしいプレゼンを実施して注目を集めただけでも、意義があったのだろう。

本書はビジュアルが多く、アル・ゴアの自伝的な内容も含まれており、読むのは易しい。3.11以降、原発停止などで達成がほぼ絶望的となった鳩山元首相のCO2 25%削減宣言や京都議定書が忘れられつつある今日だからこそ、物事を多面的に捉えるためにも読みたい1冊。
思考力が目覚める ロジカル頭脳問題集 (新書y)思考力が目覚める ロジカル頭脳問題集 (新書)
大石 哲之

洋泉社 2012-08-04
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新書のロジカル問題集ということで手軽に購入して読め、実際、内容も非常にシンプルなのだが非常に奥深い。内容は
・フェルミ推定問題13問
・ロジカル会話問題16問
・ビジネスケース問題4問
の3部構成で、それぞれの末尾には類題を掲載、計55問はどれも濃い問題ばかり。さらに、各問題は体系化されており、それぞれのイントロには考え方が整理されている。特に2番目の”ロジカル会話問題”の導入部の解説は論理学のツール(因果関係・帰納法・演繹法・弁証法)、論理的な会話のツール(論点の整理・問題点の見極め・悪魔の証明・白紙の結論・フレームワーク)はそれぞれ数行ながら、エッセンスが凝縮されており、それぞれ問題を解くことで理解できる構成となっている。

尚、フェルミ推定問題、ビジネスケース問題などは著者の前著「過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題」がより詳しい。
「一生食べていける力」がつく 大前家の子育て (PHP文庫)「一生食べていける力」がつく 大前家の子育て (PHP文庫)
大前 研一

PHP研究所 2012-07-04
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”世界のどこに放り出されても生きていける裸一貫になっても自分で飯を食っていける---。そうした「生存力」をつけさせることが、教育の最大の目的だと私は思っています。”

本編は15年前の執筆ながら、21世紀が「答えのない時代」として”暗記するほどバカになる”、”「勉強するよりゲームをやれ」”、”人生は「ファイナルファンタジー」など独創的な価値観を見せ、先見の明を示す(最も、重箱の隅をつつくようなことを言えば、15年後の今日でゲームが生存力に繋がるかは疑問だが)。実際、2人の子供達は大学を中退しつつも、それぞれ独立して会社を興したりしている。

では実際の中身はいろいろ書いているが、最も論理的で納得したのは、第1章の”愛情は時間ではかれる”であった。いくら子供らを大切に思っていても、忙しさを理由にしていてはダメで、どれだけ自分の時間を割いたかが重要。時間は唯一全ての人に公平な資源であり、だからこそ、時間配分でその人の人生のプライオリティが表されると、改めて考えさせられる。

全体通してロジックより氏の思い・情熱が強く感じる(最後に2人の息子のインタビューからも、親の想いが先行し過ぎていると感じる場面がある)が、最後の章を読んで納得する。そう、この本は、まだ見ぬ孫に向けたメッセージだったのだから。
最強の人生時間術(祥伝社新書247)最強の人生時間術(祥伝社新書247)
齋藤 孝

祥伝社 2011-09-02
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普通の時間管理術の本と異なるのは、タイトルにもあるとおり、人生、それも30歳からをターゲットにしている。P.39にある図が全てを物語っているのだが、人生30から4つに区切って説明している。そして人生では2つの山を築くよう提唱しており、即ち、45歳頃をピークの仕事人生の山と、60から70歳をピークとした自由を満喫する人生の山。前者は効率よくひたすら量をこなして仕事に集中し、後者は健康にも気遣いながら生活や文化とのバランスをとっていく。一見相反する2つの山の谷間、45~60歳にいかにうまくギアチェンジするかが、その後のQOL(人生の質)に重要であると説く。

一心不乱に仕事に打ち込む必要性を肯定しつつ、長い人生で考えたときにはそれだけでは不健康や老後の焦燥感など不幸せになる可能性を示唆され、人生全体を見渡していつどのように過ごし、そのためにいつ何をすべきか。文量の少ない新書ながら、いや、少ない新書だからこそ、人生という長期スパンを俯瞰して考えさせられる。


以下、備忘メモ

明治の文豪・幸田露伴は娘の幸田文に家事を教えるとき、「家事というのは追われてはいけない、こちらから追って、追って、追いまくるのだ」ということを言っています。(P.44)

家事だけでなく、物事の対処の考え方として、奥深い。
震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)
原田 泰

新潮社 2012-03-16
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復興費用が19~23兆円という莫大な額になった東日本大震災。日本を復興するためとの名目で、その財源を確保するために時限措置ながら25年という、現役世代にはほぼ恒久増税とも言える所得税その他の増税。本書では、その巨額を無駄であることを、過大な出費が復興に繋がらないことを過去実績、阪神大震災などの例で証明、また4兆円程度で済む著者の見積もりを説明する。

特に後者は、いわゆるフェルミ推定の考え方で実際の損害額を算出しており、納得感がある。人口オーナスとなりつつある地域に対して、過度なインフラ整備をしていくことは無駄どころか将来の重荷にすらなりうるので、著者のコンパクトな復旧という考え方は非常に好感を覚える。

その分、最後の原発問題に対する論調は残念としかいいようがない。前半の的確な分析とは打って変わって、著者の主義・主張のみという印象が強い。原発のコストが安ければ、もっと安全策を講じていたはず→原発のコストは実は高い→火力でまかなうべきとの三段論法で脱原発を結論づけており、地政・環境・安定・経済の問題や原発の最新技術を一切無視しており、早計と感じる。そもそも本書の趣旨から脱線しているのではないか。