2011年11月 Archives

外資系コンサルの真実―マッキンゼーとボスコン
外資系コンサルの真実―マッキンゼーとボスコン北村 慶

東洋経済新報社 2006-10
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「マッキンゼー」と「BCG」を中心に、日の目を見ることが少ないコンサルティング会社の実情をわかりやすく解説する。特に知ろうとしても情報が少ないだけに、本書の内容、iモードなどの製品開発から日本郵政民営化プロジェクトのように政治など、ありとあらゆる分野に進出している実態は驚きすら覚える。それでも日本のコンサルティングマーケット2000億円強は、GDP1/10の韓国が700億円、2倍のアメリカでは7~8兆円と比較して、まだまだ市場拡大の余地があるという。(P.50)

コンサルティングの内情としてキャリアパスや年収のイメージ、パートナーの仕事や報酬の仕組みを、仕事の進め方としてフレームワークの解説まで記されている。

萌芽期のコンサルへ対する畏怖の念があった時代を過ぎた今、コンサルティング会社の限界を客観的に分析しつつ、コンサルティング会社との上手なつきあい方でまとまっている。

反対尋問の手法に学ぶ 嘘を見破る質問力
反対尋問の手法に学ぶ 嘘を見破る質問力荘司 雅彦

日本実業出版社 2008-06-19
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弁護士による、反対尋問をベースにした交渉術。”悪用厳禁”とまで謳っているが、中身は至極、実用的で分かりやすい。嘘を見破る方法として、一般的に目や仕草(例えば指先を動かしたり手を組んだり)、早口になることはよく言われるが、本書では実際の法廷(内容はModifyされているが)を題材にすることで、納得感がある。とくに尋問の応対については、リンカーン(大統領になる前は弁護士)のエピソードなども引用しており、読み物としても面白い。

本書は悪意を持っている人にどう対処するかの対策もあるが、論理づくめで相手を根負けさせることだけを目的としていない。即ち、相手を立てて軟着陸させること、人間は嘘をつこうと思ってつくことは意外に少なく、勘違いや思いこみが多いことを説明しているあたり、現実社会に則していて実用的である。
粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)
粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)中垣 俊之

PHP研究所 2010-04-21
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知性という言葉がどう控えめに見ても適用できないと思われる単細胞のアメーバ状生物、粘菌。本書は粘菌を対象とした実験から、その合理的行動、迷いといったものを示し、”知性”とは何かを問いかけてくる。
例えばえさを配置した迷路で最短経路を行く、苦手な物質を避けるなど、これらは感覚か、知性か。実験の中でも興味深いのが、関東の地図上で各都市にえさを配置し、東京(ちょうど新橋から電車が始まったように)の位置に粘菌を置いた実験。粘菌の伸びる経路は、まさにJRの路線図そのものになっている。

著者は不名誉(?)なイグ・ノーベル賞を受賞されたが(最も、著者は喜ばれている模様)、本書の内容はカーナビの経路設定や輸配送経路設定問題との考察など、実利にも富み奥深い。
最高齢プロフェッショナルの教え
最高齢プロフェッショナルの教え徳間書店取材班

徳間書店 2010-12-17
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91歳の漫画家、「アンパンマン」の作者やなせたかし氏を筆頭に、2万5000時間という驚異的な飛行時間を持つ88歳の現役最高齢パイロット高橋淳氏、83歳の現役ライフセーバー、93歳の現役スキーヤーなど、タイトルの通りとにかく精力的ですごい人がたくさん紹介されている。唯一の例外を除き皆70歳超なのだが、その唯一の例外、現役最高齢JRA騎手として登場する方の年齢”51歳”が若いと思えてしまう。(注:年齢はいずれも本書より。2010年12月第1刷。)

職業も環境も銘々異なるのだが、どの人も圧倒的な経験を積んでいるだけに、言葉に重みを感じる。何か悩み、苦労しているときにこの本を読めばきっと心が晴れやかになるだろう。103歳声楽家 嘉納愛子氏の言葉が心に残る。

”103年生きていて思うのは「人生は公平だ」ということ。苦労したら同じだけ、恵みがあるんです”

モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」
モサド前長官の証言「暗闇に身をおいて」エフライム・ハレヴィ 河野 純治

光文社 2007-11-22
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日本で実態の見えにくいモサドの内情を、前長官が記した貴重な1冊。解説として掲載されている佐藤勝氏の寄せ書きの中で、本書を日本のインテリジェンス強化の参考書になると明言しているのも興味深い。

四方をアラブ諸国に囲まれ、常に国家の存亡をかけてきたイスラエルを陰から、時には表だって安全保障に従事したモサド。そのモサドの考え方、過去の失敗、歴史的交渉の内容から締めのテロ対策・外交など内容は多岐にわたるが、”ホロコーストの経験を持つユダヤの人々は、 「世界に同情されて生き残るより、世界を全部敵にまわしても生き残る」”という強い信念から、国家としての戦略の重要性、仕方を考えさせられる。
成川式文章の書き方―ちょっとした技術でだれでも上達できる
成川式文章の書き方―ちょっとした技術でだれでも上達できる成川 豊彦

PHP研究所 2003-09
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文章の善し悪しは、常套となる「型」を知っているか知らないかでだいぶ違ってくる。本書はそうした「型」毎に改善ポイントと悪い例・良い例とともに多数掲載されている。大抵は小学校の作文で一通りのことを習った後はなかなか文章を添削される機会も少ないので、そうした「型」(ルール)を知らない・忘れていることも多いだろう。事実、本書を一通り読んで知らないこともあった。

一例を挙げると、”37 カギカッコでくくった文章には句点「。」を打たない”。
悪い例(抜粋)
 ①「今日は雨が降った」。
   「今日は雨が降った。」
良い例(抜粋)
 ①「今日は雨が降った」
 ③花子は言った。「今日は雨が降りそうね」。
 ④「今日は雨が降りそうね」。花子は言った。
基本はタイトルの通り、悪い例、良い例の1番目だが、良い例の③④のように前後で文章が続くときは打つ、など。
※但し、”昔は閉じ括弧の前にも句点を打つことがあった”と記載の通り、市販の書籍でも句点が打たれている文は多い気がする。

いろいろ参考になった書籍だが、各種のルールで、例が具体例をあげるものの本質的でない印象を多々受けた(例えば、”一般に、慣用が固定していると認められるもの”<P.241>などは判断を読者にゆだねるよう受け取れる)。また、常用漢字を使用する(P.160)例として、”新製品の進捗状況”を悪い例とし、良い例に”新製品の進行状況”をあげるなど、一般的なビジネスの実態からは疑問の箇所もある。
天下り“ゾンビ” 法人 「事業仕分け」でも生き残る利権のからくり
天下り“ゾンビ” 法人 「事業仕分け」でも生き残る利権のからくり野口 陽

朝日新聞出版 2010-06-18
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2009年の衆議院選挙で民主党へ政権交代し、目玉の1つとしてニュースを賑わせた事業仕分け。パフォーマンスばかり目につき実態が分かりにくかったが、本書ではジャーナリストが公益法人の仕組みから無駄、強いて言えば税金の搾取を暴露する。

間接的・直接的に税金が流れている公益法人だが、国家公務員からの天下りが主目的というのがよくわかる。さらに転々とするため、ポスト作りのため、冗談としか思えない財団・社団法人。(P.93)
社団法人 におい・かおり環境協会
社団法人 いわし食用化協会
財団法人 日本こんにゃく協会
財団法人 マラッカ海峡協議会
社団法人 雪センター
社団法人 日本毛髪科学協会
社団法人 日本躾の会

なかなか、冗談としか思えないが、どれもこれも年収1500~2000万円の理事ポストなどを多数設けている。さらに、URファミリーのネットワークなど、読めば読むほど怒りとも脱力感とも言えぬ焦燥感が。

これらの仕組みは根深く、結局は政権が変わろうが、どんなに国家予算が不足しても変わらず、取りやすい税金をあげては日本に成長の芽がないのは素人目にも明らか。もはやギリシャは明日の日本としか思えない。

35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画
35歳の教科書―今から始める戦略的人生計画藤原 和博

幻冬舎メディアコンサルティング 2009-09
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リクルートを経て、杉並区立和田中学校の校長へ赴任、義務教育初の民間人校長として一時期ニュースを賑わせた著者だけあり、シンプルながら非常に中身の濃い1冊。

成長社会から成熟社会へ移った現在、周りと同じようにしていればマイペースでいられた時代は終わりを告げ、臨機応変に対応する力が求められる。著者の主張は、これからの成熟社会で如何に戦うかを諭す。メニエル病にかかりワーカーホーリックを脱したというだけあり、所謂ライフバランスとも違った独特の世界観を持っている。クリティカル・シンキングやプレゼンテーション能力といった一般的なビジネス能力の話から、成熟社会の手本としてヨーロッパ、フランス人の生活信条「アール・ド・ヴィーヴィル」(暮らしの美学)を出したり。

天才の条件10000時間を出して25歳からの35歳までが未来を左右するなど、タイトルを真に受けて35歳の人が読むと凹みそうな部分もあるが、

・自分自身のリストラ(テレビ、新聞を止めてみる)
・100を基準に挑戦する
・決断するときに人に相談しない

などなど、年代問わずに参考になる、心に響く箇所があること請け合い。
トレードオフ―上質をとるか、手軽をとるか
トレードオフ―上質をとるか、手軽をとるかケビン・メイニー(著) ジム・コリンズ(序文) 内田和成(解説) 有賀裕子

プレジデント社 2010-07-06
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成熟した経済で成功する方法は、高級化(決して限られた人のという意味ではなく、雰囲気を含めて上級を目指す物)をすすめるか、あるいは利便性を追求するかに限る、即ち二兎を追うどっちかずは失敗することを示唆する。スターバックスがなぜ売れるのか、また迷走したのか、ティファニーがなぜ失敗したのか、そして復活したのか、マクドナルドが廃れない訳。iPhone、Bose、Palm(ちょっと古いが)、ATM、NFL、ルンバ、セグウェイ、IBM、新聞、様々な成功・失敗した企業・サービスを、分析、上質・手軽のフレームワークに帰着することを論理明快に解説する。

一見、経営や起業理論のようだが、最終的には個人の立ち位置とこれからの戦略について考えさせられる。即ち、今までのように平均的に可も不可もなく成長していては、結果中途半端で消耗エリアを脱せない。自分自身の強み、ニーズを千慮する必要があることを示唆される。物語としても面白く、一読に値する1冊。
数学的思考の技術 (ベスト新書)
数学的思考の技術 (ベスト新書)小島 寛之

ベストセラーズ 2011-02-08
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惜しい。タイトルがいかにも学術的で興味をひくものではないのだが、中身はわかりやすく(難解な部分もあるが)面白い。まずは目次を一部、引用する。

第1部 不安定な毎日を生き抜くための数学的思考
第1章 相手を自分の思い通りに動かすには
第2章 給料が上がらないのはなぜか
第3章 人に本音をいわせるテクニック
第4章 「だらしない人」の経済学
第5章 年金問題を数学から考える
第6章 協力って、大事?
第7章 不確実な世界における行動法則
第8章 勝ち組は、運か実力か
第2部 幸せな社会とはどういうものか
第1章 どんな経済、社会が望ましいか
第2章 今、コモンズを考える
第3章 デフレ不況への処方箋
第4章 伝統的な経済学の限界
第5章 お金より大切なものはあるか
第6章 私たちが暮らすべき魅力的な都市とは
第7章 人間の「不完全知」といかに向き合うか
第3部 「物語」について、数学的思考をしよう
~省略~

タイトルで手に取らせ、中身が薄っぺらい本ほど腹立たしいことはないが、本書は正反対。凡庸なタイトル(失敬!)と比べ、各章のタイトルは興味をそそられるではないか。そして、中身はもっと面白い。日経新聞に時折登場する、経済の解説やゲーム理論などをわかりやすく、論理的に解説されている。

例えば第1部 第2章から、リスクを取らなければ人並みの給料しか手に入らないことが証明される。その他、人々が衰退産業にしがみつく理由として「ダウ&ワーラン効果」を解説したり(P.84)、魅力的な都市の条件が普通に考えるのと正反対、狭くて古今の建物混在し複数の機能を持って人口密度があること(P.158、アメリカの都市学者ジェーン・ジェイコブスが調査・分析)、など目から鱗の話も。

終盤は村上春樹の世界観が出てきて、単に数学的世界だけではなく飽きないと同時に、複雑な世界観の思慮を要求する。