2012年5月 Archives

蝉しぐれ (文春文庫)蝉しぐれ (文春文庫)
藤沢 周平

文藝春秋 1991-07
売り上げランキング : 3678

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

名は有名だが未だ映画も含めて未体験だった藤沢周平の世界。読んで納得、時代は違う歴史小説なのだが、ストーリーや登場人物の人間模様はおろか、背景や経済感含めて読む者を惹きつけ、あたかも自分がその世界に入り込んだような錯覚すら覚える。
ストーリーは、剣の鍛錬をし学問に励む下級武士の子供の何気ない日常が、父が闘争に巻き込まれてから、徐々に独り立ちして強く生きていく姿を描く。剣を手に悪と戦うシーンもあるが、幼なじみとの淡く叶わない恋心や友情、鍛錬や剣の試合など、日常が大部分を占める。そんな日常にすら時間を忘れて読んでしまう魅力があるが故、多くの人の心を惹きつけてやまないのだろう。

日本はなぜ神道なのか (ワニ文庫)
日本はなぜ神道なのか (ワニ文庫)中矢 伸一

ベストセラーズ 2008-03-19
売り上げランキング : 284286


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

久々に、期待はずれを通り越して、詐欺にあったような1冊。公平・公正に言えば、前半は神道の歴史、作法、など教養的にも知的好奇心を駆り立てるという意味で非常に参考になる。特に、他の宗教との違いということで、神道には教典がないが故の差異という視点はとても面白く納得した。しかし、近頃の神に仕える人たちの堕落といった憂いに始まり、かくあるべき論的な論理には辟易してしまう。最後の、日本人は他民族と異なり人類をひっぱるリーダー的な資質うんたらといったナショナリズムの主張には、それを通り越して恐怖心すら覚えてしまう。筆者の言葉を借りれば、教典がないが故解釈は主観的になってしまうとも理解できるのが皮肉。
人間の品格―日本人のあるべき生き方・働き方・リーダー学
人間の品格―日本人のあるべき生き方・働き方・リーダー学馬場 啓一

こう書房 2007-07
売り上げランキング : 651215


Amazonで詳しく見る
by G-Tools
すぐれた日本人10人、実業家から政治家、学者に小説家、時代も現代まさに活躍されている方から故人まで、人物像と偉人たるゆえんを紹介。対象の人選がなぜこの10人なのかわからなかったり(例えば実業家に人選が偏っている、日本人のあるべき姿が定義されていない、など)、文脈も不必要に修飾語句が多いと感じるなどあった。しかし、正直初めて知る人物、名前程度しか知らない人物もおり、新鮮な点や、知らない日本人にこんなすごい人物がいたのか、という驚きさえあった。10人の偉人を1冊で知れると思うとお得とも思えてくる。
続・年収300万円時代を生き抜く経済学 実践編!―給料激減でも豊かに生きるための「新・生活防衛術」続・年収300万円時代を生き抜く経済学 実践編!―給料激減でも豊かに生きるための「新・生活防衛術」
森永 卓郎

光文社 2003-11-20
売り上げランキング : 606645

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

庶民はを謳う森永卓郎氏だが、その内容は少し?な点が多かった。ストーリー構成としては以下の通り。

1.小泉首相の構造快活で多くの犠牲がでた。また、これからの時代、がんばっても一部の人しか収入は伸びない、なのでそこそこに働き、他で豊かに暮らす
2.そのためのテクニック
3.実際にお金に頼らず楽しく暮らしている人の生活

まず、小泉首相の批判はいいが、構造改革の不必要だった根拠や、グローバルな外部環境の説明が抜けているため、主張が表面的に感じられる。実際、小泉時代にはGDPが伸びていたわけで、一部の失業者の声を出すだけでは全体像が見えてこない。また、節約術では森永氏の批判する高収入者の節税術を載せていて、主張は節税方法か?と勘ぐってしまう。また、100均の利用といった今時珍しくも何ともない例から、いきなり株の話を出したり(しかも、電力株を推奨しているのは、いまとなってはブラックジョーク以外の何者でもない)、やはり表面的のまま、最後の例では都会を出て農家になった人の話など、極論に飛ぶ。例えば、後者の農家になる例を紹介するなら、Iターン・Uターンの農家転身者を支援する自治体を紹介したり金融支援の話を出すなど、全体的に具体的なプランも提示して欲しいと感じた。

出口社長、岩瀬副社長両者揃って、 上場記念も兼ねた4周年セミナー。過去の、オフィスの会議室でこぢんまり行われたふれあいの会が嘘のような、その数200人。場所は
[野村證券 アーバンネット大手町ビル 東京都千代田区大手町2-2-2]
で、19時半から2時間。内容は上場説明とこれまでの振り返りが半分、残り半分はQ&Aの時間。ここが普通の企業と違うというか、理念がしっかりしているだけあり、質問者は皆、良くも悪くも、ファンという感じがありありと出ている。
肝心の回答も、論理がしっかりしており、よどむところも無く、ビジョンがしっかり示されている。まだまだ伸びていく予感。
幸福の研究―ハーバード元学長が教える幸福な社会幸福の研究―ハーバード元学長が教える幸福な社会
デレック・ボック 土屋 直樹

東洋経済新報社 2011-09-23
売り上げランキング : 164903

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
”幸福”とは何か。ひどく一般的でありながら、雲を掴むような抽象的な実態に迫る。お金、仕事、家庭、趣味、、、一言で言っても千差万別、そしてその時々で幸福の内容は変化する中、如何様に幸福度を上げる政策ができるか、考察する。良くも悪くも”学者”が書かれた内容であり、総じてストーリー性は薄いのだが、節々に興味深い話も多い。一例を挙げれば、

・(アメリカの)幸福度は50年変わっていない。即ち、人間は良い環境でも慣れたり、劣悪な環境でも小さな喜びを見いだしたりと、環境に合わせて幸福度を変化させる
・(上記と被るが)先進国の貧困層も1910年代の富裕層を上回る生活水準で暮らす
・幸福水準のほとんどは遺伝で決まる(楽観的、悲観的と言ったところか)

尚、本書はアメリカを基準に置いているが、年金・保険と、実は日本が恵まれていると感じさせる部分も多い。
老いの才覚 (ベスト新書)老いの才覚 (ベスト新書)
曽野 綾子

ベストセラーズ 2010-09-09
売り上げランキング : 3985

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

自立した人間でいる、人生を楽しむという主張は、最期までそうありたいと思う反面、老いに関係なく必要な精神である。文章に年齢を重ねたゆとりを感じる反面、世の老人がだらけている、甘えているという前提のもとに話している感が強く、また主張の根拠もいまひとつ弱い。内容は至極まっとうなだけに、読み手の共感を得られない(反感を得る)可能性がありそうなのが残念。
日本国の原則―自由と民主主義を問い直す日本国の原則―自由と民主主義を問い直す
原田 泰

日本経済新聞出版社 2007-04
売り上げランキング : 378752

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

何事も原理原則、軸となる考えがないと主張に一貫性がなくなったり、問題に対する視野がせまくなるが、本書は「自由と民主主義」という観点で経済、政策、戦争、教育、人口減少、様々な分野を解決策を提示する。

話の内容は太平洋戦争に至る日本の過ちに対する考察が多いが、細かい考察部分にも示唆に富む。例えば、”保護主義から発展した国は過去にない”という記載は昨今のTPP問題について、利益代表や感情論に対して一石を投じる。また、人口減少(人口オーナス)時代に対しても、海外の移民受け入れは非現実的なこと、「自由と民主主義」の点から幸福度は人の数で決まらないことを示す。教育については、”型を学ぶことから自由がある”、”個性やゆとりは型を突き抜けた先にしかない”という下りが至極同感(但し、横一列の成長できる時代ならともかく、不確実性の時代では何を「型」とするか、も重要であると考える)。

「自由と民主主義」がなぜ大切か、日本国は今後どうあるべきか、理解・考える上で非常にわかりやすく読める。