2011年10月 Archives

「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)
「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)中田亨

光文社 2011-01-18
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「うっかり」などのヒューマンエラーをどう減らし撲滅するか、どう品質を向上するか。タイトルは「事務ミス」と銘打っているが、コンピュータの世界や業務の設計でも大いに参考になる。そもそもなぜミスを犯すかという間違いのメカニズム分析から、解決まで網羅されており、品質対策の示唆に富む。

後半では様々な Good Design と Bad Design を紹介、具体的な実例でミスを減らす環境・帳票作りを考えさせられる。例えば鉄道の安全対策や、ブッシュJr.とアル・ゴアの大統領選で問題となった投票用紙(P.158)、ヒヤリハットの報告書例(P.196、簡単に報告でき、また情報が埋もれないようWhen,Where,What,How-it-was,How-react,Who,Why-happened を表形式にする)など面白いネタから参考になるものまで様々。ここで、2001年1月に静岡県焼津市上空で起きたニアミスで管制官を有罪にしたことを断罪している点(P.207)、せっかくなのでもっと詳しく書いてほしかった。

以下、備忘録
ドラッカーによれば、カフカが安全ヘルメットを発明(P.209)
日本復興計画 Japan;The Road to Recovery
日本復興計画 Japan;The Road to Recovery大前 研一

文藝春秋 2011-04-28
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3.11の後の原発問題で、福島第一に何が起こっているか、次に何が起こるか1番わかりやすく解説されていた大前研一氏。本書は当時の様子から今後の日本の行く末、それに対する復興案を簡潔にまとめた1冊。著者は印税を放棄し、本書の売り上げ12%が震災復興に寄付されるとのこと、復興貢献の一環としても購入の意義があるというもの。

ただ、中身は薄く、急遽出版されたという印象はぬぐえない。当時の原子炉に何が起きていたか、YouTubeをまとめた内容はいいが、今後目指すべき方向として書かれている部分、今までの緻密な論理展開が陰を薄めているのが非常に残念(例えば奥さんにはパートするより投資して資格を取らせ定職につけて・・・と簡単に言われているが、資格だけで定職とれるとは思えない)。
質問する力 (文春文庫)
質問する力 (文春文庫)大前 研一

文藝春秋 2005-03-10
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バブル後の地価下落、冷戦崩壊・ビルゲイツからの世界、シンガポールの奇跡を題材にそれぞれ章立ての後、様々な問題に対して問題提起・一刀両断する。その量、テンポは相変わらず、圧巻で心地よい。その対象は年金、国債、ペイオフ、北朝鮮問題、郵政民営化などから、”原子炉は安全でない”など今まさにホットな題材など枚挙にいとまがない。ただ問題提起するだけでなく、プレート課税、英語教師採用の国籍条項撤廃、道州制など(著者の他の本やWebの原稿を読んでいると繰り返しも多いが)アイデアも提案多い。

目から鱗だったのが、歴史教科書を疑う点。開国時代にも日本に優秀な人材が居たと言うことで幕臣小栗忠順を挙げているが(P.268、新井喜美夫『幕末日本を救った救った「先見力と胆識」』プレジデント社、1992)、そうした人物も、現在の日本の歴史の教科書は明治維新の薩長土肥の後輩達が書いたものだから、幕府側の官僚は悪役としてしか出てこないのである。ただ鵜呑みにしていては、見落とす、知らないことがいかにあるか。

本書を読んでなるほどと感嘆するのは易し、如何に同じような、問題の着眼点・思考力を鍛えられるか。自問したい。

P.S.氏の著書の中では、比較的口調が穏やかであった。
凹まない人の秘密
凹まない人の秘密アル・シーバート 林田レジリ浩文

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2008-04-15
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困難に遭遇したときに、それに負けず、場合によっては逆境をバネにするような人の特性、心のResiliency(弾力性)を持つ人の共通の性質を特定し、獲得する方法を示す。

問題に集中、好奇心、多様性、周りを動かす力、逆境を幸運にする力・・・後半に行くほど、天性で努力ではいかんともしようがない性格のような気もするが、ポジティブな気持ちを意識するかどうかが重要なのだろう。薄い本なので、何かの隙間にさらっと読んだり、時々手にとってみるのがいいかもしれない。
八日目の蝉 (中公文庫)
八日目の蝉 (中公文庫)角田 光代

中央公論新社 2011-01-22
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不倫相手の子を誘拐して育てる女と、その子が大きくなってからの2部構成。不倫、誘拐と許されるはずもないストーリーながら、知らず知らずに引き込まれる。後半、その子が大きくなってからの話でも、決して感情移入するような話ではないはずなのに、母になる変貌を目の当たりにして女性の偉大さを感じ、感動すら覚える。

家族とは何か考えさせられると共に、子が守ってあげるような存在は一瞬であるとともに貴重な瞬間だとしみじみ感じさせられた。余談ながら、本書で出てくる人物はどれも個性派揃いなのだが、男性がことごとく貧弱なのも気になるところ。
DENON ネットワークCDレシーバー ホワイト RCD-N7W
DENON ネットワークCDレシーバー ホワイト RCD-N7W
デノン 2010-10-25
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長年、理想とするオーディオを求めてきてやっと巡りあった一品。求めていたスペックは

・ネットワークに無線/有線で繋がり、メディアサーバー機能搭載(ファイルサーバーの曲、MP3などを再生できる)
・メディアはCD、USB、AUX程度。(可動部は極力減らしたいので、チェンジャーは不要)
・価格は1桁前半(マランツなど、高級Audioではあったが5万円以下では皆無だった)

であったが、これは更に、

・iPodのドッキングステーション有り
・インターネットラジオ対応
・オプションのファームウェアUpdateでiTunes/iPod/iPhone/iPadのAirPlayに対応

と、ほぼ望む機能は完全網羅していた。悩んだのは買い時のみであった(現状は4万円超で落ち着いているが、発売当初は4~5万円の間をめまぐるしく変動)。機能詳細はDenonのHPを参照いただくとして、半年以上使った感想を以下に記載。

■長所(Pros)
とにかく機能が必要最低限、シンプルで良い。無線LAN(APにはCoregaのCG-WLR300GNEを使用)との相性も比較的問題なく(※短所でも後述)、IEEE802bgと干渉する電子レンジを5mほどのところで使用していても問題なし。好きな曲や英語のCDなど、聴きたい時にすぐ再生できる快感は、一度覚えたら止められない。予想外に使っているのがInternet Radioで、BBC のチャンネル(特に現地日曜日放送)に流れるBGMがどこか懐かしく、心地よい。本機を手に入れてから、CDを再生する必要性がほとんどなくなったのがいい。過去のも含めて、CDをリッピング、MP3などでメディアサーバーに放り込んで置けば済むのだから。

■短所(Cons)
ディスプレイが小さいのはデザイン性もあるだろうが、サーバー内に大量にあるファイルを探すことを考えていないIF。昔ながらの十字キーでひたすらカーソルを移動する操作は、時代遅れもいいとこ。この辺はiPhone/iPod touch用のアプリを入れれば済むのかもしれないが、未だ未確認。AirPlayも(Appleへのライセンス料か)Option料金はちと高いと言わざる得ない。他、ルーターとの相性か繋がらなくなり、WPSの再設定をしたことが2度ほど発生(原因不明)。

といろいろ好き勝手書いてみたが、満足した一品であることは変わらず。未だ4万円を切らず、大手家電量販店は5万円台半ばで売っていたりと値崩れしない。最近、もう少し上の8万円前後の機種も増えてきて選択肢も増えてきているが、なぜこれほど便利な機能がもっと流行らないのか不思議なくらい。

唯一、希望と異なっていたのは色だったが、今では黒も出ていてちょっと悔しいところ。
パワー・ハングリー――現実を直視してエネルギー問題を考える
パワー・ハングリー――現実を直視してエネルギー問題を考えるロバート ブライス 古舘 恒介

英治出版 2011-07-21
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原著は3.11の前に書かれた本だが、再生エネルギー=善で化石・原子力エネルギー=悪といった偏見は以前から少なからずあった。本書は各種エネルギーを客観的に捉えると共に、まさに今、原発をどうするか、今後のエネルギーをどうするか考える必要のある日本人必読の書とも言える1冊。

アメリカ視点で書かれているため、石炭発電の必要性と害は、日本では今ひとつぴんと来ない部分もあるが、少なくともどの発電方式も害はあるわけで、それらを総合的に評価する必要性はあり、本書では(少なくとも今現在は)結論として原子力と天然ガスを環境に優しいとしている。”原子力は環境に優しい”は今の日本で受け入れられないだろうが、パワー密度・エネルギー密度といった概念をもとに各エネルギーを比較されると、救世主のように扱われる再生エネルギー(太陽電池・風力)がいかに補助的なポジションを脱し得ないか、理解できる(そもそも、それらは人間が発電量をコントロールできないので当然と言えば当然なのだが)。

興味深いのは、電気自動車が未来の自動車であるようなことは、20世紀初頭から延々と繰り返され、主力になりえないという事実。(P.236)

地球温暖化問題しかり、石油問題しかり、原発問題しかり、経済問題しかり、エネルギー問題は評価基準がひとそれぞれだからよけいややこしい。本書ではそれに対する解として、マイケル・サンデルの正義に対する3つのアプローチを紹介している。即ち、幸福の最大化、自由の尊重、美徳の促進。(P.368~)

繰り返しになるが、エネルギー問題を考えるスタートラインとして、誰もが読むべき1冊だと感じる。

以下、備忘録
・パワーの計算(P.104)
 1バレルの石油=5.8Btu=58億ジュール=22,152W/日=29.7馬力/日
・ニューヨーク・シティ パール・ストリート255・257番地 エジソンが1882年9月4日商業発電開始
仕事脳を強化する記憶HACKS(ハック) ~ITツールを駆使して”第2の脳”を使いこなせ! (デジタル仕事術シリーズ)
仕事脳を強化する記憶HACKS(ハック) ~ITツールを駆使して”第2の脳”を使いこなせ! (デジタル仕事術シリーズ)佐々木 正悟 四六

技術評論社 2009-08-07
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ITの普及によって、脳を記憶することから、より思考に注力できるようになった。本書では、そうしたITツールを利用して仕事・生活・勉強の質を向上させるアイデア・サービスが紹介されている。

話が脱線するが、携帯による質問サイト利用カンニングや論文のWebコピーなどをやり玉にITの批判もある。しかし、今からITのない世界へ戻ることはあり得ないわけで、本書のような論調は至極まっとうである。何より、文字ができたとき(「ガリア戦記」に詳しい)や活版印刷が生まれたときにも同様の批判はあったわけで、時代は繰り返しているだけである。

Gmail、携帯、iPhone、Mac、Outlookといった定番から、今では非常に有名になったDropBox、Evernoteはもとより、存在すら知らなかったクラウドサービスなど情報満載。ここで、小職がしらなかったツール・サービスを備忘録がてら数点記す。

■ToDoツール(P.39~)
TooDledo・・・時間(期限)だけでなく、人・場所などをキーに管理できる。
OmniFocus・・・日程・優先順位でタスクを整理する。

■スクラップ・ブックマーク(P.194~)
diigo・・・オンラインブックマークサービスで、マーカーを使って一部のみをノートする、オンラインに付箋を貼ることが可能。

■人物管理・証跡(P.202~)
FriendFeed・・・特定個人に関する情報を管理。ブログやTwitterなど全活動を把握できる。

その他、Audible、SleepTrackerの活用例なども。
米国製エリートは本当にすごいのか?
米国製エリートは本当にすごいのか?佐々木 紀彦

東洋経済新報社 2011-07-08
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著者はアメリカのエリートを経済、政治、軍事の3タイプに分類、それぞれの成り立ちや関連を、スタンフォード大学留学経験を元に、日本(+韓国、中国)との国民性、歴史の違いから来る考え方の相違などをまとめれた1冊。純粋に世界全体との相違を想像していたので、少し範囲が限定的で、内容も拡散気味なので著者の経験が主という印象はぬぐえなかった。

ただ、巻末の参考文献の数からも、著者が如何に膨大な読書をされたか(本書の中でも、アメリカの学生は4年間に480冊を読まされると記載あり)が伺えると共に、思考の広さ・深さを持つ人の知的筋肉の育て方が垣間見え、面白い。
「知の衰退」からいかに脱出するか?
「知の衰退」からいかに脱出するか?大前研一

光文社 2009-01-23
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論理的な批判的な言動が目立つ大前氏だが、分厚い(440ページ)本書でもその切れ味ある論調は留まるところをしらない。

政治の体たらくに対する批判を目にしない日はないくらいだが、選挙から制作に至るまで表面的な事象しか報道しないマスコミ、そして最終的には我々自身が何も考えていないことを嫌というほど痛感させられる。低IQのTVが氾濫、何も欲せず、何も考えず生きる人が多いことを氏は嘆く。

今の中国や韓国にあって日本にないもの、「坂の上の雲」。その他、国民1人あたりのGDPが日本を超えたシンガポール、成長著しいインド、現状でも次々に日本の価値が下がっていく中、常に先を見通してきた著者にとって将来の日本はどのように見えているのだろうか(想像に難くない、悲惨な状況が本書の悲観論になっているのだろう)。

それでも決して悲観論一辺倒ではなく、一図の希望も残して本書を綴っている。後半では、他の本でも散々言っている現代の3種の神器「IT」「金融リテラシー」「英語」、学ぶべき他国の事例など。読者に考えさせるための設問が随所に織り込まれている。その中でも、最後の問い、「今日からあなたはどのように行動しますか」は重い。